6月句会結果発表
兼題の部(冷奴)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
77冷奴床に影置く京格子5京都府しげお
9冷奴水にも色のあるを知り5滋賀県百合乃
20奥嵯峨の昼をともして冷奴4大阪府藤岡初尾
79口きかぬままに並べる冷奴4福岡県蛍川
72ひとり酔ふひとりの夜の冷奴3愛媛県牛太郎
15琉球の塩ひとつまみ冷奴3京都府福井茶衣
42酌み交はす父と子の黙冷奴3熊本県蕗の薹
54ああうんの夫婦の会話冷奴3福岡県宮内 和彦
82冷奴と決めて日暮れの一仕事3広島県新宅 俊
18肩の力抜いてみました冷奴2三重県déraciné
25冷奴父の没年はるか越し2栃木県荒川三歩
4冷奴出で湯に星のある夜かな2静岡県指田悠志
5遠き日のラッパ懐かし冷奴2京都府花子
8とほき日の和みし父や冷奴2埼玉県アポロン
16入り組んだ話嫌うや冷奴2神奈川県阿部文彦
17冷奴どう言われても通す意地2京都府せいち
41半年の恋愛期間冷奴2埼玉県ささき良月
51三密と無縁の暮らし冷奴2奈良県陶生
55辛口の酒とスルメと冷奴2埼玉県イレーネ
67冷奴葱花鰹大吟醸2神奈川県毬栗
81冷奴破談の訳は真面目すぎ2長野県幸々
92冷奴いなせに角を立ててをり1千葉県珍竹
2つまされる身の上話冷奴1奈良県風来
3土耳古青の皿にぷるんと冷奴1和歌山県茫々
6機内食揺れて一口冷奴1愛知県草木
10改めて醤油の旨し冷奴1兵庫県鈍愚狸
12夫ありて冷奴にも家の味1東京都足立智美
14亡き父の口もとゆるむ冷奴1広島県林 己紀男
22別居して掃除機細く冷奴1千葉県あけび庵
23生真面目な漁師貫く冷豆腐1北海道三泊みなと
24冷奴あれば事足る昼餉かな1福岡県和子
28病因は加齢の見立て冷奴1東京都水谷博吉
29四合瓶開け独り身の冷奴1神奈川県ひろし
31青竹の箸切りいるや冷奴1埼玉県祥風
33冷奴月給取りを貫ぬけり1大阪府光吉元昭
34井戸の水汲みあげ浮かす冷奴1福岡県みつぐ
38冷奴そこそこいける嫁と呑み1静岡県かいこ
39冷奴夫に一切れ多く分け1栃木県あきら
44親子して律儀に崩す冷や奴1北海道篤道
46山宿の角しつかりと冷奴1神奈川県松 良雪
47伸び代のまだある余生冷奴1東京都一八
58冷奴崩し片意地やめにけり1岐阜県近藤周三
62冷奴ネットのレシピ一万種1千葉県山月
69饒舌の友がくずせし冷奴1東京都藤方昭男
74夕風を招き入れては冷奴1神奈川県横坂 泰
78白魚の指の酌して冷奴1東京都ひぐらし
84冷奴冷たくされてなほ愛し1兵庫県ケイト
86荒磯の波音高し冷奴1静岡県春生
87しばらくは敬語を遣ふ冷奴1兵庫県除門喜柊
95年ごとに亡父に似るや冷奴1静岡県こいちゃん
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
126海原を二つに分けて夕立かな11大阪府
179一島の動き出したる祭かな9東京都
136去り際に漏らす本音や白日傘9茨城県申女
150夏盛り雲に二段の力瘤8福岡県宮内 和彦
143遮断機のゆるゆる上がる薄暑かな7東京都一八
102葉の上のト音記号やかたつむり6千葉県玉井令子
178三歳に撃たれて嬉し水鉄砲5広島県新宅 俊
168診察の椅子の回転半夏生4愛媛県牛太郎
177深き皺麦藁帽子のよく似合う4長野県幸々
221スコールや残りひと日の島の旅3神奈川県ひろし
133亡き母に呼び掛けてみる夕蛍3東京都千晴
241走り来る子らの足音めだか散る3神奈川県みぃすてぃ
248釣人の等間隔に梅雨晴間3埼玉県グレイス
130花蜜柑無人で下るモノレール3福岡県みつぐ
131ビー玉の音を飲み干すラムネかな3神奈川県ドラゴン
165傾きて母に寄り添う日傘かな3東京都藤方昭男
287放蕩の南瓜の蔓を正しけり3静岡県こいちゃん
222さつきから何か居るらし草いきれ2大阪府
101万緑の底の浅瀬に竿を振る2愛知県草木
111くちなはの浮ぶ浅瀬や雨上がる2京都府福井茶衣
116夏草の伸びたるままの墓増えて2大阪府藤岡初尾
117七夕や思ひ沈めて共白髪2東京都小石日和
134万緑に埋まる廃屋絵になりて2静岡県かいこ
138弥陀仏の古拙の微笑蓮開く2熊本県蕗の薹
172紫陽花やかいな眩しき乙女たち2愛知県さと 
180お一人様同士ですねと笑む金魚2兵庫県ケイト
183手を抜けば拗ねてくの字の胡瓜かな2兵庫県除門喜柊
188読めそうで読めない心ところてん2千葉県珍竹
200紫陽花や昨日の誠今日は嘘2滋賀県百合乃
209刻まれし名前をなぞる沖縄忌2京都府せいち
212参道の長き石段夏めきて2大阪府藤岡初尾
216耶蘇人の匂ひどこかに島薄暑2福岡県和子
234ワイパーのきざむアレグロ梅雨滂沱2熊本県蕗の薹
238峡の空映す川瀬や糸とんぼ2神奈川県松 良雪
239鈍行の余生の旅や蝸牛2東京都一八
242たまゆらの命耀ふ梅雨の蝶2千葉県光雲2
246ステテコの父の小さな武勇伝2福岡県宮内 和彦
260銀輪の風切る音や更衣2静岡県さくら
173南天の散るごと咲きて散りにける1京都府しげお
96蜘蛛の囲や山懐の破れ寺1栃木県垣内孝雄
103早苗田の一枚を覆ふ雲の影1埼玉県アポロン
104夕焼けの学舎の時計塔朱く1滋賀県百合乃
106傘いらぬ雨を歩いて花卯木1兵庫県鈍愚狸
107父の日の父の大きな背中かな1愛知県コタロー
118布袋草うき世に伸ばすひげ根かな1千葉県あけび庵
123鬼百合の奈落に落つる虫一匹1茨城県逸光
139梅雨寒の街に戻らぬ人の影1千葉県えだまめ
140高原の懐深し熱気球1北海道篤道
144父の日や「森伊蔵」提げ娘婿1岐阜県色即是句
147B面の男掛けるサングラス1奈良県陶生
156ラインまつ月の光は空蝉へ1北海道たわか
157夏草や古都悠久のまま千年1三重県八郷
160斑猫や心遊びの羽の色1埼玉県まこ
161思い切り犬伸びをする梅雨晴れ間1千葉県相良 華
163カーテンのどよんとゆるる走り梅雨1神奈川県毬栗
164抱きたるペットの遺骨梅雨寒し1静岡県さくら
166合歓の花旋毛二つの童寝る1千葉県純士
176手枕のしびれて覚めて半夏生1滋賀県和久
182むせ返る漢可愛やところてん1静岡県春生
184実直に生きて三たびの秋出水1大阪府椋本望生
191店頭の無人演奏ソーダ水1静岡県こいちゃん
193如雨露とはまことよき名や梅雨晴れる1奈良県風来
195深山の滴り匂ひたつばかり1静岡県指田悠志
196形代や頭と手足念入りに1京都府花子
197留石の先の築山苔の花1愛知県草木
210葉の蔭の梅や産毛に靄るあを1三重県déraciné
211どくだみを庭にひろげて古家かな1愛知県丸吉
219縮む世に自己主張せり唐辛子1茨城県逸光
220ネグリジェの売り場に迷い入る薄暑1東京都水谷博吉
223あじさいや休校明けの通学路1埼玉県祥風
224疫の世も巡る自然や半夏生1長野県倉田杏
227夢にまで潮騒届くハンモック1神奈川県ドラゴン
231わが夫は初めはノーでカタツムリ1栃木県あきら
240湯上りの髪を梳きゆく青葉風1岐阜県色即是句
243向日葵や性善説を信じ生く1奈良県陶生
250無住寺をかくしてしまふ濃あぢさゐ1岐阜県近藤周三
253無垢といふ朝白蓮の花開く1三重県八郷
261ラムネ抜く音にはしゃぐや子供会1東京都藤方昭男
264子燕の恐る恐ると飛びにけり1愛媛県牛太郎
277途切れたるタイヤの跡や夏の草1三重県正耕
279へそくりの在処を知ってラムネ飲む1兵庫県除門喜柊
選評 選者:「草の花俳句会」副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:「冷奴」》

★ひとり酔ふひとりの夜の冷奴

一人が似合う冷奴。多くの方が同じように感じているようです。そしてそこにはお酒が……。この作者も他の方と
同様に感じているようですが、「ひとり」のリフレインが、一人時間をしみじみと楽しんでいる様子を、調べよく
表現されており、好感を持ちました。心地良い酔い心地の後ろには、一抹のさびしさも揺曳されているようでは
ありますが。

◎肩の力抜いてみました冷奴

冷奴というものは、決してメインになるおかずではありませんが、この一品の有無はとても重要。「肩の力抜いて
みました」は、このことをとても雄弁に語っているようです。昼食でも良いし、もちろん一日の仕事が終えての飲
み会、はたまた夕飯でもOKでしょう。「肩の力を抜」きたい時には、どう言うわけかいつも冷奴があるのでした。

◎奥嵯峨の昼をともして冷奴

嵯峨野は湯豆腐の有名な地です。しかしこの句は、そのさらに奥、やや山がかった街道脇にでもある茶屋等での景
かもしれませんね。暑さを凌ぐには最適の場所なのかもしれません。「昼をともして」という木立に覆われた環境
で食す冷奴。贅沢な一時を過ごされたようです。「奥嵯峨」が平凡のようで良く働きました。

《自由題》

★スコールや残り一日の島の旅

一般的にスコールは熱帯地方の驟雨を言うようですが、強風とともに降水や雷雨を伴うとされています。いずれに
しろ作者は南方の島を旅行地に選ばれ充分に堪能されたようです。最後の最後に名物?のスコールにも会うことが
できたのですから……。良い思い出が追加されたようです。もちろんこのスコールを作者はマイナスには捉えては
いないはずです。

◎三歳に撃たれて嬉し水鉄砲

「三歳」は、子なのか孫なのか。それを詮索するのは野暮と言うもの。何をしてもされても、ただ可愛いだけの存在
が「三歳」。「撃たれて嬉し」はその吐露。あまりに正直な感情吐露にかえって清々しささえ覚えるほどです。
たまにはこういう句も良いものですね。

◎一島の動き出したる祭かな

聖と俗で言えば、言うまでもなく祭は聖。島の人々の日常は単調な繰り返しが前提であり、原則的に羽目を外すこと
はありません。それが俗の世界。しかし、安定した暮らしを維持するには、祭という非日常が必要とされるようです。
島中の人々がダイナミズムに身を踊らせることで、再び活力が蘇るのです。丁度その時期が夏。「一島の動き出したる
」は、その島のダイナミズムを感受した作者の、素直な描写だったように思います。


添削(ランクアップのために)

私が師に「形容詞を生のまま使うことは百句に一句くらい、動詞もせいぜいひとつ、それも、他動詞は使わない。
本当に感動していればそれらはいらない」と言われたことを思い出しています。ご参考になれば……。

・年ごとに亡父に似るや冷奴 → 年ごとに父に似てくる冷奴

「亡父」は耳に心地良く響きません。確かに作者にとってはその通りなのでしょうが、ここは普通に「父」で良いと
思います。読み手それぞれが共感できるように。それぞれの方が「そうだよなあ」などと思いつつ、冷奴を思い浮か
べるのです。

・お目玉をくらいし夜も遠蛙 → お目玉をくらひたる夜の遠蛙

「くらいし夜も」では「遠蛙」までが思い出の一齣のようになってしまいます。やはり俳句では今を詠んでいただき
たい。叱られてしょげ返っている身に「遠蛙」が……、というように。過去の「し」、そして「も」が敗因なのです。
完了の「たる」を用いれば一件落着となります。なお、歴史的仮名遣いでは「くらひ」となります。念のため。

・洞爺湖に映す有珠岳夏景色 → 洞爺湖に映る有珠岳夏景色

「映す」を「映る」に替えました。前者は他動詞、後者は自動詞。その違いを解っていただきたいのです。一体誰が
「映す」のでしょう。指摘されると、はっとされる方が多いのですが、何となく他動詞の方が訴える力が強いと錯覚
されている方が多いのです。今月の投句でも幾つかありました。しかし、自然体で素直に詠んで欲しいと願います。
一般的に、他動詞は外連味が強くなりがちです。お気を付けください。


        
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