12月句会投句一覧
兼題の部(冬田)
1鷺ひとつ風に小雨の冬田かな2あてもなき暮れに佇む冬田かな
3冬の田に入るでも無し人の足4地平まで拡がる冬田雲低し
5冬田道防風林を遠くしぬ6黒土の五線譜模様冬田かな
7足跡と杭の残りし冬田かな8鷺細る冬田の上を旋回す
9冬の田に園児らの声失せて風10黒土に轍の残る冬田かな
11鷹一羽こずえに氷る冬田かな12山間や古道に沿ひて冬田道
13継ぎたるは詩才なき血と冬田かな14水の音なだめて眠る冬田かな
15小学校のマラソン大会冬田道16冬田に餌求めてはねる雀かな
17冬田降りついばむものもなかりけり18冬田でも田の神御座す祠かな
19冬の田や風に抗うものも無し20下校子が囃して通る冬田かな
21刈取機冬田に残るタイヤ痕22夜の帳下りる早さの冬田かな
23筑波嶺の裾廻の冬田打ち返す24日をためてしづかに眠る冬田かな
25青天に走る旋風の冬田かな26遠会釈交わす農婦や冬田道
27銀輪の一列にゆく冬田道28錆びつきし轍を照らす冬田かな
29満水のダムや冬田を撫でる風30光芒の届く冬田でありにけり
31白鷺の全身さらす冬田かな32下校児の声賑やかに冬田道
33雲ちぎれ冬田広がる旅の窓34強風に白銀の波冬田かな
35少しの間休み楽しむ冬田かな36時折に郵便車行く冬田道
37風荒ぶ冬田の秘める底力38鍬に依る男一人の冬田かな
39去年今年エプロンのまま泣きに来し40雲泳ぎ冬田眠れる空の青
41一羽づつ降りて調ふ冬田面42切り藁を被り冬田の眠りけり
43冬の田やこの一年の芥を焼く44容赦なき風吹き抜ける冬田かな
45冬の田を河一筋に流れゆく46低く日のひかり広ぐる冬田かな
47鉄塔を鳶の巻きたる冬田かな48出稼ぎの父とほのくや冬田道
49引退はまだ先のこと冬田打つ50ここからは村の名かわる冬田径
51忘れものあるはずのなき冬田かな52白鳥にウミネコまじる冬田かな
53バス停の前も後も冬田かな54醜草の青累々と冬田かな
55しとしとと雨降る峡の冬田道56馬鈴薯の雪もろともに冬田かな
57豊年の願いや込める冬田道58大門の前より冬田打ちはじむ
59こもごもと冬田におもひめぐらしぬ60吹き抜ける冬田に案山子一人立つ
61機関車の煙懐かし冬田道62冬の田に引かるるごとく鷺一羽
63堆肥撒く農夫も翳の冬田かな  
自由題の部
64どん突きに古き床屋や夕時雨65寄鍋や昔々のものがたり
66年取りの塩と寒風鮭つるす67宴席を抜けて見上ぐる寒北斗
68ちゃんちゃんこ涙腺弱き貌となり69冬灯小さき者の影つくる
70這へよはへ足を踏ん張れ冬の蠅71小雪降る里山は只静かなり
72そぼ降りに小揺るる一葉冬紅葉73玄関を出れば星降る寒さかな
74凩や波郷立ちゐしバス乗場75白息の俥夫のもてなしあたたかし
76村を去りゆく雪吊りの達人も77ぽつねんと星空仰ぐ師走かな
78薄化粧の大阪の雪はかなくて79逆上がりやっとできた子園小春
80平成も行く年光陰矢の如し81ドック入り結果に安堵新酒酌む
82老い二人ベンチに憩う冬帽子83軍歌聞こゆる大雪の八甲田
84ファッションの冬帽歩く銀座かな85飴玉を噛むごと歩む初氷
86冬ゆやけ田に一筋の煙立つ87正信偈和して師走の忌を修す
88老夫婦共に感謝の年忘れ89マスクして病後の皺を隠せけり
90故人偲ぶや菩提寺の散紅葉91梟に訊け不開の門のことならば
92山々の孔雀増えるや枯尾花93存えて平成終の今朝の春
94清掃車またすれ違ふ師走かな95頬に手を添ふ御仏や冬椿
96日記買う残る月日を愛しみて97真冬日や空は果てまで澄み渡り
98丸まりし犬の寝息や冬ぬくし99幸せは些細なること干蒲団
100街師走ポスト口開け眺めをり101ランドセル背ナに馴染んで冬田道
102突っ張て生きてました注連飾103逆三角に空切り聳え冬の杉
104片意地も見栄も薄らぎちゃんちゃんこ105雑踏の中の孤独や年の暮
106ホームレス歌人の安否虎落笛107足早に過ぎ去る日日や年の暮
108やはらかな柚子の残り香仕舞風呂109子に贈るサンタ飛び出す絵本かな
110朝凍や笹は青しと見惚れたり111落葉踏む古女房とこの先も
112ぜんざいのほどよき甘さ山眠る113征戦の昭和は遠き十二月
114隣席の華に足あり年忘れ115新月の雪の畑をウサギ翔ぶ
116大晦日セールスマンに粘られる117風を待つ紅葉の種にある翼
118寒禽の集まる一樹神の庭119老妻の米借りにいく雪催ひ
120短日の昏れれば灯る日比谷かな121会長の挨拶咳をひとつして
122雪兎それぞれ子らの顔をもつ123頑なな心をほぐす柚子湯かな
124山茶花の花びら流す俄か川125夕照や鴨群れて水脈のさざ波
126行く年や屋台を引いて渡る橋127狭庭より道にはみだす龍の玉
128湯豆腐や外はどうどど空つ風129風出でて霜月障子を強く閉め
130独り居の庭の一隅石蕗の咲く131猫たちの心の遊び毛糸玉
132寄鍋や嗚呼たらちねの母よ妻よ133散り残る葉に絡みをり冬夕焼
134枯れ山や空広くして露天風呂135冬灯宙にきらめく舞扇
136暮早し犬の遠吠え聞こえたる137凩や牛舎の灯り呱々の声
138雨降れば猫撫で声の冬の猫139筆折りし銭湯画家や掃納
140冬至湯や見上げし父の背(せな)とほし141吊し柿甘み増すころ野鳥来て
142冬の月湾にとりこむ潮かな143一年をこんなものかと除夜の鐘
144「岩村城址にて」本丸へ磴道八丁冬木立145しんしんと時降るごとき雪の界
146客船をひかり縁取る聖夜かな147昼下り雨にけぶるや冬田道
148冬晴れに二羽の帆翔鳶の声149風つのる歌垣の山鵙の声
150カルデラに低き天籟星凍つる151路地裏へ木枯し音を捨てゆけり
152冬川を跨ぐ深紅の太鼓橋153埋火や今日のひと言悔いてをり
154鴛鴦の水尾浮世の風を曳き155冬晴やステンドグラスの見晴台
156年忘おのれの年も忘れをり157ときめきや聖樹煌めくビルの街
158コーヒーを淹れる朝や室の花159母の手で飾りし聖菓たべたきに
160まつさらな雪のきらめく日差しかな161冬晴や坂見下ろせば空と海
162毛糸編む出来上がるのはさておいて163無事と言う言葉の重み除夜更ける
164師走ベンチ置かれたままの定石本165雀らのどっこい生きてる冬田かな
166裾分けの柚子残り香や手の平に167百段の踊り場に聴く除夜の鐘
168侘び住ひ太るばかりの軒氷柱169まぐわひし果ての虚ろや雪女郎
170人は皆過去を引きずり隙間風171逆川に沿うて歩めば冬ぬくし
172すは火事かサイレン音の行方追ふ173冬日差色ひとつなる車山
174アンデスに谺する笛クリスマス175炉明りや恋の噺をひとくさり
176磨崖仏あまたを抱き眠る山177山頂に震える膝や初日の出
178白鳥は雪を引き連れ渡り来る179吊り橋の下はせせらぎ十二月
180弾けさう腹の横縞孕み蜘蛛181冬ざれや鴎賑はふ河口堰
182にはとりの股を噛み切る聖夜祭183波が来て流木ぬらす寒さかな
184霜柱歩幅大きく歩きけり185大寺の一期一会の煤払
186田鶴わたる八甲田の真白きに染まりて187山眠る護岸に嘘を捨てに行く
188谷合のちさき棚田や冬茜189年越の高速道や目指す富士
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より1句、自由題より2句の計3句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:1月27日(日)、発表は1月31日(木)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
11月句会結果発表
兼題の部(冬紅葉)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
51人生に余白ありけり冬紅葉3熊本県蕗の薹
14冬紅葉ひとり暮しの母いかに2大阪府藤岡初尾
17在りし日の役者魂冬紅葉3神奈川県ひろし
40拍手に舞ふ一ひらの冬紅葉3埼玉県さくら子
32参道に薄日残りて冬紅葉3埼玉県グレイス
37冬紅葉参道急ぐ赤袴3長野県油井勝彦
45屏風谷朱墨一筆冬紅葉3静岡県こいちゃん
49帯を解きひと時じつと冬紅葉3千葉県市祐
50冬紅葉灯り消へたる老舗宿3神奈川県風神
24庭の池合わせ鏡や冬紅葉2静岡県かいこ
34冬紅葉平家の悲話の里深し2三重県正耕
41雲割れて日射しのそそぐ冬紅葉1滋賀県和久
2老いてなほ心残れる冬紅葉1宮崎県花林糖
5祖谷渓谷断崖染める冬紅葉1東京都いちこ
6鈍色の空に残りし冬紅葉1東京都小石日和
7子ら去りし児童公園冬紅葉1千葉県えだまめ
8風吹かば吹かるるままに冬紅葉1愛知県コタロー
9冬紅葉を潜りて仰ぐ五重塔1京都府せいち
11冬紅葉隣家の赤子泣き止まず1東京都一八
12夕映にひときわ澄みて冬紅葉1三重県倉矢 幸
15記念日の箱根の旅路冬紅葉1神奈川県三裕
16とある湖とある街角冬紅葉1滋賀県正男
19竜神の橋を巡らす冬紅葉1埼玉県祥風
23冬紅葉達磨のにらむ大衝立1神奈川県ドラゴン
26廃校の母校を訪へば冬紅葉1神奈川県毬栗
27湧水の水路の果てや冬紅葉1奈良県魚楽子
29冬紅葉ライトアップに艶めける1千葉県みさえ
33吊橋の声は少なに冬紅葉1神奈川県横坂 泰
35門前の赤い蒟蒻冬紅葉1福岡県蛍川
38演習林メタセコイアの冬紅葉1千葉県須藤カズコ
39日おもてに燃えてまばゆし冬紅葉1岐阜県色即是句
43永らへて知る悦びや冬紅葉1神奈川県志保川有
46冬紅葉湖底もみじと交信す1三重県穂のか
47頑なに一枝に残る冬黄葉1福岡県みつぐ
58雨あとの日矢ぞうれしき冬紅葉1広島県一九
59じゃんけんに弱い亭主や冬紅葉1兵庫県ぐずみ
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
93朝の日の冬菜に光る雫かな7三重県正耕
82冬の日を揺らす硝子のイアリング4神奈川県ドラゴン
95狛犬の手持ち無沙汰や神の留守4三重県八郷
107母牛の子の歩に合す島小春4福岡県えつこ
151せせらぎは音ともならず落葉積む4神奈川県横坂 泰
81しんがりはなんの役目か雁渡る3埼玉県郁文
110殉教の島穏やかに冬に入る3熊本県蕗の薹
113もうだれも遊んでくれぬ雪うさぎ3大阪府椋本望生
115侘助のぽとりと落ちるしじまかな3千葉県相良華
158一生を知足に生きて柿熟るる3埼玉県さくら子
159まち針の赤や緑の一葉忌3滋賀県和久
164鬼柚子の葉書はみ出す便りかな3三重県穂のか
91山茶花や空(から)堀深き陣屋跡2埼玉県グレイス
116猫多き海辺の町よ冬ぬくし2愛媛県牛太郎
128ぬくめ酒下手な説諭をするよりも2岐阜県近藤周三
141サイレンの行方追ひたる夜寒かな2神奈川県ドラゴン
72街騒を離れ墳墓の月夜かな2愛知県丸吉
78ひとときの詩人となりて木の葉踏む2埼玉県祥風
97かやぶきに苔青々と方時雨2千葉県須藤カズコ
119冬ぬくし母の遺せる阿六櫛2栃木県垣内孝雄
125小春日や何をするにも良き日和2千葉県えだまめ
153笹舟を小川に流し白秋忌2福岡県蛍川
156綿虫やかやぶき残る京の里2千葉県須藤カズコ
160冬銀河海の彼方へ流れ落つ2奈良県陶生
167易々と切られてなるか八つ頭2千葉県市祐
169大落暉長き影引く冬木立2熊本県蕗の薹
172丸セーター抜ければ今朝は七十歳2大阪府椋本望生
173葱焼くや陸の孤島に居を構へ2静岡県春生
98石磴を転がる風の落葉かな1岐阜県色即是句
65石舞台までのあぜ道旅小春1東京都小石日和
67手袋をずっと外さぬキツネの子1愛知県コタロー
69天職を掴まんと手に夜学のペン1岐阜県近藤周三
70唐突な別れの言葉かまいたち1東京都一八
76刀匠が夜業の火花散らしけり1神奈川県ひろし
77去る友の会話明るき帰り花1北海道三泊みなと
79旅の宿木の実降りつぐ夜の静寂1大阪府芙美佳
80冬麗や皇帝ダリヤ淡きいろ1岐阜県小太郎
84境内の鳩とたわむる小春かな1愛知県さと
85初しぐれ相合傘となりにけり1神奈川県毬栗
87しんがりはなんの役目か雁渡る1埼玉県郁文
89小夜時雨ドラマの台詞ふと途切れ1北海道千賀子
90蓑傘の神の列去り冬の雨1沖縄県繭子
94浮見堂へ波うかれゆく小春かな1福岡県蛍川
99茶の花や亭主の捌く朱の袱紗1埼玉県さくら子
100胸を張り風になびかす赤い羽根1滋賀県和久
103磯波の浮かぶと見れば引く寒さ1東京都やない一念
104里芋は土偶の形土塗れ1静岡県こいちゃん
106老斑に白塗り厚く忘年会1福岡県みつぐ
111松の木に水引きかける蔦紅葉1岩手県柴田コル
117残りたる五葉の枝葉冬の月1広島県一九
121鶺鴒や尾たたき遊ぶ朝日影1宮崎県やっせんぼう
122子の寝息泣き声無きや冬日来る1千葉県あけび庵
124路地奥の宿の帳場の大熊手1東京都小石日和
130秋高しクレーン船の発つ運河1三重県倉矢 幸
135水郷の静かに暮れり蘆の花1神奈川県ひろし
136冬菜売足軽やかに来たりけり1北海道三泊みなと
138黄金を染めてきらりと銀杏散る1大阪府芙美佳
139一葉忌褪せし俳誌をひもとけり1岐阜県小太郎
147寂光やぽつりとひとつ木の実落つ1千葉県みさえ
152冬暁の駅舎に向かふ人の影1三重県正耕
168冬日ざし曲線描くムーア像1神奈川県風神
171秋の雲ああ亡き父の顔に似て1東京都一寛
11月句会選評 選者:「草の花」俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)
 
《兼題の部:冬紅葉》

★人生に余白ありけり冬紅葉

上五中七は良く見かける物言いです。しかし、年齢を加える度にふと思うのがこの言葉でもありましょう。
忙しない人生を歩んできた人に訪れるであろう「余白」。その余白をどのように埋めていくかは人それぞれ。
この作者は「冬紅葉」を眺めながら、ふと呟きました。紅葉の盛りではなく、冬紅葉に感じた人生の余白。
良い人生を送る人の豊かな視線が輝いて見えるようです。
 
◎冬紅葉ひとり暮しの母いかに

作者は母の元を離れて暮らしているのですね。老いた母は古里で一人暮らし。心配ですね。そんな時、作者
の暮らしの中で鮮やかな「冬紅葉」を見かけました。それは古里にもある木だったのかもしれません。
「母いかに」の思いが同時に募ったのではないでしょうか。冬紅葉の働きがとても効果的でした。
 
◎雲割れて日射しのそそぐ冬紅葉

きれいな写生ですね。それまではそれほど目立っていたわけではなかったのでしょうが、雲が割れて、その
割れ間から日射しが注ぎ出しました。俳人好みの「日矢」状態だったかもしれませんね。その注ぎ先にある
「冬紅葉」。はっとするほどの鮮やかさだったことでしょう。「冬紅葉」が良く見えます。
 
《自由題》
 
★朝の日の冬菜に光る雫かな

霜が降りた朝などに近くを散歩をすると、朝日の当たっている野菜と日陰のそれとの趣の違いに気付くことが
良くあります。日陰は白々と霜降り状態で、触れるとそこだけ瞬時に融けて、真っ青な菜の色が現れますが、
日の当たっている菜はすでに瑞々しく光っています。霜の融けた水滴が日を返しているのです。「冬菜に光る
雫」はまさにその通りです。清々しい冬の朝の景が詠まれました。
 
◎しんがりはなんの役目か雁渡る

空を渡る雁の列(雁の棹、雁行などとも言う)を眺めていると、掲句のような思いに捕らわれることはある。
きちっとした隊列を組んで飛ぶ姿は、それぞれが役目をちゃんと果たしているのではないか、と。
本当に「しんがりはなんの役目」を負わされているのでしょうね。
 
◎山茶花や空堀深き陣屋跡

山茶花が咲き始めるころは、木々は葉を落とし、草は枯れて存在感を失っています。当然のように空堀の姿も良
く見えるようになります。この陣屋跡を囲む空堀も、その深さが良く窺えるような状態になってきたようです。
空堀沿いには山茶花が盛りを迎えていたのでしょうか。景が目に浮かぶようです。


添削(ランクアップのために)

一句目と二句目は「に」と「の」の効果、三句目は季語の問題にふれました。参考にしてください。
 
・冬紅葉開拓民の父祖の地に → 冬紅葉開拓民の父祖の地の

最後の「に」を「の」に変更します。何故でしょう。「に」は場所の説明にしかなりません。父祖の地に冬紅葉
がありました、となり作者の父祖の地に立った感動は読み手に伝わりません。しかし「の」とすれば話は別です。
父祖の地に立った作者の思いが、再び上五の冬紅葉へと還りつつ、作者の感動が印象深く読み手を包み込むのです。
助詞一字の凄さを感じていただければ幸いです。
 
・悄然と無風の丘に枯尾花 → 悄然たり無風の丘の枯尾花

元の句は、折角「悄然」という言葉を斡旋したにも関わらず、しょぼしょぼとした枯尾花が見えるだけの情け
ない景になってはいませんか。「悄然」を堂々と使いましょう。無風の中の芒原。そして枯尾花の持っている、
ひっそりと寂々とした風情を、目一杯作者が受け止めて感動すら感じて欲しいところなのです。
また、なぜ「に」を「の」に変更したのかもご理解ください。
 
・松葉降る剪定の音軽やかに → 松手入鋏の音も軽やかに

「剪定」は果樹の枝を刈り込むことを原則とする春の季語です。もちろん庭木などにも行う行為ではあり、松手入
に応用することも一概に駄目とはいえません。しかし紛らわしいことは確か。折角、「松手入」という秋の季語が
ありますので、それを有効に使うことをお勧めします。
        
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