2月句会結果発表
兼題の部(東風)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
46強東風や五百羅漢のしかめ面11神奈川県風神
16夕東風や魚臭沁みたるゴム合羽9北海道みなと
4東風吹くや足でおさえる鉋くず7愛知県秋ひろ
85梅東風や絵馬の犇めく天満宮6東京都柏松
62人影のうすきキャンパス桜東風6静岡県さくら
65高鳴りて絵馬ひるがへる東風の宮6熊本県蕗の薹
13強東風や宮の渡しの舫ひ舟5三重県déraciné
17桜東風子供図書館開館す5静岡県
6夕東風や神社の裏は下り坂4千葉県柳風
87強東風に向き定まらぬ風見鶏5広島県林 己紀男
1梅東風や洗いざらしの野良着干す4栃木県垣内孝雄
53強東風や舳先軋ます船溜り4福岡県みつぐ
56東風吹くや文字踊り出す昇り旗4神奈川県毬栗
74イヤリングキラキラ遊ぶ桜東風4山口県ももこ
93朝東風や一樹を雀あふれ居て4北海道小幸
38着流しの吉右衛門ゆく東風の中3福岡県蛍川
50夕東風に吹かれて旅の帰り道3神奈川県しゅう
14藍色のさだかな潮目桜東風3静岡県彗星
27強東風や砂塵巻き上げ調教馬3神奈川県ひろし
39荒東風や戻つてこないブーメラン3神奈川県ドラゴン
52強東風や山肌つひに蠢きぬ3東京都藤田雅明
55ままならぬ水平飛行ひばり東風3千葉県光雲2
59強東風や自転車ドミノ倒しゆく3埼玉県イレーネ
80夕東風に港の汽笛太らせて3兵庫県ケイト
3東風吹くも変わることなく家籠り2千葉県えだまめ
19東風吹くや入江に白き波頭2静岡県雪子
23東風吹くやインドカレーの人気店2千葉県玉井令子
30定期券最後の日駆け抜くる東風2長崎県みんと
32東風なぶる黒髪とかす細き指2大阪府藤岡初尾
34東風吹くや波はボレロの平安名崎2大阪府
41東風吹くやたより待ちわぶ花蕾2神奈川県みぃすてぃ
42園庭の幼児等のこゑ雲雀東風2三重県八郷
45夕東風や流れてきたる「くじら雲」2三重県正耕
47東風吹くや利根川下る船の影2埼玉県郁文
48東風吹いて駅ごとに富士でかくなる2埼玉県夜舟
54東風吹けど色香は遠し雪の村2北海道篤道
58東風吹いて噴煙揺るる桜島2福岡県宮内和彦
60強東風や追われて戻るタグボート2東京都藤方昭男
68分譲の旗へんぽんと雲雀東風2岐阜県色即是句
75強東風や草藪に鷺隠れ居り2千葉県須藤カズコ
76梅東風や起伏の多き古き里2和歌山県茫々
77東風吹くや己の内の弱きもの2茨城県申女
84梅東風や伊豫櫻井の天満宮2愛媛県牛太郎
88夕東風に誘われくぐる暖簾かな2東京都一寛
96荒東風や葬列乱れなく進む2静岡県春生
97東風吹くやつづら棚田に日の残り2千葉県しろみそら
8荒東風に消えし耳鳴り湖ほとり1滋賀県百合乃
9朝東風に女子高生は素足かな1千葉県山月
10東風連れて東風と去りゆく一両車1兵庫県鈍愚狸
12朝東風や田畑にひびく耕耘機1京都府花子
15梅東風や湯煙なびく箱根山1静岡県えいちゃん
25朝東風や揺らぐ体幹立て直し1千葉県良仙
37朝東風や匂ひ漏れくるパンケーキ1兵庫県峰 乱里
49強東風を待ちわぶ崖の鳶かな1静岡県浜子
57長堤の人影を消し桜東風1東京都カツミ
64強東風に押し込まれ乗る路線バス1東京都一八
69強東風やみだるる髪にしなる音1群馬県志楽
71梅東風や車庫に転がるボール2個1愛知県さと
78東風吹けば消え入りそうな返事かな1千葉県相良 華
79夕東風や頻りに潜る池の亀1神奈川県ほたか
81強東風や足弱き母の手を引く1広島県新宅 俊
82青シート張つてどつこい東風を待つ1大阪府椋本望生
83朝東風にケトルの湯気のほの温み1静岡県みちのっ子
89東風吹きて雑木俄に騒めきぬ1奈良県たにむら
90強東風に半眼となる大仏師1滋賀県和久
92福島の浜のととせ(十年)の東風ぞ吹く1大阪府光吉元昭
94耐震の看板揺らす浜の東風1北海道沢田千賀子
100朝東風や体内時計巻き直す1長野県幸々
101畑中は鍬持ち出れば雲雀東風1福岡県Shin
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
159菜の花がきれいですよと母の文9福岡県宮内和彦
281春泥の軽トラ並ぶ花市場9神奈川県ほたか
126きっかけはたわいないこと牡丹の芽8千葉県良仙
298春風や不在の多き駐在所8静岡県春生
200せせらぎの光返していぬふぐり7静岡県こいちゃん
157あをぞらにうめ一輪のプロローグ7神奈川県毬栗
107白鳥の引きて水面の広さかな7千葉県柳風
260牛あまた散らして阿蘇の春景色7福岡県宮内和彦
178しゃぼん玉隣家に孫の来てをりぬ6茨城県申女
106まつさらな空引き寄せる辛夷かな6滋賀県正男
137何もかも忘れてひとひ青き踏む6大阪府レイコ
196春泥をつけて寄りくる仔犬かな6広島県一九
227春寒の泥を噴き出す浚渫船6千葉県良仙
172強く打つ夫の心音水温む5愛知県さと
103丘に寝て空の高さや西行忌5愛知県草木
105菜の花の光の中に伊良湖かな5愛知県秋ひろ
130電車待つライブの余韻春隣5愛知県茶ぼくさ
158桃咲きて一山空へ膨れけり5東京都カツミ
169和菓子屋の餅の色にも春めける5岐阜県色即是句
268石鹼はハートの形山笑ふ5奈良県陶生
277筑波嶺も付いてくるなり春の土手5千葉県須藤カズコ
197どの道も札所へ榛の花こぼれ4静岡県春生
204お隣の寝息は春の理髪店4愛知県草木
225黒潮の波打つ岬紅椿4千葉県玉井令子
237まんなかの椅子に写真や卒業歌4岐阜県近藤周三
238天平の闇の訪れ修二会かな4大阪府レイコ
245きらきらと光の鱗春の海4静岡県
295雛あられ隙間にそえて飾り終ふ4北海道小幸
140膨らみてひかり弾くる春の水3神奈川県ドラゴン
165熟睡して吾も旅の子西行忌3東京都一八
250冬薔薇公衆電話まだここに3埼玉県夜舟
113河原辺に遊ぶ親子の春の声3京都府花子
115蠟梅はホットミルクの匂ひして3静岡県彗星
116春光や象牙の箸の縞模様3静岡県えいちゃん
121手袋を口に子の靴締め直し3静岡県かいこ
122啓蟄の投資勧誘電話かな3京都府せいち
128曳く波に光砕けて春に入る3神奈川県ひろし
133にはとりの五六羽あそぶ浅き春3大阪府藤岡初尾
135片足を上げる仔犬や山笑う3大阪府
139帰り来る漁船のエンジン春の風3福岡県蛍川
145ながら聴くラヂオの憩ひ春廚3京都府福井茶衣
147校名の羅列されたる受験絵馬3神奈川県風神
161向こう傷増えて帰りぬ恋の猫3東京都藤方昭男
167青き踏む余生の小志胸に秘め3奈良県陶生
170下萌や植物学者前かがみ3群馬県志楽
176獺祭や歩き初めたる嬰の靴3千葉県須藤カズコ
177桃の花ぽあんぽあんと咲きはじむ3和歌山県茫々
187漢方蕩ふつふつ沸きて二月尽く3東京都けいこ
202白梅やホットココアの温かさ3福岡県Shin
209伸びをして忘れてしまひ春の夢3東京都小石日和
223曲水と言ふやはらかな春の水3京都府せいち
234春雨に濡れて小鳥の鳴き交し3大阪府藤岡初尾
236そもそもは銀河系がと目刺食む3大阪府
247曳かれたる牛の瞳や春寒し3三重県正耕
257残雪に馬が貌出す白馬岳3千葉県光雲2
262悲恋悲話湯島天神梅開花3東京都藤方昭男
263薄氷をいちいち割りて1年生3茨城県逸光
282亀鳴いて迫る確定申告日3兵庫県ケイト
283囀りをひとり聞く身や山暮らし3広島県新宅 俊
292草餅や男は本音語らざる3滋賀県和久
302福寿草本音のポツリ零れ落つ3長野県幸々
297北窓を開けるや子らの声高き2広島県一九
109不揃いの草餅匂うわたし味2滋賀県百合乃
120山笑ふ黄よりはじまる風の色2静岡県雪子
146宅配の車止まるや猫の恋2三重県正耕
148雪解水山あいよりの旅浪漫2埼玉県郁文
149毎日が白紙の手帳老いの春2埼玉県夜舟
155やがて逝く道もかくあれ春がすみ2北海道篤道
166紅梅を仰ぎ会話のはづみけり2熊本県蕗の薹
185風強き日よ二ン月の空の青2愛媛県牛太郎
188つり橋を渡る足もと風光る2広島県林 己紀男
192菜の花や青き琵琶湖に白き比良2兵庫県大谷如水
203藁葺の庭に雀や鄙の春2栃木県垣内孝雄
207さらさらと風が育てる猫柳2滋賀県正男
213こめかみの脈打つてゐる野焼かな2静岡県指田悠志
214南天を棒のごとくに剪定す2京都府花子
226顔出せば直ぐに摘まれる蕗のとう2栃木県あきら
229大空をかたち自在に春の雲2神奈川県ひろし
231春の雪「石狩挽歌」聴く酒場2愛知県茶ぼくさ
240立春やチマチョゴリは風はらみ2福岡県蛍川
241春愁や山家の灯りほつほつと2神奈川県ドラゴン
243日永し無口と無口連れ立ちて2神奈川県みぃすてぃ
244春耕の地球の息吹手に伝ふ2三重県八郷
255復興の仮設の土手の草萌る2福岡県みつぐ
267梅の里各戸自慢の梅古木2熊本県蕗の薹
279ある物で済ます夕食春灯2茨城県申女
284福助の燐寸と五徳菜の花忌2大阪府椋本望生
285ごつき手が老妻の手引く梅観かな2静岡県みちのっ子
286白梅の香に振り返る路地の朝2愛媛県牛太郎
111積もらせず雨にもならず春の雪1兵庫県鈍愚狸
112音立てて氷流るる梅見かな1静岡県指田悠志
114温き茶を好み初めし子梅ふふむ1三重県déraciné
117春浅し風に撫でらる古机1北海道みなと
118グーグルナビの示す行き先花の雲1静岡県
123大寒や置き配便の諾へり1愛知県丸吉
129犬ふぐり共に歩みし人は亡き1埼玉県桜子
132ぶらんこが無くなつたよと児の泪1東京都良健
136炉明りの木小屋にこけし挽く余生1岐阜県近藤周三
141雪どけや狭庭の隅の置土産1広島県山野啓子
143春眠の一の矢二の矢夢心地1三重県八郷
150みほとけの衣紋のみどり蕗のたう1静岡県浜子
151笹鳴の聞こえてきたり峠道1神奈川県しゅう
153冬ざるる刑場跡の鐘の音1東京都藤田雅明
154寒明を待ちかね唸るブルドーザー1福岡県みつぐ
171白梅の樹下に出会ひて直ぐ別れ1神奈川県横坂 泰
173春の土除染廃土も春の土1京都府しげお
175ことさらに肩身の狭し花粉症1山口県ももこ
181釣り客の一人が帰り寒の明1兵庫県ケイト
184ベランダの竿蹴落して春一番1静岡県みちのっ子
198春はあけぼの村の祝典ユーチューブ1千葉県しろみそら
201こだはりを一つ捨てたり麦の秋1長野県幸々
210縁側に出し道具箱日永かな1滋賀県百合乃
217連獅子やうねり激しき雪柳1静岡県えいちゃん
224高校生母をうしろに初天神1愛知県丸吉
228携帯で孫と繋がる春一番1千葉県あけび庵
230草餅や都会に疲れUターン1埼玉県桜子
246日脚伸び旅に焦がれり茜雲1京都府福井茶衣
251しばらくは庭に憩へる初黄蝶1静岡県浜子
253啓蟄や手を振りほどき歩みたる1東京都千晴
254惜しまれし回転木馬冬星座1東京都藤田雅明
258菜(さい)きざむ余寒の音の乱れかな1神奈川県毬栗
271早春や鴉の走るすべり台1群馬県志楽
274駆け行けるごとく湖面を春時雨1京都府しげお
275園児らの散歩は畔よつくしんぼ1埼玉県グレイス
278十重二十重力士のごとく山笑ふ1和歌山県茫々
287蒼穹に貼りつきしまま春の雲1東京都柏松
288嬉しさも倍に二重(ふたえ)の春の虹1東京都けいこ
289靴紐を結び直すや登山口1広島県林 己紀男
290雛を見て泣いた娘も母となり1東京都一寛
301まだ見えずもう五分待つ流星群1静岡県こいちゃん
選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:東風》

★強東風や宮の渡しの舫ひ舟

「宮の渡し」の「宮」は、特別の神を祀る神社(例えば伊勢神宮や出雲大社のような)を意味するのか否かは不詳
ですが、それなりに歴史ある神社を意味するように思われます。そこへ往来するための渡し場の景。その日は生憎
と強東風。渡し舟の運行は控えられていたのでしょう。参拝客もおらず、ただ舫われた舟がぎしぎしと空し
く音を立てているばかりだというのです。春は名のみの・・・、という侘びしさも感じられます。

◎着流しの吉右衛門ゆく東風の中

粋ですね。月形半平太の「春雨じゃ。濡れていこう」という名台詞を思い出しました。しかし、舞台ではつまりま
せんね。たまたま「着流しの吉右衛門」を見かけた、その瞬間の景と思いたいところです。「東風の中」が着流し
を効果的に見せる働きをしています。

◎強東風や絵馬の犇めく天満宮

強東風の季節は受験シーズンでもあります。学問の神様(菅原道真)を祀った天満宮には多くの受験生が合格祈願
に詣で、沢山の絵馬が「犇めく」ように奉納されます。強く吹かれると絵馬同士が打ち合い、さぞ賑やかに鳴るこ
とでしょう。この季節特有の景なのでしょうね。

《自由題》

★強く打つ夫の心音水温む

とても心配な状態にあった「夫」の心音が、ようやく強く打ち出した時の安堵感、喜びが詠われました。「水温む」
が全ての思いを代弁しています。季語に思いを託すとは、こういうことを言うのだ、と改めて思います。秀句。

◎しやぼん玉隣家に孫の来てをりぬ

作者は、縁側か庭にでも出ていたのでしょうか。そこへ隣家からふわふわとシャボン玉が。そういえば子供の声も
聞こえる。普段は年寄り夫婦の家なのでしょうが、今日はお孫さんを連れて息子(或いは娘)夫婦が来ているのだ。
少し羨ましい気持ちが入ったような、そんな一句でした。

◎せせらぎの光返していぬふぐり

小川のほとりに群生している「いぬふぐり」。小さな青い花々は、「星のようだ」「青空の欠片のようだ」などと
よく例えられます。ここでの作者は、せせらぎといぬふぐりが光を返しあっているかのように見立てました。光の
交響ですね。美しい見立てでした。


添削(ランクアップのために)

「他動詞」「見立て」「擬人」は癖になります。詩の技法の一つなので否定はしませんが、ほどほどに、と申し上
げておきます。

・東風の窓磨くや喫茶店の朝 → 朝東風や窓のきれいな喫茶店

「喫茶店の朝」という表現には、「毎朝~~だ」というニュアンスが含まれています。東風=毎朝ではありませんね。
また「磨く」としますと、「東風だから」という因果と思われてしまいます。毎日「窓のきれいな喫茶店」であって
欲しいものですね。朝であれば「朝東風」で良いのではないでしょうか。よりきれいな窓が見えてきませんか。

・曲水と言ふやはらかな春の水 → 曲水と言ふやはらかな水のこと

「曲水」も「春の水」も春の季語です。しかも掲句ではどちらを主役として詠まれたのかも微妙です。やはり季語は
一つにしましょう。

・牛あまた散らして阿蘇の春景色 → 牛あまた散りたる阿蘇の春景色

牛があちこちに草を食んでいる景は、いかにも阿蘇だなあ、良い春の景色だなあ、と気持ちが晴れ晴れとしてきます。
しかし一点、「散らして」は気になります。多くの方は、このように他動詞を使いたがる傾向にあるようです。
「見立て」や「擬人」と同様、表現の自己満足を誘うようです。点取り狙いと言えなくもありません。折角の好句を
台無しにしてしまいました。自動詞で行きましょう。

        
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