10月句会結果発表
兼題の部(秋刀魚)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
19一言を悔やみつつ焼く秋刀魚かな5茨城県申 女
29被災地の海より届く初秋刀魚5岐阜県色即是句
44太筆の手書きの札や秋刀魚買ふ5三重県正 耕
5のびのびとはみ出している秋刀魚かな4東京都健 一
1秋刀魚焼く勝手口より浪人生3滋賀県百合乃
45見慣れたる妻のうなじや秋刀魚焼く3東京都一 八
64駐在のさんま焼く間を待たさるる3滋賀県和 久
69病室の外は日常秋刀魚焼く3熊本県蕗の薹
56北方領土未だ帰らず秋刀魚焼く2福岡県蛍 川
18秋刀魚焼く田んぼに夕日落ちる頃2埼玉県祥 風
71七輪も遺品の一つ青秋刀魚2北海道三泊みなと
4しみじみと時を思うて秋刀魚焼く2栃木県垣内孝雄
6じゅうじゅうと秋刀魚皿からはみだしぬ2東京都小石日和
10角皿を真一文字に秋刀魚かな2京都府せいち
20屹然と秋刀魚の口の尖りたる2東京都カツミ
23骨一本形を残す初秋刀魚2埼玉県郁 文
41瀬戸焼の織部の皿や秋刀魚焼く2岐阜県小太郎
58七輪に火花七彩初秋刀魚2静岡県さくら
66復興の兆しか秋刀魚棚並ぶ1北海道千賀子
15マンションの煙を立てぬ秋刀魚かな1埼玉県夜 舟
28初秋刀魚われは生き延び食みにけり1兵庫県大谷如水
31秋刀魚焼く香りと煙に身を置いて1奈良県よりみち
32大洋を泳ぎきったる秋刀魚かな1大阪府光吉元昭
33刺し網に光跳ねたる秋刀魚かな1神奈川県ドラゴン
34新所帯秋刀魚は皿をはみ出して1埼玉県グレイス
43晩成と言いきかせつつ秋刀魚焼く1神奈川県毬 栗
46秋刀魚売る三陸弁の活気良さ1愛知県さ と
47秋刀魚皿尻尾あたりに余白あり1神奈川県横坂 泰
53焼秋刀魚まずは腸より食す1福岡県みつぐ
59瞼なき秋刀魚の目焦げ夕間暮1高知県稚児車
68水中の流星群や秋刀魚とぶ1兵庫県ケイト
73秋刀魚食べ明日の計画検討す1愛知県いきか
74へばりつく暮し冷凍サンマ買ふ1兵庫県ぐずみ
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
171農業をやむると添へて今年米6神奈川県ひろし
188豊年や子を抱く嫁の力瘤5岐阜県近藤周三
93夫婦して席譲らるる小春かな5茨城県申 女
115長き夜や表紙の褪せし母子手帳5岐阜県小太郎
204天高し棟梁弾く墨の糸5静岡県かいこ
94客人としてふるさとの秋祭4東京都カツミ
111乱れ萩風の起点となりにけり4神奈川県風 神
215盆栽の一花のごとく秋の蝶4広島県一 九
159大根煮る静かな雨の音の中3京都府せいち
129捨てられし山の畑や赤まんま3静岡県かいこ
80いつまでも旧姓で呼ぶ返り花3東京都小石日和
83カレンダーめくり呼び込む秋の風3千葉県えだまめ
184繋げたき記憶の隙間赤蜻蛉3三重県八 郷
207鎮もれる深山の秋の水鏡3長野県倉田杏
219見得を切る菊人形の男ぶり3熊本県蕗の薹
100お土産にもみじ葉一つ手のひらに2栃木県あきら
95ぐい呑に歪みを見たり冬隣2奈良県陶 生
99自然薯掘るここが我慢のしどころと2三重県まがたまいけ
103老い猫の膝に乗りくる夜寒かな2岐阜県色即是句
107速度上げ釣瓶落しの帰漁船2神奈川県ドラゴン
112彼の人と見紛ふ釣瓶落しかな2長野県幸 々
119箒目に足跡ひとつ秋時雨2東京都一 八
155再会の約束メール菊日和2東京都小石日和
172ズボン干すぽとりと落ちる木の実かな2埼玉県郁 文
183ついと逃げついと戻りて赤蜻蛉2埼玉県グレイス
193街の灯の煙りて冬の始めかな2三重県正 耕
208落葉踏む音は木の声山の声2静岡県さくら
114鴨来る小川の流れけふ荒き1三重県礼 香
135私らしく生きてみたしや秋深む1北海道小 幸
216雪虫の飛んで力の緩みけり1北海道千賀子
76歩き疲れ花野に溶けてゆく妻子1滋賀県正 男
79この径が好き星たちの言葉聞き1東京都健 一
81来し方をふと顧みる虫の夜1埼玉県アポロン
85台風去る庭に鍋釜残し去る1長野県宮澤俊幸
87秋晴や金閣燦と輝きて1奈良県文 義
88長き夜独り解いてく詰将棋1愛知県コタロー
89芋虫は羽化の呪文の糸を吐く1埼玉県夜 舟
92長き夜の灯消えぬナース室1埼玉県祥 風
101罪深き衣被よとまた一献1京都府しげお
105流離の旅の泊りや虫時雨1奈良県よりみち
113若く描く似顔絵画家や秋祭1岐阜県近藤周三
118木犀の花の散り敷く今朝の道1三重県正 耕
120小鳥来る友の遺句集繰る側に1愛知県さ と
122秋晴や浦風孕む帆引船1千葉県みさえ
123秋蝶の遊び呆けし墓石かな1栃木県荒川三歩
124金木犀雨に打たれる落花の輪1東京都山本一二三
126柿千個おちて十個の朱々(あかあか)と1神奈川県志保川有
128友禅を銀河の帯へ流しけり1千葉県光雲2
133月光の照らす芝生の白ベンチ1静岡県さくら
136新涼や両手で掬ふ川の水1愛媛県牛太郎
138曼殊沙華三本ゆれる風の道1千葉県畑 博
150女郎花湯宿の旦那愛想よく1滋賀県百合乃
151空缶のあっけからんと秋祭1滋賀県正 男
154身のうちの鈴を鳴らして秋遍路1東京都健 一
157曇り日こそなほ美しく沙羅の花1大阪府藤岡初尾
160朝寒や診察券は擦りきれて1長野県宮澤俊幸
162金色をいまに紅葉の光堂1奈良県文 義
165台風や顔見知りたる避難民1愛知県丸 吉
170身に入むや父の遺愛の肥後守1奈良県陶 生
173錦秋の谷に廃墟の温泉地1北海道篤 道
175秋夜長焦れば足らぬ命かな1栃木県あきら
177石庭や流るゝ風に秋の声1兵庫県大谷如水
180山深く妻恋ふ鹿の声悲し1奈良県よりみち
185一人居に家族の歴史柿熟るる1千葉県須藤カズコ
186風の音残して帰る芒原1神奈川県風 神
190秋晴や長病の髪カットせり1岐阜県小太郎
191雨上がり黒き雲間に秋夕日1三重県穂のか
194晩秋や立てかけてある竹箒1東京都一 八
197雲間より一条の日矢千鳥飛ぶ1千葉県みさえ
200試みに呼べば答へる夜長かな1兵庫県柴原明人
201下の子の写真少なし運動会1神奈川県志保川有
205烏瓜仏も遊ぶ日和かな1福岡県蛍 川
206声のする方は青空小鳥来る1大阪府椋本望生
209北欧の音色響けり十三夜1高知県稚児車
211川底の石のそれぞれ水澄めり1愛媛県牛太郎
214村中の古き看板唐辛子1滋賀県和 久
選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:秋刀魚》

★北方領土未だ帰らず秋刀魚焼く

北方領土問題の解決なくして戦後とは言うな、という声を多く聞きます。そこで生まれ育った人たちにとっては
まさに故郷。いまだにしこりが残ったままの望郷の念。忸怩たる思いのまま「秋刀魚焼く」作者。
「秋刀魚にがいかしょっぱいか」の歌が、身のうちを駆けめぐるように聞こえてくるようです。今年は秋刀魚が
不漁だとは聞きますが…。

◎一言を悔やみつつ焼く秋刀魚かな

あんなことを言わなければ良かった、という後悔は誰にでもあることでしょう。はっと思っても後の祭り。後味の
悪さはいつまでも尾を引きます。普段は楽しみな秋刀魚も、こんな日は何故か煙ばかりが…。涙目になりながら、
またしても後悔の念に苛まれているのでした。

◎復興の兆しか秋刀魚棚並ぶ

最近は自然災害があちこちで頻発しています。その災害を大きくしているのは、ひょっとしたら人間の知恵の拙さ
かもしれませんが。それでもみんなして復興へと力を尽くしています。その「復興の兆し」の一つが「秋刀魚棚」
の存在だと作者は詠みます。少しづつ豊漁へと向かいだした秋刀魚漁への期待もあるのでしょう。
「秋刀魚棚並ぶ」がいかにも嬉しそうです。

《自由題の部》

★豊年や子を抱く嫁の力瘤

逞しい「嫁」を愛情をもって見守っている作者。今年の豊作はこの嫁の力も大いに与っていたと微笑む作者。
「子を抱く嫁の力瘤」。とても素敵な表現に最大限の拍手を贈りたいと思います。弾けるような家族の笑い声まで
聞こえてきそうで楽しいですね。

◎お土産にもみじ葉一つ手のひらに

良く見かける光景でもあり、自分でも何となく綺麗な葉っぱを拾い、栞にでもしようなどと思うことはあります。
そのことを実に素直に句にしました。そのせいかとても爽やかに読めるのです。このような句を読むと、俳句は
「捻る」べきものではない、と強く感じます。俳句はこれで良いのです。

◎大根煮る静かな雨の音の中

大根を煮る音ばかりがぐつぐつと聞こえています。美味しそうな匂いが湯気と共に立ち上がっている光景が見えて
きます。外は静かに雨が降り続いています。風呂吹きにでもするのでしょうか。穏やかな日常の一齣がやさしく
切り取られました。


添削(ランクアップのために)

今回は文法と切字の問題を取り上げてみました。なかなかややこしい部分があります。しっかりと身につけて
いただければ幸いです。

・菩提寺に詣づ間道薄紅葉 → 菩提寺へ参る間道薄紅葉

「詣づ(終止形)」では「間道」へつなげることはできません。ここは「詣づる(連体形)」でなければなりません。
すると中八で具合が悪くなります。ここは同意味の「参る」を使いましょう。これで問題は解消です。
ですが、もう一点。「菩提寺に」の「に」は、その場所を限定する助詞ですので、むしろここは方向を示す助詞
「へ」とすべきところでした。ご検討ください。

・深川やはや秋色の閻魔堂 → 深川ははや秋色の閻魔堂

掲句は「深川や」と、先ず深川のイメージを読み手に喚起させ、「はや秋色の閻魔堂」へと焦点を絞り込む作りに
なっています。しかし、果たして「深川や」はどんな働きをしているのでしょうか。深川と閻魔堂との関係が切れて
しまって良いのでしょうか。むしろ「深川」と「閻魔堂」を一体のものとして詠んで欲しいと思いました。
「や」を「は」という係助詞に替えることで一句は一新されるはずです。ご研究ください。

・ズボン干すぽとりと落ちる木の実かな → ズボンを干せばぽとりと木の実落ちにけり

切字は一句に一つを原則としています。その理由は、切字は一句の主役を指示する機能があるからです。主役が二人
では、劇の主題も分裂してしまう恐れがあります。掲句の上五は表には出ていませんが、「ズボン干すや」の「や」
が隠れているとみなされます。そこで一章句としての作りに替えたいと思います。参考にしてください。

        
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