6月句会結果発表
兼題の部(蝸牛)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
28持ち家の気楽な暮し蝸牛10滋賀県幸 亀
19生涯の孤独を背負い蝸牛8京都府せいち
43でで虫やひとつ線足す阿弥陀くじ7三重県déraciné
52かたつむり雨の留守居のぬりえ帳6千葉県須藤カズ子
31狛犬の鼻先たどる蝸牛5東京都水谷博吉
34雨粒の色をこぼせり蝸牛5神奈川県ドラゴン
17ででむしや仄かな星の色宿し4石川県翡翠工房
23競う気はさらさらないと蝸牛4大阪府西田順紀
24帰りにもまだそこにいる蝸牛4埼玉県イレーネ
42まつさらなひとりの時間蝸牛4宮城県ひさを
54蝸牛近江も伊勢も雨の中4滋賀県鶴亀鈍
71角出して火星と交信蝸牛4静岡県渡邉春生
39ででむしや槍や穂高の見え隠れ3神奈川県横坂 泰
40教会のオルガン聞こゆ蝸牛3茨城県申 女
6蝸牛軌跡の文字は恋なるか3北海道雪達磨
7かたつむり何も言はうとせぬいのち3静岡県指田悠志
8城趾の茂る葉の香や蝸牛3神奈川県みぃすてぃ
15でで虫や子の荷物にはなるまいぞ3岐阜県近藤周三
33まひまひや身延古道の塩の道3静岡県えいちゃん
45ででむしのあゆみみつめてあまやどり3神奈川県毬 栗
46後ろには戻れぬ壁の蝸牛3北海道無 才
47おのが閨(ねや)背負うてのそり蝸牛3岐阜県俳ネン
60落ちさうで落ちぬ垂れ葉のかたつぶり3千葉県文 武
61犬小屋に居候する蝸牛3神奈川県梗 舟
63でで虫やまだ馴染めないデイケアー3埼玉県千葉美知子
55お勤めの木魚の響き蝸牛2奈良県魚楽子
11デデ虫や渦巻きの中宇宙めく2神奈川県遠野アルヒ
16役に立つことを探して蝸牛2東京都小石日和
21跡光る太古の地層蝸牛2大分県牧野桂一
22水琴窟の音待つ我とかたつむり2兵庫県毬 藻
27蝸牛見かけによらぬしたたかさ2埼玉県桜 子
30卒論は悪人正機蝸牛2岡山県原 洋一
38僕はまだ何者でなし蝸牛2埼玉県夜 舟
41蝸牛宇宙の重み背負ひけり2神奈川県藤澤迪夫(みちを)
53不登校からの一歩よ蝸牛2愛媛県牛太郎
58石仏の裾の湿りや蝸牛2北海道篤 道
64でで虫や今宵はロールキャベツの日2東京都浩 平
69蝸牛いっそ孤独を美学とし2東京都手島三広
12潸々の雨に背伸びの蝸牛1愛媛県海 猫
2生きてゐてわれは無口な蝸牛1愛知県佐藤マルキチ
5ゆっくりと日陰ばかりを蝸牛1京都府花 子
9蝸牛向かい風にも角揺れず1北海道北郷傘寿
13かたつぶり一分の身にも角のあり1兵庫県三 郎
29角を立て交信開始蝸牛1神奈川県ひろし
32ひもすがらのらりくらりとかたつむり1静岡県彗 星
35蝸牛つれあいの花待ち疲れ1滋賀県原茂幸
48蝸牛寺の階段上りきる1神奈川県風 神
49「兄弟!」と呼びたい歩み蝸牛1千葉県山 月
51なほざりの庭を住処のかたつむり1神奈川県秋山由美子
66ででむしや花を摘む手のとまどひて1神奈川県りゅう
72青シャツの攻める蹴球蝸牛1広島県一 九
73蝸牛いつしか夫婦もゆっくりと1神奈川県佐藤けい
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
142聞き役に徹するひと日慰霊の日13神奈川県りゅう
162村ひとつ眠るダム湖や夏の月11千葉県こごめ草
208ペン走る音一斉に夏季講座11愛知県コタロー
173心太つかみ所のない余生10大分県牧野桂一
123老い猫のあるじ顔して籐寝椅子9岐阜県俳ネン
199潮騒や旅の宿りの明易き6岐阜県俳ネン
112あぢさゐや青の時代のピカソ展6千葉県光雲2
82トマト実り命の色は濃くなりぬ6北海道雪達磨
77石取れば沢蟹すっと横走り5大阪府森 佳月
96紫陽花や細き路地裏猫の道5東京都はんぽ
104木下闇天狗伝説宿る寺5滋賀県幸 亀
121一蹴りでビルから雲へ水馬(あめんぼう)5神奈川県毬 栗
155暗闇に溶け込めきれず半夏生5千葉県えだまめ
179空缶を蹴る少年の夏の闇5埼玉県桜 子
203天心へ佐渡の棚田の夏の月5神奈川県秋山由美子
137戻り梅雨紙飛行機の宙返り4神奈川県梗 舟
185駅弁にソースと醤油麦の秋4静岡県えいちゃん
146水に咲き菖蒲むらさき際立たす4大阪府奥村かよん
92自転車のブレーキきしむ薄暑かな4東京都小石日和
97水入れて棚田をほどく蛍の火4大分県牧野桂一
136群青の器で旨し梅雨明くる4千葉県文 武
143風鈴のトンネルくぐり露天風呂4兵庫県ケイト
147消灯の闇の中なる水中花4静岡県渡邉春生
178コンパクト閉じる音して白日傘4滋賀県百合乃
197あぢさゐの色きそひあふ化粧坂4神奈川県毬 栗
228星砂は聖母のなみだ慰霊の日4大分県晴田そわか
218さるをがせ神の呼吸のごと揺るる3神奈川県りゅう
84若葉風足音軽く古書を買ふ3神奈川県みぃすてぃ
86万緑や学食ランチワンコイン3千葉県こごめ草
89夏足袋や踏まずに歩む畳縁3兵庫県三 郎
93青簾より子守り唄こぼれ来る3石川県翡翠工房
95ひと回りする冷房の山手線3京都府せいち
99撫牛の座す境内に実梅かな3大阪府西田順紀
101新緑や色とりどりを深呼吸3神奈川県ゆりみ
105号令のあるやあらずや蟻の列3神奈川県ひろし
106虎が雨昨夜と違ふ傘の連れ3岡山県原 洋一
138枇杷の実や鳥語話して半分こ3埼玉県豊 楽
156屋上を走るテロップ梅雨の入り3神奈川県たかほ
169古切手選り分けてをり青葉木菟3石川県翡翠工房
182一族の食ふのみの田を植えにけり3岡山県原 洋一
184新幹線走るうぶすな麦の秋3静岡県彗 星
193三つ編みの背に届かざる草矢かな3神奈川県藤澤迪夫(みちを)
220多機能な傘を選びて梅雨に入る3広島県山野啓子
223手を添ふる平和の礎梅雨湿り3静岡県渡邉春生
103アプリ地図手に街を行くサングラス2埼玉県桜 子
124水色の雫の匂ふ四葩かな2神奈川県風 神
186向日葵やいつも笑つているような2神奈川県ドラゴン
83魚市の風濡れてゐる鰹かな2静岡県指田悠志
88荒庭を統べて清しき山法師2愛媛県海 猫
94トレモロの居残り練習梅雨夕焼2愛知県み う
110あたり来し釣糸きらり立夏かな2神奈川県ドラゴン
113霊園の風にたゆたふ蛇の衣2大阪府藤井あつこ
114避暑客の帰りし席や遠浅間2埼玉県夜 舟
116甲斐駒に捧ぐ柏手青葉風2茨城県申 女
122朔の夜もそこに咲きける月見草2北海道無 才
125お散歩車そろいの帽子山法師2千葉県山 月
131空き地こそ我が宇宙よと草茂り2奈良県魚楽子
134郭公の一声時を遡る2北海道篤 道
135告白の息やはらかき水羊羹2大阪府椋本望生
140水盤は空の色なり鳥を待つ2東京都浩 平
141田植え機の振動残る田植え後2宮崎県黒木寛史
145虹立ちぬ神隠しなら今だらう2東京都手島三広
148越屋根の鴉動かず梅雨夕焼2広島県一 九
167百合活けて余生つとめて身綺麗に2岐阜県近藤周三
168道草や枇杷の実のなる家の前2東京都小石日和
171夏盛んカレーの匂う地下出口2京都府せいち
172屋台船ともづな解きし夏の川2東京都はんぽ
211漸うに暮れて打寄す波涼し2大阪府椋本望生
213サヨナラの球追いかける夏帽子2神奈川県梗 舟
219朝顔の蔓へらへらと何所までも2兵庫県ケイト
221靴底で西日を踏みつける気分2東京都手島三広
80ダム湖へと水集まれり梅雨出水1神奈川県たかほ
81憧れの沼の木道水芭蕉1京都府花 子
85夏野行く右も左も蛇の恋1北海道北郷傘寿
90梅雨に入る古希が茶の間で猫ポーズ1新潟県しーしー
98かたつむり回してほぐす首や肩1兵庫県毬 藻
100夏の邪薬医師の言葉の魔法聞く1埼玉県イレーネ
108神域に富士湧水の泉湧く1静岡県彗 星
118引き算出来た朝顔の芽生えかな1宮城県ひさを
119羽化すれど飛べぬ蚕や妣の帯1三重県déraciné
120梅雨晴れや孫に教わるVサイン1兵庫県紀州鰹節
126金魚草こぼれて道に一つ咲く1千葉県あけび
127蜜柑咲く道はくだりの相模湾1神奈川県秋山由美子
128上がり框なぜか懐かし夏座敷1千葉県須藤カズ子
129いつまでも鴉の騒ぐ薄暑かな1愛媛県牛太郎
130古家や白鮮やかに半夏生1滋賀県鶴亀鈍
132W杯敗者仰ぎし夏の空1愛知県コタロー
153夏の川ペットボトルのゆらり旅1大阪府森 佳月
165涙目の蠅に睨まれ手が止まる1兵庫県三 郎
175声すれば鯉の寄り来る濃紫陽花1大阪府西田順紀
183万緑や朱き鳥居を抜け入りぬ1東京都水谷博吉
188戯画を出で「クツクツ」笑ふ蟇1千葉県光雲2
198軒先の杉玉新たに新酒来る1北海道無 才
204花魁草はるか秋田の武家屋敷1千葉県須藤カズ子
205薫風やそぞろ歩きの嵐山1愛媛県牛太郎
210蝦夷梅雨や孫の風鈴微動せず1北海道篤 道
216庭角に或日ぽつんと捩り花1東京都浩 平
224夕陽(せきやう)のひときは大き夏至の海1広島県一 九
225ふる里の土手の椋の木夏の風1神奈川県佐藤けい
226薫風や暖簾ひと揺れ店の奥1大阪府日野かぐや

六月句会選評 選者:草の花俳句会 同人会 服部 満 

≪兼題の部:蝸牛≫

★ででむしや槍や穂高の見え隠れ

 目の前の木の葉の上の蝸牛、その遙か彼方には槍ヶ岳や穂高岳が。雨が上がったばかりの景でしょうか。濡れ
た葉っぱを這う蝸牛と雨雲が途切れて時々姿を見せる北アルプスの山々。この遠近、大小の描写で句に奥行きが
感じられます。大きな景の中に、雨露に濡れる蝸牛の姿をくっきりと認識できます。

◎潸々の雨に背伸びの蝸牛

 童謡にも唄われて、人々に親しまれている蝸牛。そんな蝸牛が、はらはらと降る雨の中、動きが活発になって
いるのでしょう。「背伸び」の表現が面白い。頭にある長短二対の触角が自由に伸縮します。その姿をとらえた
ものでしょう。雨の中の蝸牛が殻ごと喜んでいるかのように感じられる句です。

◎狛犬の鼻先たどる蝸牛

 蝸牛は、頭の二対の角の長い方の先端に目があるとはいえ、明暗を判断する程度とか。狛犬は魔除けや邪気を
払うための獣の像だけに、その鼻先に取り付いた蝸牛というのは中々滑稽です。雨の降っている最中か、雨上が
りの直後か。雨が止んで石の狛犬の乾燥が始まらないうちに、葉裏にでも早く待避しないといけないでしょう。

 ≪自由題の部≫
                        
★潮騒や旅の宿りの明易き

 旅寝の朝の明快な一句。夏の夜の短く明け易いことが「明易し」。空が白み始める早朝に目覚めると潮騒の音
がします。旅先の浜辺に近い宿。ここでの「明易き」は、まだ眠り足りないうちに戸外が白んできてしまった、
という惜しむ気持ちより、今日の旅程を頭に描いて心が弾むという作者の心情が感じられます。

◎戻り梅雨紙飛行機の宙返り

 いったん明けたと思った梅雨がまた二、三日続くことがあり、これが「戻り梅雨」。「紙飛行機の宙返り」は、
戻り梅雨とは何の関係もありませんが、水平に飛ぶ前提で手放した紙飛行機がくるりと宙返りするという思いが
けなさに、北上した梅雨前線がまた戻ってためらっているかのような想定外の思いを感じさせます。

◎駅弁にソースと醤油麦の秋

 旅先で手にした駅弁。少量のソースと醤油が付いている。どんな弁当なのだろう。フライのような揚げ物とか
まぼこのような練物でも添えられているのか。「麦の秋」は、麦の熟する頃の気候も安定した爽やかな季節。弁
当のメインの材料でなく、添付の調味料に注目した余裕と遊び心。上機嫌な様子がうかがえます。「麦の秋」の
効果でしょう。

   
        
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