10月句会投句一覧
兼題の部(秋刀魚)
1秋刀魚焼く勝手口より浪人生2人生は以下省略の秋刀魚の値
3値札見て遠くで眺む秋刀魚かな4しみじみと時を思うて秋刀魚焼く
5のびのびとはみ出している秋刀魚かな6じゅうじゅうと秋刀魚皿からはみだしぬ
7不漁などどこ吹く風と焼く秋刀魚8才媛にして初秋刀魚焼いてをり
9初秋刀魚何やら心安らげり10角皿を真一文字に秋刀魚かな
11秋刀魚焼く無煙グリルと手にスマホ12ぴちぴちとまたぴちぴちと秋刀魚かな
13藷粥を食みし昔や秋刀魚焼く14運ばれし定食まずは秋刀魚見る
15マンションの煙を立てぬ秋刀魚かな16海の幸思はぬ不漁新秋刀魚
17秋刀魚焼き愁い苦しと煙立ち18秋刀魚焼く田んぼに夕日落ちる頃
19一言を悔やみつつ焼く秋刀魚かな20屹然と秋刀魚の口の尖りたる
21怨念を炎に秘めて秋刀魚燃ゆ22蒼き目の海を恋ひたる秋刀魚かな
23骨一本形を残す初秋刀魚24煙るさえ妻得意げや初秋刀魚
25念仏を唱えつ小僧落葉掃く26もう聞けぬ母のレシピの秋刀魚飯
27熊野へと靡く幟に「秋刀魚鮨」28初秋刀魚われは生き延び食みにけり
29被災地の海より届く初秋刀魚30初秋刀魚センサー拒む直火焼
31秋刀魚焼く香りと煙に身を置いて32大洋を泳ぎきったる秋刀魚かな
33刺し網に光跳ねたる秋刀魚かな34新所帯秋刀魚は皿をはみ出して
35旨しもの人は黙して秋刀魚食ぶ36頭無き秋刀魚売らるるマーケット
37七輪で秋刀魚の焼けぬ都会かな38プラチナの指環贈りて秋刀魚貰ふ
39境内や秋刀魚けぶらせをさな妻40秋刀魚焼く煙なつかし七輪や
41瀬戸焼の織部の皿や秋刀魚焼く42内臓も美味といふ夫秋刀魚焼く
43晩成と言いきかせつつ秋刀魚焼く44太筆の手書きの札や秋刀魚買ふ
45見慣れたる妻のうなじや秋刀魚焼く46秋刀魚売る三陸弁の活気良さ
47秋刀魚皿尻尾あたりに余白あり48居酒屋も我が家も秋刀魚づくしなり
49秋刀魚焼く暮れる狭庭の乱気流50秋刀魚船何時また揺れる海の底
51黒づくめ舌出す戦士秋刀魚喰ふ52痩秋刀魚猫に分けやるほどのなく
53焼秋刀魚まずは腸より食す54秋刀魚の目遠き海原恋しがり
55御時世や魚焼器で秋刀魚焼く56北方領土未だ帰らず秋刀魚焼く
57もらひ風呂せよと言ふはは秋刀魚焼く58七輪に火花七彩初秋刀魚
59瞼なき秋刀魚の目焦げ夕間暮60秋刀魚細し2匹を皿に不漁かな
61秋刀魚焼く相応の皿ありにけり62秋刀魚焼く野球中継見え隠れ
63たっぷりの大根おろして秋刀魚待ち64駐在のさんま焼く間を待たさるる
65大秋刀魚二つに分かち焼きにけり66復興の兆しか秋刀魚棚並ぶ
67人住まぬ厨にこもる秋刀魚の香68水中の流星群や秋刀魚とぶ
69病室の外は日常秋刀魚焼く70去年よりちょっと高めの秋刀魚焼く
71七輪も遺品の一つ青秋刀魚72小振りなれど秋刀魚は秋刀魚苦きかな
73秋刀魚食べ明日の計画検討す74へばりつく暮し冷凍サンマ買ふ
自由題の部
75鱗雲湖半ばまでひろがりて76歩き疲れ花野に溶けてゆく妻子
77頬染めて戯れ舞うや秋桜78菩提寺に詣づ間道薄紅葉
79この径が好き星たちの言葉聞き80いつまでも旧姓で呼ぶ返り花
81来し方をふと顧みる虫の夜82相手チームの歓喜の姿秋の風
83カレンダーめくり呼び込む秋の風84白秋や踏むのも惜しき松の影
85台風去る庭に鍋釜残し去る86夕立(ゆだち)です夕立(ゆだち)の中を帰ります
87秋晴や金閣燦と輝きて88長き夜独り解いてく詰将棋
89芋虫は羽化の呪文の糸を吐く90ラガー等に死闘の果ての故山あり
91毬栗を割って顔出す虫の穴92長き夜の灯消えぬナース室
93夫婦して席譲らるる小春かな94客人としてふるさとの秋祭
95ぐい呑に歪みを見たり冬隣96天蓋に水溜め込みて台風来
97空蒼き柿日和なる田舎かな98朝霧や今日は難問解けそうな
99自然薯掘るここが我慢のしどころと100お土産にもみじ葉一つ手のひらに
101罪深き衣被よとまた一献102凄惨や祈る他なし秋出水
103老い猫の膝に乗りくる夜寒かな104天高し天井知らず欲の泡
105流離の旅の泊りや虫時雨106白銀の波にはじける秋刀魚漁
107速度上げ釣瓶落しの帰漁船108からからとぽんこつ自転車秋日和
109野の端に忘れおかれる吾亦紅110新蕎麦に亭主の話もひとくさり
111乱れ萩風の起点となりにけり112彼の人と見紛ふ釣瓶落しかな
113若く描く似顔絵画家や秋祭114鴨来る小川の流れけふ荒き
115長き夜や表紙の褪せし母子手帳116手入れした狭庭明るく小鳥来る
117秋晴や文学館まで手をつなぎ118木犀の花の散り敷く今朝の道
119箒目に足跡ひとつ秋時雨120小鳥来る友の遺句集繰る側に
121着こなしの酒然なりけり菊花展122秋晴や浦風孕む帆引船
123秋蝶の遊び呆けし墓石かな124金木犀雨に打たれる落花の輪
125寝ころべば鹿忍び寄る奈良の山126柿千個おちて十個の朱々(あかあか)と
127お通しの茹で蓮の実の薄みどり128友禅を銀河の帯へ流しけり
129捨てられし山の畑や赤まんま130夕暮れ時饒舌やまぬ曼珠沙華
131きりもなき雨の落葉をそそと搔く132秋冷や君のぬくもり夢うちに
133月光の照らす芝生の白ベンチ134やさし声響いて母の障子貼り
135私らしく生きてみたしや秋深む136新涼や両手で掬ふ川の水
137岸壁の錆びた包丁秋旱138曼殊沙華三本ゆれる風の道
139東京はネオンばかりや憂国忌140秋桜を見やれば遠に瀬戸の海
141秋の日の蔦屋書店に一人居て142桜の葉勝手気ままに色づけり
143枯葎時効の消滅を知らず144色鳥の来てくれぬかと庭を掃く
145縁側じゃもうちと寒し一人酒146楊梅の熟れて血潮を滴らす
147傷つけて傷ついて柚子熟るる148晩秋や筋トレ直ぐに飽きて寝る
149もみあげを終えし松葉に時雨かな150女郎花湯宿の旦那愛想よく
151空缶のあっけからんと秋祭152ヘラ鮒の引き味堪能初秋釣り
153散歩道立ち寄る花舗の秋そうび154身のうちの鈴を鳴らして秋遍路
155再会の約束メール菊日和156山並みを抱く夕陽や花すすき
157曇り日こそなほ美しく沙羅の花158寝そびれて窓を開ければ星月夜
159大根煮る静かな雨の音の中160朝寒や診察券は擦りきれて
161春昼や老婆二人の長話162金色をいまに紅葉の光堂
163青空へ黄金に染まる稲穂かな164女郎花一風ごとに向きを変へ
165台風や顔見知りたる避難民166鎌倉のシラス小舟や秋の海
167秋の月露座の大仏影置けり168深川やはや秋色の閻魔堂
169十月の淋代の海白き砂170身に入むや父の遺愛の肥後守
171農業をやむると添へて今年米172ズボン干すぽとりと落ちる木の実かな
173錦秋の谷に廃墟の温泉地174湯の町やぴんぴんころり冬うらら
175秋夜長焦れば足らぬ命かな176鹿垣や獣を阻み人阻み
177石庭や流るゝ風に秋の声178人知れず弾けて笑ふ木通かな
179足首を少し出したき秋袷180山深く妻恋ふ鹿の声悲し
181ブリュッセル馬車馬の臀黒き汗182子規の句を繰り返し読む秋灯火
183ついと逃げついと戻りて赤蜻蛉184繋げたき記憶の隙間赤蜻蛉
185一人居に家族の歴史柿熟るる186風の音残して帰る芒原
187熟葡萄じわりと疼く痣のあり188豊年や子を抱く嫁の力瘤
189香り立ち色も立ちけり木犀よ190秋晴や長病の髪カットせり
191雨上がり黒き雲間に秋夕日192人生の大根役者くるみ割る
193街の灯の煙りて冬の始めかな194晩秋や立てかけてある竹箒
195空きを待つ長い車列や草紅葉196くまもんの退く背の秋思かな
197雲間より一条の日矢千鳥飛ぶ198秋夕焼一人飲食華やぐも
199朝靄に小鳥飛び立つ青い柿200試みに呼べば答へる夜長かな
201下の子の写真少なし運動会202トンネルの出口は馬関鳥渡る
203王朝の美々しき命や実むらさき204天高し棟梁弾く墨の糸
205烏瓜仏も遊ぶ日和かな206声のする方は青空小鳥来る
207鎮もれる深山の秋の水鏡208落葉踏む音は木の声山の声
209北欧の音色響けり十三夜210インコの雛まるちゃんと名つけられ秋
211川底の石のそれぞれ水澄めり212蓑傘の神の方言星月夜
213ばあちゃんの味を思いておはぎ買い214村中の古き看板唐辛子
215盆栽の一花のごとく秋の蝶216雪虫の飛んで力の緩みけり
217秋寿ぐ赤松の幹ツタモミジ218クリームシチュー濁す舞茸村八分
219見得を切る菊人形の男ぶり220台風に根こそぎ奪られ立ち尽くす
221闇汁を恐れながらも掬ひたり222夜学子の給食食ぶるとき笑顔
223バター手に本格クッキー秋の末224左利き目立つフォームに廻す海蠃
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より1句、自由題より2句の計3句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:11月27日(水)、発表は11月30日(土)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
9月句会結果発表
兼題の部(花野)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
16ふるさとは花野の中の無人駅6東京都
36背に踊るリュックサックや花野道3三重県正耕
58会釈することも一会や花野径3東京都健一
20夕花野狐の嫁入り通りけり3兵庫県柴原明人
35風渡る花野に望む十勝岳3神奈川県風神
33廃校に人の声あり花野風2神奈川県横坂 泰
66どの道を行きても花野花野原2熊本県蕗の薹
1大和路の花野潤す小雨かな2大阪府宮下 英範
7夕まぐれ花野の先に母や居る2千葉県えだまめ
9大花野ハイジになりて駆けまわる2愛知県コタロー
11花野道夜には獣の通ふ道2京都府せいち
26イーゼルの置場に迷ふ大花野2兵庫県大谷如水
37雲の影ときに流れて大花野2福岡県みつぐ
42その先に野仏おはす花野かな2埼玉県グレイス
45リフトゆれ靴先ふれる花野かな2愛知県さと
48山路来てはたと展ける花野かな2岐阜県色即是句
60空見上げ犬と寝転ぶ花野かな2千葉県相良 華
63園児らの歌声つずく花野かな1滋賀県和久
2犬の名はマサルロシアの花野ゆく1茨城県申女
3航跡の湖のほとりの花野かな1埼玉県アポロン
5花野道女の櫛の落し物1大阪府藤岡初尾
6振り向けば小道遥かな花野かな1東京都小石日和
14土地の人訛親しや花野道1愛知県丸吉
18菩提寺はにわか花野の日和かな1埼玉県祥風
21譲り合ふことも一会や花野径1東京都健一
22薄ら日に花野を歩む孤老なり1北海道篤道
24こどもたち花野の花となりゆけり1神奈川県毬栗
30遠き日の花野に摘みし供え花1長野県
31抜け出れば稜線すべて花野道1埼玉県郁文
39雲の影流れるように大花野1東京都一八
41妻と観たり今独り観る花野かな1大阪府光吉元昭
46山頂の靄消え去りて大花野1大阪府レイコ
52たゆたふる命の香花野の夜1神奈川県志保川有
53再会や花野に現地集合す1岐阜県近藤周三
54花野なす一輪一輪咲いてなす1長野県幸々
56大花野どこへ行つたか愚痴の種1大阪府椋本望生
65背の鈴の音色聴きつつ大花野1高知県稚児車
67花野来て風ふく道に一人立ち1千葉県畑博
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
177眠る児の掌よりこぼるる木の実かな7東京都一八
79ちちろ鳴く地に下ろされし鬼瓦6三重県déraciné
96墓地だけが残る故里曼珠沙華5奈良県陶生
127止まりたる独楽は木の実に戻りけり5東京都健一
135ページ閉じ虫聞く耳となりにけり4熊本県蕗の薹
133山に生れ山に老いたり茸飯4静岡県春生
189秋の日や牛の眼の半開き4静岡県さくら
90止まりたる独楽は木の実に戻りけり3東京都健一
91家に居るただそれだけの秋日和3北海道篤道
105頂へ続く畑や柿の村3三重県正耕
118天高し突堤の子の小さき竿3沖縄県繭子
140二冊目の御朱印帳へ秋の風3茨城県申女
155子規の庭風を離さぬをみなへし3千葉県みさえ
184神木の紙垂の白さに秋気澄む3大阪府レイコ
191身離れのよき煮魚や新酒酌む3岐阜県近藤周三
95存えてこその幸せ初秋刀魚2兵庫県大谷如水
106都府楼の礎石のいづこ蚯蚓鳴く2福岡県みつぐ
72先人を名句に偲ぶ秋風鈴2埼玉県アポロン
74草を引く帽子の影に蝶の影2大阪府藤岡初尾
81野を渡る風新しき今朝の秋2神奈川県ひろし
86黄泉路への最終コーナー地虫鳴く2千葉県みさえ
88「なるやうになるさ」案山子に労られ2東京都カツミ
103好き嫌ひ無きは長所かゐのこづち2兵庫県喜柊
124御仏の衣に遊ぶ秋の風2東京都山本一二三
126窯出しの手をやすめたり金木犀2大阪府でぷちゃん
149湖へ銀の波打つすすき原2京都府せいち
158渋柿は我が道しるべ父のこと2兵庫県柴原明人
186庵まで竹の春なる嵯峨野かな2岐阜県色即是句
201鳥となり飛んでもみたき秋の空2滋賀県和久
132落鮎や川面の暮色をまとひつゝ1滋賀県和久
115色変へぬ松や衛士の勤番所1大阪府レイコ
73沖風の大蓼の房揺らし過ぐ1北海道三泊みなと
77敬老の日は陽だまりの自由席1滋賀県正男
78秋暑しタピオカを飲む女学生1愛知県コタロー
82コスモスの風に順う帰り道1栃木県垣内孝雄
92高原に湧き出て群れるアキアカネ1静岡県かいこ
93川の月をんなのやうについてくる1神奈川県毬栗
94月明や背高き墓は勳八等1京都府しげお
97病室に風を通すや涼新た1岐阜県小太郎
98早瀬へと紅葉一葉の悶え落つ1埼玉県夜舟
99夫と立つ標高三千星月夜1長野県
100掬ぶ水秋音こぼる山路かな1埼玉県郁文
109秋天へ三段跳びの身は弾む1三重県八郷
112食卓の光も匂ふラ・フランス1千葉県光雲2
113日曜の農夫来りて蔓たぐり1千葉県須藤カズコ
116髪切つて兄に似る面秋の風1北海道千賀子
120堀りたれば細き甘藷の子沢山1静岡県さくら
121「ごめんね」の一語の難さ身に入みる1神奈川県志保川有
129鉄柱の錆びた臭いや秋暑し1千葉県相良 華
130綱引きのかけ声ながれ天高し1広島県一九
137灯台や沖に秋思の環を点し1兵庫県ぐずみ
146空缶のひしゃげしままに秋の暮1滋賀県正男
151無花果やローランサンの女どち1栃木県垣内孝雄
152女騎手人生いまは秋競馬1愛知県丸吉
154秋天や雲ひとつまみふたつまみ1東京都
168草叢に露草一輪朝の道1長野県
169寄り添いし黙の二人に秋夕焼1埼玉県郁文
176宮入りの荒ぶる神輿秋高し1奈良県文義
180老僧の手蹟黒ぐろ桐一葉1埼玉県グレイス
183薄紅葉酢の香ただよう蔵通り1愛知県さと
188秋霖や味噌汁匂う深庇1栃木県荒川三歩
190神を抱くマチュピチュの山装へる1神奈川県志保川有
192道ならぬ道へ魔が差す秋日傘1長野県幸々
197パレットを秋色に変え旅に出る1東京都一寛
199孫からはラインスタンプ敬老日1広島県一九
200セスナ機のビラ撒き終へて鰯雲1東京都ひぐらし
202初めてのベレー帽かな菊日和1静岡県春生
204放生会奉ずる禰宜の白袴1熊本県蕗の薹
九月句会選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:花野》

★背に踊るリュックサックや花野道

楽しそうですね。広々とした花野に幾筋かの道が通っているのでしょうか。弾むような足取りで歩いている作者
が見えます。「背に踊るリュックサック」が、そうした作者の心のたかぶりや開放感を明快に伝えてくれます。
花野道が効いていますね。

◎廃校に人の声あり花野風

廃校になる前の学校は、元々花野の真っ只中にあったのでしょうか。それとも廃校の再利用に伴って花野が設け
られたのでしょうか。どちらでも可なのでしょうが、何故か後者のように思われます。それは「廃校に人の声あ
り」に起因するのかもしれません。最近は廃校も地域興しの一翼を担っているケースが増えているからかもしれ
ませんね。そこへ「花野風」。とても気持ち良いですね。

◎会釈することも一会や花野径

「花野径」、つまり花野の中の細道を意味しています。すれ違う際には、もちろん譲り合いが必要になるはずです。
無言での会釈も気持ち良いですね。「これも一会だ」と感じる作者。人生はすべからく一期一会の連なり。豊かに
生きたいものですね。

《自由題の部》

★存えてこその幸せ初秋刀魚

明日あることを疑わないのが若者。そのことに気付くのが中高年。しかし、老いと共に私たちは、否応もなく、
明日というものへの諦念を育てざるを得なくなっていく宿命にあります。悲しいけれどそれが真実なのです。だか
らこそ「存えてこそ」の言葉は重たい。「今年も出会えた初秋刀魚」に対し、「幸せ」とつぶやく喜びはいかばか
りであったろうかと想像します。なかなか言えない言葉でもあります。なお「存えて」は旧かなでは「存へて」。

◎墓地だけが残る故郷曼珠沙華

墓地と曼珠沙華の関係は類例が多く、決して新鮮な句とは認められません。しかし、この句の新味は、墓地以外に
は故郷の縁が何もない、という悲しい現実を直視したことにあります。事柄重視は川柳好みかもしれませんが、秋
彼岸に墓参をした作者の目には、曼珠沙華(彼岸花)ばかりが目に焼き付いて離れないのでした。

◎落鮎や川面の暮色まとひつゝ

鮎は秋になると産卵のために河川を下ります。産卵が終えるとその多くは死んでしまいます。産卵までの道のりも
大変なものがあるらしく、体は張りがなくなり黒ずんでもきます。そんな鮎を錆鮎とも呼ぶようです。そんな鮎の
落ちていく姿を見かけた作者は、「川面の暮色まとひつゝ」とその哀れさを美しく表現しました。
一種の比喩なのでしょうが、見事なものだと感心させられました。


添削(ランクアップのために)

俳句は十七音という短い詩です。言葉や意味がダブるなどの無駄な表現は極力見直しましょう。この点も推敲の重
要なポイントの一つです。

・ふるさとは花野の中の無人駅 → 花野の中やふるさとの無人駅

元の句では「ふるさと=無人駅」と取られかねません。しかし、作者は「ふるさとには無人駅がありますが、そこは
まるで花野の真っ只中といった景観の中にあります。いいところですよ」と自慢したかったのではないでしょうか。
それならばそのように・・・・・・。

・山頂の靄消え去りて大花野 → 山頂の靄の消えゆく花野かな

「去りて」まで言う必然性があるのでしょうか。時間の経過がかえって理屈っぽく感じられてしまいます。去らなけ
れば大花野を感じることができなかったのでしょうか。むしろ「去りつつ」ある景のほうが読み手の想像力を刺激す
るのです。「消えゆく」程度に押さえておく方が、より花野の景をしっとりと見せることになるのだ、という点にお
気付きいただければと思います。

・背の鈴の音色聴きつつ大花野 → 背の鈴を聞きつつ行けり花野みち

「音色」は言わずもがなですね。この三音を有効利用して「行けり」とします。これで鈴の音色が自然に聞こえてく
るはずです。そして「花野みち」。「大花野」では大雑把な景を想像せざるを得ず、かえって景が小さくなります。
「大花野」の中を楽しみながら歩いて行きましょう、「背の鈴」と共に。なお、「聴」は「意識して」という印象が
強くなりすぎますので、もっと軽い「聞」の方が相応しいのではないでしょうか。

        
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