2月句会結果発表
兼題の部(薄氷)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
43これ以上近付けぬ恋薄氷8長野県幸 々
55薄氷や思春期の子の無口なる6熊本県蕗の薹
1薄氷に風の一閃沢づたひ5栃木県垣内孝雄
58登校の列の乱るゝ薄氷4兵庫県大谷如水
12薄氷のうすらひでなくなるところ3京都府せいち
69うすらいに魚の影の透けており3東京都一 寛
13朝まだき薄氷青む手水鉢 3千葉県えだまめ
48薄氷や水底に日を揺らしをり3神奈川県風 神
56薄氷の池に蠢めくもののあり2大阪府レイコ
61通学の子ら薄氷を陽にかざし2茨城県申 女
3薄氷さらつと跳べり反抗期2北海道三泊みなと
7薄氷やすぐには会へぬ子等の距離2大阪府藤岡初尾
17薄氷やどっしり座る手水鉢2福岡県和 子
45薄氷やひとゆらぎして空の青2神奈川県横坂 泰
47薄氷の水に戻りし素手の中2兵庫県柴原明人
66薄氷や一人暮らしに慣れた朝2兵庫県ケイト
71薄氷や少年の恋あつけなく2愛媛県牛太郎
75子の姿消ゆる校庭薄氷2静岡県こいちゃん
14薄氷をケンケンパーで行く童1大阪府
10薄氷を踏んで楽しき音の中1埼玉県ま こ
11登校子薄氷目がけ片足を1東京都小石日和
16ひと筋の藁しべ透ける薄氷1茨城県太田 堯史
22薄氷の揺らぐ隠沼鯉の影1東京都カツミ
23薄氷に口紅ほどの茜雲1神奈川県毬 栗
26薄氷や光あまねく万華鏡1神奈川県ひろし
29薄氷を大人が割って子を泣かす1愛知県コタロー
35薄氷のP波を捉ふ指の先1大阪府椋本望生
38金銀の鯉の図案や薄氷1岐阜県近藤周三
40薄氷を拉げて飲むや犬の舌1福岡県青 閑
46薄氷父追い母の一周忌1埼玉県イレーネ
50薄氷や光透けゆく水の中1三重県八 郷
60薄氷をこまめに踏みし園児かな1愛知県草 木
74薄氷や夜明けの湖の紅に1静岡県春 生
79薄氷に花びらひとつ重なれり1埼玉県きらら
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
112船頭の竿の撓りや風光る9神奈川県ドラゴン
91正門へ回りて一礼卒業す6埼玉県ま こ
130窯変を待つや寒夜の登り窯6千葉県光雲2
119雲雀落つ磐梯山を縦斬りに5岐阜県近藤周三
87ふらここや代わりばんこを覚へし子5三重県déraciné
132ざわざわと竹が空掃く春疾風5東京都一 八
222足湯して万座の春を待ちゐたり4愛知県草 木
105床上げや花柊の香の清し4奈良県陶 生
136枝垂れ梅しだるるままに過疎の里4熊本県蕗の薹
183土筆摘む子等に汽笛の小海線4長野県宮澤俊幸
154啓蟄やじゃんけんぽんの声響く3福岡県蛍 川
185春めくやころころ転(まろ)ぶ妻の声3神奈川県毬 栗
85立春の雲ゆつたりと流れけり3埼玉県アポロン
211うぐひすや幼さ残る巫女の舞3千葉県光雲2
113雄一声雌は二声天へ鶴3北海道小 幸
123永き日や時刻の狂ふ時計台3静岡県さくら
142眠る子の長き睫毛や春うらら3茨城県申 女
151鎌倉の五山鎮もり椿寿の忌3千葉県純 士 
223冴返る家族の内のサスペンス3茨城県申 女
236野火つけて龍一匹を放ちけり3静岡県春 生
237落椿裏裏表裏表2静岡県こいちゃん
92梅日和老いの集ひの声大き2東京都小石日和
133苦言など聞きたくもなし蕗の薹2埼玉県夜 舟
137麗かや鳥居を潜る鹿の影2大阪府レイコ
156初燕三角屋根の時計台2静岡県こいちゃん
170ふと初音つぎの声待つ一座かな2茨城県太田 堯
188うきうきと出窓に移すシクラメン2神奈川県ひろし
191春の夢エンドロールは遠くあり2愛知県コタロー
193スカジャンの裏は虎柄山笑ふ2神奈川県ドラゴン
196真っ白な句帳の先の桜草2栃木県あきら
213神官の烏帽子を濡らす春の雪2東京都一 八
217野水仙里に悲恋の物語2熊本県蕗の薹
233立春の空の明るさ歩を伸ばす2愛媛県牛太郎
240磯舟の引き波小さき四温かな2北海道千賀子
242首塚に桔梗の家紋二月尽2京都府しげお
82振り向けばひとりぼつちの春の暮1栃木県垣内孝雄
84踏まれては心病みたる犬ふぐり1北海道三泊みなと
86約束をはたせぬままや返り花1三重県礼 香
95うららかや惣菜店のお品書き1大阪府
100滞船のうしろ手にひく春日永1愛知県丸 吉
121やれ踏むな右も左もつくしんぼ1福岡県青 閑
140丘の上の母の墓標に春の風1奈良県たにむら
141小雪舞ふこの松いよよ器量よし1愛知県草 木
143刻々と迫る別れや春浅し1千葉県相良 華
145茶の花や遠くに富士の山据ゑて1大阪府光吉元昭
146春眠や遠き人と語り合う1岐阜県小太郎
150こぶしの芽少し揺らして春の雪1東京都一 寛
155北窓を開け旅人のここちかな1静岡県春 生
157恋猫の目尻の傷へオロナイン1神奈川県志保川有
158諍ひし妻と朝餉や春隣1広島県一 九
169搔き集めかきあつめして雪うさぎ1大阪府藤岡初尾
173ウインドに傾げて映す春日傘1東京都小石日和
175春寒や片付けごとを少しずつ 1千葉県えだまめ
177全身に光を浴びて猫柳1長崎県みんと
182菜の花におのころ島は黄に染まる1兵庫県有栖奈呂
184兄見舞ふふるさといまだ春浅し1東京都カツミ
198下萌の城跡眩し礎石群1和歌山県茫 々
204春の雲薄皮むけぬ茹で卵1静岡県さくら
205男系の家を守れる古代雛1長野県幸 々
219幼な児の呼ぶ声聞こえ春帽子1東京都千 晴
221それなりに二人世帯の春支度1奈良県たにむら
226春寒や町屋の御膳京野菜1大阪府光吉元昭
227一病の数値落ち付き水温む1岐阜県小太郎
229お遍路の杖のよごれもありがたき1滋賀県和 久
241紅梅に小さき名札の揺れてをり1埼玉県きらら
選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:薄氷》

★薄氷の池に蠢めくもののあり

凍てつくような寒の日々から、ようやく春を感じられるような陽気になった。厚い氷も次第に薄くなる。その氷
の下には生き物のドラマがあるのだ。薄氷の下をじっと観察していると「蠢めくもの」が目にはいる。今や遅し
と池中を、或いは水底を蠢めき出しているものが見えるのだ。何も春を待っていたのは人間だけではない。いの
ちある者全ての等しい感情だろうと思う。薄氷の下の生命の「蠢めき」を捉えた視線に拍手を送りたい。

◎薄氷のうすらひでなくなるところ

これはまた微妙なところを詠まれたものです。池でも沼でも或いは川でも、薄氷が全面に張っているということ
はありません。そこに目を付けた作者。薄氷の先はただの水面。流れがあるかどうかは問いませんが、明らかに
薄氷とは異なった景色があるはずなのです。「うすらひでなくなるところ」とは巧みな言辞でした。

◎通学の子ら薄氷を陽にかざし

自分自身の昔を思い出すような光景が詠まれました。皆様にも体験がおありの方は多いのではないでしょうか。
そのせいでもありましょうか、つまり、それだけ類想句が多いということでもあるのです。とは言いながら、
はぎ取った「薄氷を陽にかざし」ながらはしゃぐ「通学の子」という景は、やはり捨て難いものがありますね。

《自由題》

★雲雀落つ磐梯山を縦斬りに

「磐梯山」がベターかどうかは問いませんが、具体的なイメージを喚起するという意味では成功したといえま
しょう。空中高くのぼってさえずっていた雲雀は、突然鳴きやむとともに一気に急降下します。まさに「落つ」
といった降り方で……。その景を「磐梯山を縦斬りに」と表現されました。景が大きく奥行きもあります。この
臨場感がこの句の魅力でありましょう。

◎啓蟄やじやんけんぽんの声響く

啓蟄とは二十四節気の一つで、冬ごもりの虫が這い出るとの意があります。今年は三月五日が該当しました。
そのような日に、外から子供たちの元気な声が聞こえてきます。作者は「じゃんけんぽんの声響く」と受け止
めました。弾むような思いで春を感じている作者が良く出ています。

◎春めくやころころ転ぶ妻の声

春らしい気配になることを「春めく」と言います。待ちに待った春が、いかにも春の気候らしくなった、と
作者は実感しているようです。「妻の声」も「ころころ転ぶ」と……。もちろんいつも明るい「妻」なのでしょう
が、ことにそう感じている作者。それもすべて「春めく」という気分に原因がありそうです。


添削(ランクアップのために)

一句には必ず作者の思いがあります。その思いを分散させないための教えの一つに「切字は一句に一つ」があ
ります。もちろんこの教えは絶対ではありませんが、初心のうちは参考にして損はありません。十七音詩という
俳句の持つの宿命といえるかもしれません。しばらくはお守りくださることを願います。

・丘の上の母の墓標に春の風 → この丘に母は眠れり春の風

丘の上という景から、墓標という小さな一点に景を絞り込んだことで、少し「春の風」が息苦しく感じられます。
「春の風」は墓地そして墓参の作者にも等しく穏やかに吹き渡って欲しいものです。作者の母への思いをも包み
込むように……。添削句を参考にしてください。

・うやむやのまんま終りし春の夢 → うやむやのまんま終りぬ春の夢

いつも指摘することですが、「し」は過去を表す助動詞「き」の連体形であって、現代語の「た」とはイコールで
はありません。「た」は過去も完了も一緒くたに使える便利な助動詞ではありますが、文語ではそうはいきません。
従って掲句の場合も「終わってしまった」というニュアンスから完了の助動詞「ぬ」が相応しいと思われます。

・春寒しぴんころ地蔵拝しけり → 春寒しぴんころ地蔵拝しゐて

「春寒し」でこの句は切れています。ここに切字が隠れているとも解釈できる「型」なのです。しかし、最後にも
切字の「けり」が配されてしまいました。一般的に「切字」には一句の主役を指示する働きもあるのです。という
ことは、二つの切字使用は一句の分断を招きかねない、ということを意味します。「一句に切字は一つ」とはそう
いう意味なのです。添削句は、「春寒し」へと作者の思いが再び帰る、という作句例となります。
        
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