9月句会結果発表
兼題の部(蜻蛉)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
1鬼やんま寺百畳をまつしぐら6栃木県垣内孝雄
54大阿蘇は太古のすがた蜻蛉飛ぶ5熊本県蕗の薹
23駅ごとに蜻蛉群れなす小海線5埼玉県郁 文
11児等の画架のぞきて尾瀬の蜻蛉かな4岐阜県近藤周三
30ふる里やまづは蜻蛉に迎へられ3神奈川県冬 湖
42子を負うて帰る畦道赤とんぼ2神奈川県風 神
29草野球勝って凱旋おにやんま2福岡県蛍 川
15遊ぶ子の声も途切れて秋あかね2東京都一 八
18蜻蛉に一枚の空破られし2三重県八 郷
25震災の遺構離れぬ蜻蛉かな2神奈川県ひろし
49影落としつつ蜻蛉はホバリング2奈良県魚楽子
55蜻蛉や土塁の上の遊歩道1愛媛県牛太郎
6回れ右できずに蜻蛉じょうげして1千葉県あけび庵
7蜻蛉や指伸べし頃なつかしむ1埼玉県アポロン
10蜻蛉の閃く翼遠山根1神奈川県三 裕
13三姉妹ゐて産土や赤とんぼ1北海道三泊みなと
14空襲警報発令されてとんぼ飛ぶ1大阪府藤岡初尾
16野にあればきらきら光る赤とんぼ1愛知県丸 吉
26土砂崩る群なす蜻蛉漂へり1埼玉県祥 風
31風のまま辺り一面赤とんぼ1埼玉県坂井久仁
32沢水に連なり落つる蜻蛉かな1千葉県須藤カズコ
37とんばうの卵産みをる潦(にわたずみ)1埼玉県グレイス
38子を乗せて帰る自転車赤とんぼ1神奈川県ドラゴン
40とんぼうのとなめの先に駒ヶ岳1千葉県みさえ
43群るるともなしに真昼の鬼蜻蜓1長野県油井勝彦
44とんぼうを風に戻して禅の寺1神奈川県横坂 泰
45とんぼ飛ぶ霊の数だけ蒙古塚1福岡県伸 治
46とんぼうの見るもの全て繫がれり1北海道千賀子
47ポケットに小さな句集とんぼ飛ぶ1東京都いちねん
48影引いて下流へ急ぐ蜻蛉かな1岐阜県色即是句
50とんぼうの大き目玉に出くわしぬ1埼玉県ま こ
51たましひの抜かれし石を抱くとんぼ1大阪府椋本望生
56蜻蛉の翅透き通る水の上1静岡県春 生
60とめどなくもだえつむるや鬼やんま1滋賀県和 久
61手すさびに廻すシャーペン糸とんぼ1兵庫県ぐずみ
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
161墓地だけが残る故里曼珠沙華7奈良県陶 生
105潮騒の聞こえる高さ鷹渡る6神奈川県横坂 泰
170臨月の娘と歩く良夜かな6岐阜県色即是句
163ラヂオから正午の時報大根蒔く5三重県正 耕
83軍服の孝の肖像稲光4静岡県かいこ
101群青の濃きカルデラ湖秋高し3千葉県みさえ
84手のひらに秋音そそぐ沢の水3埼玉県郁 文
116初秋や群青色のマグカップ3愛媛県牛太郎
156遠き山ぐつと近づく秋の朝3大阪府芙美佳
159白杖の確たる歩み秋日差す3埼玉県グレイス
175追伸の長き文章秋深む3千葉県相良華
147街角のバンドネオンや秋淋し2神奈川県ひろし
97稲妻に一瞬浮かぶ磨崖仏2埼玉県さくら子
113秋深し翁も行きし老ひの旅2神奈川県志保川有
135空振りの傘邪魔臭しばった跳ぶ2北海道三泊みなと
63病棟の庭に下り来る今朝の秋2東京都小石日和
70思い出は母につながる吾亦紅2京都府せいち
91すれ違ふ亡き人に似た秋袷2神奈川県冬 湖
115鬼子母神祀る山寺石榴の実2熊本県蕗の薹
136峡の里一本道を照らす月2大阪府藤岡初尾
137銀杏や焦れてなく子の宮参り2東京都一 八
141「葡萄の木」聖書に残る丸しるし2愛知県さ と
152泣く時にひとり来る場所秋夕焼2神奈川県冬 湖
178モジリアニの女の首や秋さびし2静岡県春 生
179仮住まい早八年のそぞろ寒2東京都一 寛
142名月がほんのり雲を明るうす1愛知県コタロー
68卒寿とて処世は不変星涼し1埼玉県アポロン
62秋なかば陵過ぐる雲の影1栃木県垣内孝雄
69流されて泳いでみたし天の川1千葉県えだまめ
74栗ご飯炊きて独りの余生かな1北海道三泊みなと
75玄関に二本の杖や鵙高音1大阪府藤岡初尾
76赤飯のやや柔らかく秋祭り1東京都一 八
82ひぐらしや老人ひとりバスを待ち1神奈川県毬 栗
86故郷の闇なほ深き虫の秋1神奈川県ひろし
87夜長し入院先の靴の音1埼玉県祥 風
88峠(たお)越への秋雨しきる陶器(すえ)の里1福岡県みつぐ
89長き夜のあれもこれもの追而書1福岡県えつこ
90浮見堂見果てぬ夢や秋の蝶1福岡県蛍 川
94菩提寺のいま紅い萩白い萩1大阪府レイコ
96こほろぎの住まふスナック芋の酒1埼玉県夜 舟
99常念を宿の窓辺に涼新た1神奈川県ドラゴン
106秋茜ふところに抱き草千里1福岡県伸 治
117満月を脱出口と思ひけり1静岡県春 生
118天災の爪痕照らす峰の月1東京都一 寛
119峠道秋の七草愛でて行く1三重県穂のか
120野に広ごりし曼珠沙華昼の月1広島県一 九
121レコードの音のとびたり夜長かな1滋賀県和 久
123秋めくや猫の飛び出すカフェテラス1栃木県垣内孝雄
127浮世絵に千本ありし秋の雨1愛知県コタロー
130秋暁や歩み来し道遥かなり1千葉県えだまめ
138下駄の音と踊る夜更かし山の秋1愛知県丸 吉
144爽籟や風鐸揺らし絵馬揺らし1静岡県かいこ
145焼け畳吊るし忘れの秋簾1埼玉県郁 文
148雨あがる紫紺きわだつ秋茄子1埼玉県祥 風
151幽体は何処へも行ける曼珠沙華1福岡県蛍 川
154思い草枯れたる後のあはれなり1千葉県須藤カズコ
158コスモスや土産両手の女旅1埼玉県さくら子
165鰯焼く哲学語る客かへり1長野県油井勝彦
166水の秋空に抜けたる槍穂高1神奈川県横坂 泰
169卓袱台に団栗ならべ老いゆく日1東京都いちねん
172スーパームーンテープにのこる母の声1埼玉県ま こ
173ゐのこづちつけて受けたる表彰状1大阪府椋本望生
176駄菓子屋の方寸の土間地虫鳴く1熊本県蕗の薹
《選評》 選者:「草の花」俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)
 
《兼題の部:蜻蛉》

★大阿蘇は太古のすがた蜻蛉飛ぶ

なぜかこの句を読んだら、恐竜の跋扈していた時代へタイムスリップしてしまったかのように錯覚をしてしまい
ました。もちろん大阿蘇とは言え「太古のすがた」の成れの果てであることには違いないはずですし、蜻蛉も手の
ひら大を超えるものは殆どいません。でもレンズで覗いた姿は、やはり一種の恐竜を思わせます。
夢のある、楽しい一句でした。
 
◎ふる里やまづは蜻蛉に迎へられ

作者のふる里は、いまだに田園風景の広がっているところなのでしょう。ふる里で最初に出会ったのが蜻蛉だった。
出迎えに来てくれたのだ、と感じた作者。次は誰が迎えてくれるのだろう、と喜びの湧く作者。
「まづは蜻蛉に」が良いですね。
 
◎子を負うて帰る畦道赤とんぼ

お母さんと幼子の姿が見えてきます。お母さんはお父さんでも家族の誰かでも代替可能ではありますが・・・。懐かし
いような景ですね。でもわたしもしばしば近くの畦道を歩きますが、やはりこんな親子とすれ違います。夕暮れ時
の群れている赤とんぼが良く見えます。なお「子を負うて」は「背(せな)の子と」とすべきだと感じました。
 
《自由題》
 
★群青の濃きカルデラ湖秋高し

「秋高し」が絶妙に効いています。雲一つない秋空の下、カルデラ湖を眺める作者の爽快感はいかばかりであった
ろうかと羨ましささえ覚えます。「群青の濃き」という色合いにも関わらず、おそらく澄明感のあるカルデラ湖。
絵にも描けないとは、まさにこんな色合いの景色を言うのでしょうか。
 
◎名月のほんのり雲を明るうす

雲に覆われた名月の夜。しかし、完全な無月ではなく、月の在処が分かる程度の曇り空だったようです。「ほんのり
雲を明るうす」は味わいのある表現で、見えない月をきれいに感じさせてくれます。良いですね。
但し、原句の「名月が」を「名月の」とさせていただきました。「が」と「の」の違いを感じていただけたら幸いです。
 
◎街角のバンドネオンや秋淋し

この頃のバンドネオンは、ラテン系の曲を演奏することが多いように感じられます。演奏者が少ないことによる偏り
かもしれません。しかし「街角」でバンドネオンを聞かされたら、しかもラテンナンバーででもあれば、踊り出す人が
出てくるかも知れません。とは言いながらも、一抹の哀愁を感じる点は、わたしも作者に共感します。だからこそ下五
の「秋淋し」は付きすぎになります。ここは「秋深し」くらいで抑えるところでした。見直して頂ければ幸いです。
 
添削(ランクアップのために)

ここに取り上げた句は何れも魅力があります。まさに今一歩。
ちょっとした言葉の選択や調べへの配慮があれば、特選候補でした。悔やまれますね。
 
・とんぼとんぼこのゆびとまれと子供達 → とんぼとんぼこのゆびとまれ吾にとまれ

子供達がとんぼの群れる原っぱなどで指を突き上げ戯れている様子が良くわかります。楽しそうですね。
ですが、句としては最後の「と子供達」でガクッとしてしまいました。調べを断ち切るだけでなく、単なる報告句に
なってしまったのです。上五中七の歌うような流れを保持し、そのまま詠み切るようにしたいものです。
 
・迫り来てつと逸れゆきし銀やんま → 迫り来てついと逸れゆく銀やんま

この句は、いつも指摘しますが「し」の病に犯されています。「し」は過去の助動詞。このままでは逸れていったのは
過去のこととされてしまいます。今、眼前の出来事として詠みましょう。そうすれば自ずから臨場感のある句に変貌する
はずです。
 
・秋なかば陵過ぐる雲の影 → 仲秋や陵をゆく雲の影

「秋なかば」が良くないですね。確かに傍題にはあるのですが・・・。ここはしっかりと「仲秋や」と打って出ましょう。
なぜ作者は「仲秋」を強く意識したのでしょうか。それは陵にかかる雲の影に原因があったのでした。その過ぎゆく影は、
作者の深層心理を刺激したのでしょう。俳句にはこうした例はいくつもあります。読み手も、具体的な説明は出来ない
ながらも、その作者と共鳴出来てしまうのです。
なお「過ぐる」も意味が強いので、ここもゆったりと「・・・をゆく」程度が良いかと思います。

        
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