1月句会投句一覧
兼題の部(笹鳴き)
1笹鳴のつたふ垣根や門跡寺2境界の何方ともなく笹子鳴く
3笹鳴や葉むらに光る白き花4笹鳴や半ば埋もれし閻魔堂
5笹鳴に振りかえ見れば法隆寺6僧兵の闊歩せし地や笹子鳴く
7慶応の文字彫る石碑笹子鳴く8笹鳴や呆けの脳にも届きけり
9笹鳴やガランとしたる住宅街10笹鳴の万葉歌人相聞歌
11笹鳴きや探す姿はさらに藪12笹鳴やしばし手を止め耳すます
13笹鳴や頼まれ仕事片付かず14笹子鳴き森のしじまに気づきけり
15笹鳴を庭に招くや老夫婦16笹鳴きに今日は会えるか散歩道
17足音を殺し笹子を追ひにけり18笹鳴の母の耳へは届かざる
19笹鳴や息はずませる上り坂20笹鳴きや春日の森は明けやらず
21笹鳴や高台にある喫茶店22笹鳴の笹の隙間に望む富士
23笹鳴か耳を澄ませる縁の先24笹鳴やふと手を休む野良仕事
25笹鳴きや確かならねど陽は優し26笹鳴の大きな声や笑み返す
27迷い道山へ山へと笹子鳴く28笹鳴やあかごの絵本ページ止め
29笹鳴きに送られ老いの転居かな30今日のジョギング笹鳴を折り返す
31笹鳴や戻リマシタと告ぐるごと32笹鳴や墨磨る眉のゆるみけり
33笹鳴きや晴れて鈍色雑木山34リハビリの一歩一歩や笹鳴いて
35笹鳴や赤子に似たる雲白し36笹鳴や柔肌浸かる美人の湯
37笹鳴や木立の中の関所跡38陶工に窯変ならず笹子鳴く
39笹鳴に小藪のふたり息殺す40笹鳴や林道狭き過疎の村
41笹鳴や吾子を思ひて聴き入りぬ42笹鳴に目細む自然探索路
43藪ざわざわと古戦場笹子鳴く44笹鳴や薄き影置く石畳
45笹鳴に耳を澄まして目を凝らし46笹鳴や谷津田の空のとの曇り
47笹鳴きや誦する坊主の法華経寺48笹鳴や将門の井は標のみ
49薄日射す無人公園笹子鳴く50笹鳴や断捨離中々はかどらず
51畑の囲のほころびあたり笹鳴ける52笹鳴の藪の奥処に移りけり
53謀みな闇のなか笹子鳴く54笹鳴や光秀のこと又論ず
55ネクタイを取れば笹鳴く垣根かな56笹鳴きの日の陰りたる辺りかな
57アイヌ名の橋美しや笹子鳴く58笹鳴のふと鳴きやめば渓の音
59笹鳴きや白波望む墓の山60笹鳴や目覚めぬ庭のかたほとり
61もう一度聞く笹鳴きと解るまで62レッスンはチから始まる笹子かな
63癖耳や笹鳴きありと障子開け64笹鳴きや武蔵野台地ひろびろと
65笹鳴や竹藪の闇から零る66笹鳴やいつか羽ばたくときを待つ
67笹鳴や砂かけ遊びが流行り出す68笹鳴きの三年坂を上りけり
69山裾の落人墓に笹鳴けり70笹鳴や風の中の日ゆれてをり
71笹鳴や小さき川に発電所72笹鳴や小雨の中の村と村
73笹鳴や孫は寝入りて背に重き74笹鳴きの家なき里にひびきけり
75笹鳴の続きを待てり初デイト76笹鳴や観光名所をちと迯れ
自由題の部
77初猟や谿川明くる寂寂と78まず鋏軽く鳴らして初仕事
79初護摩の炎に猛る不動かな80マスクして自由不自由眼の動き
81落葉掃き俗世浄むや修行僧82節分の鬼よりメール残業とか
83寒造戸の隙間より湯気漏らし84相老いの偶の出湯の初笑い
85返り花道路の脇のつつじ咲く86冬ぬくし空のリフトの無力感
87初空の雉の番や地を歩く88柏手の絶へぬ境内淑気満つ
89まぶしさの増すガラス戸や寒の入90霜焼や遥か昭和の母なりし
91ランナーは風になるなり寒桜92茶の花や母思ふ時切なさも
93玉三郎楽屋埋めたる室の花94闘病の友より厚き初便り
95ビバルディひびく窓辺や福寿草96落ち葉踏む音の行き交ひ裏参道
97ぬかるみの筵の道に寒牡丹98体幹の軋む音せり初氷
99初富士や新たな御代に夢託す100紫紺なる小さな気品冬すみれ
101三が日艶笑落語聞く如し102蠟梅の花の正体何者ぞ
103浮かれ猫闇から闇へ一途なり104恒例の印刷だけの年賀状
105寒い朝カラス二三羽野垂れ死ぬ106繭玉の柔らかき影揺らしをり
107初糶や鮪一尾に億の声108嵩なして鼓動呑みこむ雪解川
109一途なる落暉の中の浮寝鳥110湯気立ちの居間に微睡む身重妻
111弾けたる少女の声や若菜摘112炎また炎を呼ぶやどんど焼
113ピン跳ぬるスマートボール春近し114病室をこつそり抜けし初湯かな
115雪しんしん警笛過ぎる真夜の駅116寒釣りの子等の出で立ち嬉々として
117正月や土産話しの子の笑顔118雲一朶蠟梅(ろうばい)の花一木に
119小寒やつひに譲らる優先席120掛け時計鳴り出す客間去年今年
121すこやかに幸多かれと初詣122さざ波の寄りて岸へとかいつぶり
123雪女k点越えの大ジャンプ124山の日を漉き込む和紙の白さかな
125コーヒーとクロードチアリ毛糸編む126お正月あっと言う間に過ぎにけり
127リハビリの指をひろげる冬日向128春の夜の心浮き立つジャズ喫茶
129処女のごと逃足はやき三が日130出目金と目が合い愛の始まりぬ
131下の子の丈より下へ豆を撒く132氷湖より揚がり公魚目の愛し
133狐啼く百戸の村のしづけさに134水鳥の水脈光りゐる夜の湖
135ランナーの軽き足音枯木道136初日の出歓喜に交じる祈る影
137粛々と年用意伊豫の天満宮138さかさ文字まじる幼の初便
139粋がって伊達の薄着の大くしゃみ140マンションの重き扉を開け鬼は外
141抜けし歯を屋根に撒きをり春隣142ほの昏き白き柔肌山眠る
143葱畑帰りはパン屋へ寄る予定144路線図を見ながらたのし梅見行
145ぺんぺらの枕を反す避寒宿146火の精の踊り来るかの暖炉かな
147新しき銀河も生れよ春立てり148焼芋や火の美しき夕まぐれ
149店員のマスクに見ゆる笑顔かな150初孫を真ん中にして初写真
151上雪や大月の谷白く染め152春を待つ若者胸に強きもの
153本棚の干支の置物寒の月154春浅し再起の窯に出逢ふ旅
155ひたすらに生くるが余生注連飾る156冬の月光落ちけり余呉の湖
157鱈場蟹肩肘張つて笹の上158落葉掃く少年梢見上げをり
159闇深き山家に煮ゆる紅葉鍋160子ら去りし部屋のがらんと冬ざるる
161一瞬の雲の切れ間や寒の入162平城として五天守の初景色
163鳴くよりは冬に逆立つ枝の鳥164吐く息で確かむ今朝の寒さかな
165先生の机に一つずつ蜜柑166日を浴びて踊るがごとき枯木立
167寒鯉はじっと動かぬ潜水艦168蛇口から湯の出る暮らし室の花
169室花やホットケーキにナイフ刺す170住職は奇人てふ寺福詣
171根白草生き生きとして朱塗椀172夕ざれや母校の隅の尊徳像
173書き直し一字気になる筆始174大寒の朝心臓に手を添える
175朝の雪残るさ庭に降り頻る176庭隅にまた一輪の福寿草
177日輪に祈る人ある凍れかな178咲き終わりまだ緑なり花八つ手
179耕運機掻き出す土の匂う春180焼き芋や懐温し急ぎ足
181枯れ草に黄色き一輪今朝の露地182初日さす光あまねく地にこぼし
183嚏して得たる名句を取り落とす184返す間もなき多弁かな冬の雷
185筑波颪枯れし公孫樹が天を掃く186正論を吐いて孤独や冬の月
187水鳥の水脈にありたる夕茜188おはようの後に口衝く寒さかな
189掛けたるもまだ予定なき初暦190初夢に虚子先生と糸電話
191炉話の亭主平家の裔といふ192足運び遅くなりたり草城忌
193成人の日の寄書きに大きい[夢]194寒桜御堂に古仏おはしける
195初くさめたれかほめとるとおもつとこ196警官も覗く出店や年の市
197一年の計を思案の初湯かな198飛び来る一羽もすぐに浮寝鳥
199凍て蟷螂われも合掌生きめやも200麦を踏む実習生の及び腰
201初場所を制し幕尻男泣き202若水を飲む少年の喉仏
203雪ちらりわづかばかりのもてなしよ204伐採を告げる音声(おんじょう)春来る
205目標のレベルさまざま箱根駅伝206一月もアッと言う間のカレンダー
207詠手らの揃ひて咲けり仏の座208畳かむインコを叱る小春かな
209物忘れ自問自答の寒さかな210冷ゆる耳ビルの谷間の風を聴く
211尾根目指す重きザックや六花212羽ばたけば光に消ゆる初雀
213へらへらと舞ふ極月のカレンダー214本堂につづく回廊梅香る
215寄せ鍋や奉行の妻に従わん216一皿のカレーを温め冬籠り
217豊作や大根おろし山と盛る218蓋とれば京の香りや蕪蒸し
219草城忌マットは適格十六枚220庭の木に雀にぎやか寒の入り
221葉牡丹のひろびろとした方へ向く222風切りて川面キラキラ冬の川
223売物にならぬ大きな大根引く224虚子の句を読めば焚火の育てられ
225大寒や雪乞う手にはスキー靴226ビロードに空輝したり冬の月
227夫の焼く豆腐ステーキ小正月228人形の確と寝息の蒲団かな
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より1句、自由題より2句の計3句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:2月27日(木)、発表は3月1日(日)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
12月句会結果発表
兼題の部(蜜柑)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
1蜜柑剥く幼児のやうな母に剥く9東京都小石日和
13蜜柑狩り瀬戸の海光背に受けて6京都府せいち
27満席の寄席の仲入蜜柑の香5茨城県申 女
35山裾を灯す蜜柑の明りかな5千葉県光雲2
42恙無き日々有り難く蜜柑剥く3大阪府レイコ
52蜜柑熟る日光月光たくはへて3静岡県さくら
17きららなす海や蜜柑は鈴生りに3千葉県みさえ
40蜜柑山登りつめれば瀬戸の海3神奈川県風 神
53メモ書きに蜜柑一つや妻の留守3兵庫県大谷如水
67沖を行く船と語らふ蜜柑山3東京都カツミ
7兄弟の食べ方違ふ蜜柑かな2大阪府藤岡初尾
47母よりの荷よりこぼれし蜜柑かな2愛知県さと
57叱られし姉といもうと蜜柑むく2神奈川県毬 栗
5疼く身に蜜柑の香りセレナーデ1滋賀県百合乃
10蜜柑剥く手を止め見入るサスペンス1大阪府宮下 英範
11小割して口に蜜柑の小房かな1千葉県あけび庵
18爪立てて蜜柑剥く人悪女かも1奈良県文 義
19紅白の後半戦に蜜柑かな1愛知県コタロー
21背伸びして狭庭の蜜柑子等もぎる1岐阜県小太郎
22せがむ子の手振り愛しや蜜柑むく1北海道篤 道
25絵手紙に蜜柑を描き無沙汰状1長野県倉田杏
30鈴なりと云ふ成り年の捨蜜柑1三重県八 郷
32熟れていて啄みもさせ庭蜜柑1神奈川県横坂 泰
33瀬戸内の島のアイデアみかん鍋1山口県ももこ
36プルーストはマドレーヌわれは蜜柑1神奈川県志保川有
39瀬戸内の風の優しき蜜柑島1神奈川県ドラゴン
48食細き母と分け合ふ熟蜜柑1高知県稚児車
50鈴生りに色づくおらが蜜柑山1岐阜県色即是句
54花蜜柑匂えば又も旅ごころ1福岡県和 子
59蜜柑県蜜柑市蜜柑みかん山1京都府しげお
61みかん剥く今日より明日を期待して1千葉県相良 華
63雪山に蜜柑のごとき夕陽落つ1岩手県柴田コル
68父母おはす仏間にほのか蜜柑の香1広島県一 九
71家康の手植ゑの蜜柑末生りぞ1静岡県こいちゃん
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
101アフガンに散りし命や寒昴6茨城県申 女
106飛石をひよいと渡つて去年今年6神奈川県横坂 泰
107懐手なかなか解けぬ話かな5山口県ももこ
116米寿なりためらいつつも日記買う5大阪府レイコ
80ひとり聴く昭和の歌や雪の夜4埼玉県アポロン
177木枯や村に一つの信号機4奈良県陶 生
209階段をゆっくり降りる大晦日4千葉県相良 華
213おさな児の夢編むごとく毛糸編む3三重県礼 香
76一つ家に妻も余生や根深汁3栃木県垣内孝雄
81気になることそのままに来て十二月3大阪府藤岡初尾
97暖かき家庭が苦手雪兎3兵庫県柴原明人
103忘られし片手袋の孤独かな3奈良県陶 生
130たつぷりの日差し浴びをり柿すだれ3愛媛県牛太郎
133歳の市無口な店のよく売れる3京都府しげお
169一病の文字の乱れや日記果つ3岐阜県小太郎
100初春のふたみに寄する波の花2三重県正 文
114テーブルのスマホ震へる冬の闇2神奈川県風 神
87狐火の跡かも知れぬ畑の焦げ2京都府せいち
187息白し僧小走りに長廊下2神奈川県ドラゴン
84過疎の村落葉に埋れ眠りゆく2大阪府宮下 英範
92一切はなりゆきなりし落葉降る2奈良県文 義
98冴ゆる夜さえる手さばき出刃の音2埼玉県郁 文
104暖冬は家計にやさし胸算用2三重県八 郷
123一枚の枯葉とゐへど影落とす2大阪府光吉元昭
128一病の春の苦味を薬とす2福岡県和 子
132枝先で尚見栄を切り奴凧2埼玉県夜 舟
150枯蘆の傾ぐ川瀬や投網舟2栃木県垣内孝雄
158沖網を手繰る初冬の波高し2大阪府宮下 英範
174初春の庭の一輪挿しにけり2三重県正 文
203大樟の根方に淑気満ちにけり2大阪府椋本望生
204倖せの形そのまま七五三2愛媛県牛太郎
75立冬やたつぷりの湯に四肢伸ばし1東京都小石日和
210耳遠き吾を囲みて年忘れ1千葉県純 士
79落葉掃く貝殻ピアス拾いたり1滋賀県百合乃
86皇后に祈りの涙星冴ゆる1愛知県丸 吉
90いけめんの猫とおしゃべり漱石忌1三重県まがたまいけ
91海光に照り輝ける蜜柑山1千葉県みさえ
102青き空朽ちるを知らず枯すすき1埼玉県祥 風
111若人が連休さがす新暦1静岡県かいこ
112老漁師海を眺めて日向ぼこ1神奈川県ひろし
113寒晴や傷つき果てし武甲山1神奈川県ドラゴン
119年越しやテレビおかずに迷い箸1埼玉県イレーネ
120古利根川(ふるとね)に薄き日霧の晴れゆける1埼玉県グレイス
121終活に片す書籍や漱石忌1愛知県さと
122異国より見慣るる字体クリスマス1高知県稚児車
125闇深き空染め上げし冬銀河1滋賀県和 久
127枯並木超高層の灯の柱1兵庫県大谷如水
135食堂のランチメニューに鰤大根1千葉県相良 華
137ゆるゆると雪の重さに幹裂ける1岩手県柴田コル
142冬空や雲閉ぢゆけば日矢は糸1広島県一 九
143冬木の芽ポン菓子屋さんの音のして1福岡県蛍 川
144世の為の聖誕祭に奔走す1北海道千賀子
145初夢やシーラカンスの蘇る1静岡県こいちゃん
148師走の帰路遠き町灯りの優し1長野県幸 々
152妣の文字妣の目のある障子かな1三重県déraciné
155初雪や古いポストに帽子着せ1大阪府藤岡初尾
157宴果つ師走の街はうら悲し1千葉県えだまめ
162お神籤を笑い捨てるも神の留守1栃木県荒川三歩
167真中にケーキ置かるるクリスマス1愛知県コタロー
170飼う鳥を決めかねている春隣1北海道篤 道
171燃えてゆくこの星哀し雪女1兵庫県柴原明人
172深き霜大地を潰すごと踏めり1埼玉県郁 文
179次の世に役目を終えて散る紅葉1東京都山本一二三
180凍蝶の失望といふ石の上1神奈川県横坂 泰
182冬ぬくし加曾利貝塚広々と1栃木県あきら
184目で笑ふ歯で笑ふ児ら小春かな1神奈川県志保川有
190自重して生きてゆきたし日向ぼこ1大阪府レイコ
192抱っこ紐食い込み嫁の師走かな1兵庫県ケイト
194碧空に冬紅葉映え孫生るる1埼玉県グレイス
196ピッケルの一振りに散る滝氷柱1高知県稚児車
197ジグザグの枯れ蓮の池ひかりけり1大阪府光吉元昭
198相席の老婦せつせと毛糸編む1岐阜県色即是句
199箸紙のすいこんでゆく新酒かな1滋賀県和 久
200幼子の耳にピアスや寒昴1静岡県さくら
202休み田の乾きし色や春隣1福岡県和 子
205冬の朝トントントンと厨から1神奈川県毬 栗
208手弱女の踊る姿や初神楽1神奈川県みぃすてぃ
212冬座禅無にほど遠く膝ふるえ1東京都一 寛
214良きことの少し多きか賀状書く1千葉県畑 博
215後悔の積み重なりて除夜の鐘1東京都カツミ
220蜜柑飾る門に朝日の射しにけり1兵庫県ぐずみ
選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずき ごれい)

《兼題の部:蜜柑》

★蜜柑狩り瀬戸の海光背に受けて

 良く晴れた瀬戸の海。そのきらきらとした「海光」をたっぷりと受けている蜜柑山。作者はそこで海光を背に受
けながらの「蜜柑狩り」を存分に楽しんでいる。もちろん目の前には眩しいほどの完熟蜜柑があり、口に含めば、
その香りが辺りに拡散する。幸せ一杯の羨ましい光景が詠われた。海を渡る風さえも心地良く感じられます。

◎恙無き日々有り難く蜜柑剥く

 どういうわけか、蜜柑といえば団欒を思います。それはまた炬燵とも不即不離の関係に。現在は炬燵のない家が
増えていると思われますが、私たちの世代は炬燵を抜きに冬を考えることはできませんでした。炬燵=団欒、その
中心にはいつも蜜柑がありました。いつ頃から蜜柑がこんなに家庭に深入りをし始めたのかは分かりませんが、
「恙無き日々有り難く」という感慨に対し、「蜜柑剥く」は異論無く納得できるのです。

◎蜜柑熟る日光月光たくはへて

 先程「蜜柑狩り」の句を鑑賞しましたが、この句は蜜柑そのものに焦点を当てています。甘く香りの良い蜜柑を
口にされての感慨かもしれませんが、この美味さは「日光月光」を十二分に浴びたからこそなのだ、と。
その化学反応をじっくりと蓄えた成果なのだ、と。蜜柑礼賛の一句でした。

《自由題》

★初春のふたみに寄する波の花

 言うまでもなく、芭蕉の『おくのほそ道』の最後の句、「蛤のふたみに別れ行く秋ぞ」を念頭に置いての句だと
承知されます。伊勢の二見に向かって出発するときの、別れ行く寂しさを詠ったのが芭蕉句です。が、作者はその
二見で新年を迎えたようです。まるで続き物のようですね。そこでは、新年を祝うかのように、やや海が荒れては
いるが「ふたみに寄する」白波が花のように見える、というのです。もちろん、ここでの「波の花」は季語として
のそれではありません。まるで『おくのほそ道~その後』を思わせる一句でした。

◎テーブルのスマホ震へる冬の闇

 真夜中のテーブルで震えているスマホ。点滅もしていることでしょう。何となく不気味な感じもしますが、どな
たにも既視感があるのではないでしょうか。明るい部屋であれば、あるいは音が出ていればまだしも、真っ暗闇の
中というのがきついですね。闇は想像力のマイナス面を刺激します。ましてや寒く冷たい「冬の闇」であれば尚更
でしょう。切り口が鮮やかでした。

◎おさな児の夢編むごとく毛糸編む

 毛糸を編んでいる作者。それは子のためでしょうか、孫のためでしょうか。たわいない遊びに興じる「お(を)
さな児」を側に置きながら、この子は何を夢見ているのだろう、どんな人生を歩んでいくのだろう、などとあれこ
れ考えながら、その子のセーターを編んでいるのでしょう。「夢編むごとく」に作者の「おさな児」への思いが集
約されていると理解されますが、一方で、楽しい時間でもあるのだろうな、とも想像されます。

添削(ランクアップのために)

今回の投句にも、過去の助動詞「き」の連体形「し」を誤用したものが幾つもありました。私たちはそれを「し」
の病と称し、常に注意を喚起してきたつもりですが、残念ながら、なかなか……ですね。現代の言葉で言う「~た」
は、必ずしも過去だけを意味しないだけに難しい点はあります。今回は添削例を挙げませんでしたが、文語表現を
される方は特に注意いただきたいと願います。

・初孫と柚子匂う湯にぷかぷかり → 初孫とぷかりぷかりと冬至風呂

初孫と柚湯に遊ぶ心持ちが良く出ています。しかし「ぷかぷかり」は五音にこだわった結果なのでしょうが、豊か
な気分が中途半端になってしまいました。また「匂う」も言わずもがなです。初孫と柚子とご自分をゆったりと遊
ばせましょう。

・つひに虚子凌ぐ齢の去年今年 → つひに虚子凌ぐ齢や今朝の春

大虚子を一つでも超えたいとの願いが取り敢えず叶った喜び? の句。それであれば「去年今年」などという時の
流れに重点を置いた季語よりも、もう少し自祝の思いを込めた季語「今朝の春」を採用したいものです。もちろん
「高が齢ではないか」という自嘲心もあるのでしょうが、それを超えてしまえば「諧」の一句として見事に立ち上
がります。

・沖網を手繰る初冬の波高し→ 置網を手繰る初冬の波高し

良い句だと思い一旦は◎を付しました。しかし待てよ、「沖網」って変ではないか、と辞書に当たってみました。
やはり・・・でした。正しくは「置網」です。同じ音に「沖」の字を用いた「沖醤蝦(オキアミ)」がありますが、
こちらは言うまでもなく鯨などの餌として重要な甲殻類を指します。今回は、厳しいようですが、強いて採用を見
送りました。十七音しかない俳句ですので、間違いは致命的になるケースが間々あります。必ず辞書等でチェック
されるよう願います。
        
戻る