8月句会結果発表
兼題の部(秋暑し)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
23金屑に光る油や秋暑し5神奈川県ひろし
39秋暑し狂ひしままの花時計5熊本県蕗の薹
70秋暑し廃工場のこぼれ釘4神奈川県浅井誠章
31立たされし廊下の記憶秋暑し4岐阜県近藤周三
1秋暑し公民館の自習室4栃木県垣内孝雄
22秋暑しかけては外す保護めがね3愛知県さと
27かん高き旋盤の音秋暑し3神奈川県ドラゴン
4早口の首相の詞秋暑し3滋賀県正男
49先斗町上ルや京の秋暑し2大阪府光吉元昭
28秒針の時には狂ふ残暑かな2東京都一八
30引く波に足跡消えて秋暑し2東京都山本一二三
41鈍色に波のうねりて秋暑し2埼玉県グレイス
47秋暑し年金おろす列長し2兵庫県大谷如水
63秋暑し昨夜(よべ)の盛り塩崩れ果て2京都府しげお
65秋暑しペダル重たき夜勤明け2東京都カツミ
3秋暑し富士泰然としてゐたり1埼玉県アポロン
7秋暑し飛行機雲の崩れゆく1千葉県えだまめ
26神苑の手水冷たき秋暑かな1埼玉県祥風
33秋暑し黒ネクタイは忍ばせて1神奈川県毬栗
34秋暑し道路に唸る掘削機1神奈川県風神
36半開きの鴉の嘴や秋暑し1奈良県陶生
38浮き玉の転がる漁港秋暑し1千葉県みさえ
42つい口の滑りし小言秋暑し1三重県八郷
45秋暑しれんげしょうまの山登る1千葉県須藤カズコ
46秋暑し牧舎に並ぶ牛百頭1三重県正耕
52秋暑しまぶしき漁網干されたる1沖縄県繭子
53海色の風吹く渚秋暑し1千葉県光雲2
56残したる扉の手相秋暑し1福岡県みつぐ
57気に染まぬ夫婦茶碗や秋暑し1茨城県申女
61バスに乗る喪服の一団秋暑し1千葉県相良 華
62饒舌な電話長々秋暑し1愛媛県牛太郎
64草刈りの余力わずかや秋暑し1三重県穂のか
69夕刻の汽笛の長く秋暑し1長野県幸々
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
179炎昼や疲れきったる影つれて6熊本県蕗の薹
85枝豆の莢の分だけ愚痴を聞く6愛知県コタロー
141懐かしき山河ありけり秋あかね5栃木県垣内孝雄
102町名の此処より変わる猫じゃらし4大阪府レイコ
202空つぽの虫籠抱へ戻りけり4愛媛県牛太郎
203駅員は人身事故と告げ炎暑4京都府しげお
201初秋の新装開店セールかな3千葉県相良 華
74カフェテラス切子に注ぐカプチーノ3滋賀県正男
86村長に続き校長盆踊3石川県一鷹
101爽やかに口では妻に負けておく3岐阜県近藤周三
125寺町の甍に残る暑さかな3東京都一寛
163ビル群を背ナに晩夏の佃煮屋3神奈川県ひろし
133カンナ咲く元町役場今は支所2京都府しげお
106誰一人出会はぬ里の墓参かな2奈良県陶生
75原爆忌飛球飲み込む蒼き空2愛知県矢浦詠正
87渡り鳥飛び立てばもう一直線2大阪府でぷちゃん
97黙祷の球児や八月十五日2神奈川県ドラゴン
108秋暑し浜は流木積み上げて2千葉県みさえ
109かなかなやふとはは恋しちち恋し2熊本県蕗の薹
113展示物となりしデゴイチ鰯雲2奈良県魚楽子
130放牧の戻らぬ羊大夕焼2静岡県こいちゃん
143縁に座し無我の境地に秋の風2埼玉県アポロン
144連山の陰を濃く曳く秋の湖2滋賀県正男
156アルバムの日の丸黒し終戦日2石川県一鷹
175夏草深し下校路の秘密基地2神奈川県志保川有
182秋の蝉今日の命をしぼり鳴く2三重県八郷
200草原に月色の川月見草2静岡県こいちゃん
206非通知の携帯鳴りぬ夏薊2福岡県蛍川
73露草の露の光をいとほしむ2埼玉県アポロン
83灼くる碑や戦没墓碑の深みどり2愛知県丸吉
111遠富士の真青(まさお)に見えて野分晴2埼玉県グレイス
131新秋や赤いバイクの郵便婦1千葉県相良 華
71古希近き灯火親しむ四畳半1栃木県垣内孝雄
76天高しビル屋上の貸農園1大阪府藤岡初尾
77炎天に送電塔の仁王立ち1千葉県えだまめ
78床臥せの祖母に見せやる薯の花1北海道三泊みなと
80巡り行く廃線跡や月見草1京都府せいち
82風孕む丘一面の秋桜1東京都小石日和
84太陽の氷結したる原爆忌1東京都
89一滴の露にはじまる大河かな1埼玉県郁文
103雷鳴や何か怒られそうな気が1神奈川県毬栗
104原爆忌途切れなく蝉鳴きにけり1神奈川県風神
110蟋蟀の棲まふスナック客一人1埼玉県夜舟
114妍競ふ青瓢箪の括れかな1神奈川県横坂 泰
120銀河へと闇の中行く終電車1静岡県さくら
123不在神(ゴドー)待つ女人高野の曼殊沙華1千葉県光雲2
124色づきしひと枝のありナナカマド1岩手県柴田コル
127病床の母へ葡萄の三粒ほど1茨城県申女
128甘き汁肘まで流れ桃啜る1滋賀県和久
136カクテルのようなちゅら海雲の峰1福岡県蛍川
137知ることは別れに似たりおけら鳴く1兵庫県ぐずみ
145田の間縫ふ水路の細き風の盆1愛知県矢浦詠正
149夜明けまで下駄の歯減らす盆踊り1静岡県かいこ
152ていねいに三食食べて生身魂1東京都小石日和
158穴惑い糸ほつれ出る古い靴1高知県稚児車
159朝霧や雫一滴山動く1埼玉県郁文
160阿波踊り夢に亡き母手足振る1岐阜県小太郎
161土地つ子の姫女苑と言うよろしさよ1栃木県荒川三歩
166背伸びして笹へ短冊星祭1埼玉県祥風
168どんと座す開聞岳や鷹渡る1東京都一八
170無住寺に仏弔う白き百合1東京都山本一二三
174ビックバンの欠片散らして天の川1神奈川県風神
185行先の別るるところ雲の峰1千葉県須藤カズコ
187昭和めくアルミの匙のかき氷1兵庫県大谷如水
189茅葺の住む人見ゑず立葵1大阪府光吉元昭
196寄り添ふて生る団栗の三つ四つ1福岡県みつぐ
197美容師の鋏秋気の澄みし音1茨城県申女
198帆柱に等間隔のいわし雲1滋賀県和久
90声上げて子等の観察るりとかげ1岐阜県小太郎
94朝寒や今日の日課の一つ減り1北海道篤道
99万華鏡覗き回せば銀河めく1北海道千賀子
105雁渡しディープインパクトの訃報1神奈川県志保川有
選評 選者:「草の花俳句会」副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部秋暑し》

★秋暑しかけては外す保護めがね

「保護めがね」は、何らかの作業に伴って、眼を保護するために掛ける眼鏡のことでしょう。どんな作業をして
いるのかは具体的に詠まれていませんが、それは読者それぞれが思い描けば良いでしょう。
いずれにしろ「秋暑し」状態での眼鏡は、さぞや鬱陶しいことでしょう。「保護めがね」であれば尚更そう思う
のではないでしょうか。「かけては外す」がその気分を良く伝えています。

◎かん高き旋盤の音秋暑し

前の句とイメージがだぶります。しかし、こちらは耳で感じる「秋暑し」。「かん高き旋盤の音」に、火花ととも
に発する、あのキューンとした耳を打つ音がよみがえってくるようです。「秋暑し」はまさに実感ですね。

◎秋暑し廃工場のこぼれ釘

町場の外れなどに時折見かける廃工場。個人経営でもあったのでしょうか。不況の波にさらされ、やむを得ず閉鎖
せざるを得なかったのでしょう。作者はその廃工場に立ち入り(その理由の詮索は無意味)、ばらばらと落ちてい
る釘(こぼれ釘}を目にしました。整理整頓する間もなく廃工場へと追い込まれてしまった結果の「こぼれ釘」
だったのでしょうか。哀れ感をもよおす「秋暑し」でした。

《自由題の部》

★カンナ咲く元町役場今は支所

このカンナは合併前の町役場を彩っていたものなのでしょう。親しみをもって通っていた町役場であったに違いあり
ません。しかし「今は支所」。慣れ親しんだいつもの職員も人事異動で見かけなくなってしまったのかもしれません。
支所では用が足りない場合もあることでしょう。昔の町役場を懐かしく思っている作者。その象徴がカンナだった
のでしょうか。「カンナ咲く」がとても印象に残る句でした。

◎新秋や赤いバイクの郵便婦

「新秋」、秋の初めの頃を指す季語。ちょうど残暑の頃でもありますが、朝夕は徐々に秋の気配を感じる頃でもあり
ます。そうした空気感の中を「赤いバイクの郵便婦」がやってきたのでしょう。郵便ですので「赤い」は不要の言葉
ですが、ここでは意外と効果を上げているように思います。郵便「婦」だからでしょうか。この頃増えてきた「郵便
婦」。何故か凛々しく感じます。「新秋」が良いですね。

◎初秋の新装開店セールかな

こちらは「初秋」。まだ暑い日々が続くとはいえ、気分だけでも秋と思いたいころでもあります。そんな時期の「新装
開店セール」。気分一新を狙った「新装開店」。どんな店かにもよりますが、店内はおそらく秋一色に染め上げられて
いるのではないかと推測されます。「セール」に誘われる人々の財布の紐は・・・。面白いところに着眼されました。


添削(ランクアップのために)

 俳句は十七音という短い詩ですので、一音一音がとても大事になります。伝えたい内容をじっくりと練り、もっとも
相応しい言葉・表現の選択に心がけるよう願います。

・秋暑し狂ひしままの花時計 → 秋暑し狂うてゐたる花時計

「狂ひし」に「まま」を付したので、「昔狂ってしまったが、いまだにそのままになっている」とのニュアンスがあり、
この「し」は間違いだとは言えません。しかし、この花時計をそんなに作者は何度もみていたのでしょうか。
さらには設置者の問題ですが、そんなに狂ったままにしておくものでしょうか(当然、杜撰なケースがないわけではあり
ませんが)。ということで、今現在の視点に変更しました。

・村長に続き校長盆踊 → 校長も村長もゐる盆踊

句意は、盆踊りの輪の中に村長がいて、そのすぐ後ろに校長も続いていた、と言うことでしょう。でも、そのつながりに
序列の因果を感じてしまうのは私だけでしょうか。村長も校長も一村民として盆踊りの輪に入っていて欲しいと思います。

・底紅や往事残れる四脚門 → 底紅や往事のままの四脚門

おそらく作者は、昔の構えそのものが残っている、とお詠みになったのだと理解はします。しかし「残れる」には何がと
いう具体的な主語が必要とされます(往事は抽象的過ぎます)。そこで「往事」を使われるのであれば、「残る」はひか
えて、「往事のままの」とすべきかと思いました。微妙ではありますが・・・。
        
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