3月句会結果発表
兼題の部(春の水)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
42春水を空の色ごと掬ひけり12愛知県牧 子
29橋脚に沿いてほどける春の水8東京都水谷博吉
18新しき生命の鼓動春の水7愛知県コタロー
1新しき妻の墓石に春の水6大阪府森 佳月
40安曇野の水車に撥ぬる春の水6神奈川県風 神
19春の水堰通過する速さかな5東京都小石日和
37鍬持てば漲る力春の水5埼玉県夜 舟
22マルセイユ石鹸の香や春の水4茨城県申 女
16春の水門跡院の庭巡る4大阪府順 紀
33フラミンゴの嘴をこぼるる春の水4兵庫県毬 藻
71城垣を大きく曲る春の水4静岡県渡邉春生
30跳ね橋に跳ねるひかりや春の水3神奈川県ドラゴン
4来る児らの皆手を浸す春の水3神奈川県たかほ
13春の水鱗が放つ光かな3兵庫県藤島三郎
20カワセミを丸ごと映す春の水3神奈川県ゆりみ
21煌めきを加へ海へと春の水3神奈川県ひろし
32春水や水が水押し競ひ来る3静岡県彗 星
36レガッタの光さしこむ春の水3神奈川県横坂 泰
38出来たての豆腐ほっこり春の水3愛媛県海 猫
59春水の音賑わしき暗渠かな3神奈川県毬 栗
61水影の樹々にゆらめく春の水3東京都浩 平
64病み犬の背中を洗ふ春の水3兵庫県紀州鰹節
70洗礼の衣の白さ春の水3鹿児島県青 猫
72コックスの掛け声響く春の水3神奈川県秋山由美子
2池も田もあふるるばかり春の水2神奈川県みぃすてぃ
9春の水宇治の流れに鵜飼舟2千葉県山 月
15過疎村の鍛冶屋に婿や水の春2岐阜県近藤周三
17春の水渇水ダムを潤せり2埼玉県桜 子
39坂本の阿闍梨の寺や春の水2大阪府藤井あつこ
46両岸を抱えて流る春の水2広島県山野啓子
48古民家の開店まぢか水の春2埼玉県千葉 美知子
65みなもとはこの山全部春の水2神奈川県りゅう
68飛び石をわたる金髪春の水2愛知県み う
5春の水みづうみ眩し豊かなり1滋賀県百合乃
6春の水手に喜びの伝わり来1滋賀県幸 亀
7ロードスター置く岸辺まで春の水1新潟県しーしー
8春水も大空も我が胸のいろ1静岡県指田悠志
23春の水くねらせ城の鯉の道1石川県翡翠工房
25春水の音森の静けさ押し流す1埼玉県イレーネ
26茶話や素焼きの鉢へ春の水1千葉県あけび
27春の水人の集まる停留所1神奈川県ひろ志
34隠れ里畦をこぼるる春の水1三重県déraciné
43温む川光映して薄みどり1兵庫県三木信雄
50春水のゆるり流るるいささ川1岐阜県俳ネン
54春水が聴衆川べりのサキソフォン1奈良県魚楽子
60「花は咲く」ハミング春の水のごと1大阪府日野かぐや
62春の水心字の池に小さき泡1神奈川県梗 舟
66溢れ来る実りの予感春の水1滋賀県鶴亀鈍
73春の水真更(まさら)入学児も真更(まさら)1静岡県なな子
74那智御瀧三筋を束ね春の水1大阪府奥村かよん
75春の水一揆が起こるかもしれぬ1愛知県いきか
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
180鳥帰る異国の風を乗り継いで10神奈川県ドラゴン
211子の息をくるんで風の石鹸玉10東京都浩 平
129能面の姥の伏目や春の宵9奈良県魚楽子
94野遊や雲に名を付け呼んでみる9東京都小石日和
100さつきから進まぬページ目借時8埼玉県イレーネ
116引き算の暮しに慣れて春の風8岡山県原 洋一
76ポケットに揺れる合鍵春の月7大阪府森 佳月
217やはらかく土のほぐれて菊根分け7千葉県須藤カズ子
107囀や余白の多き予定帳6静岡県彗 星
90リストラを些事と鞦韆漕ぎにけり6岐阜県近藤周三
95亡き夫のくせ字をなぞる春彼岸6神奈川県ゆりみ
115逆立つる馬のたてがみ風光る6神奈川県風 神
122しまなみを渡る風あり桜東風6千葉県光雲2
140袂より花片零るる躙り口6神奈川県りゅう
182嚙み合わぬ会話弾めり山笑ふ5静岡県彗 星
104風光る埠頭にきしむもやい綱5東京都水谷博吉
192洗礼の朝の光や初蝶来5愛知県牧 子
132オムライス目当ての喫茶蔦若葉5兵庫県ケイト
160うす紙の闇や雛の息遣ひ5神奈川県藤澤迪夫(みちを)
184歳時記に妣の癖字や春炬燵4三重県déraciné
183さざ波のやうな片恋卒業式4兵庫県毬 藻
85いつのまに音盤の黙花は葉に4神奈川県藤澤迪夫(みちを)
92出棺を見送る朝や梅真白4埼玉県桜 子
108磨り硝子ほどの寂しさリラの花4兵庫県毬 藻
121保護三日やっと餌を喰う子猫かな4広島県山野啓子
177山笑ふ父の遺した休耕田4神奈川県ひろ志
126卒園や光る瞳のきかん坊3千葉県文 武
181惚け封じの寺に参拝山笑ふ3静岡県えいちゃん
79ふひと出て歩き過ぎたり春の宵3神奈川県たかほ
83母と子の息さすらへりしやぼん玉3静岡県指田悠志
87ピカソ・ダリ・マチス・モネ・マネ四月馬鹿3京都府せいち
91シクラメン品定めする男客3大阪府順 紀
96鬼怒川の春空回す転車台3神奈川県ひろし
105泣き場所を探しいつしかぶらんこへ3神奈川県ドラゴン
137廃校に「ありがとう」の字春の川3神奈川県梗 舟
146たんぽぽと話してみたし立子の忌3静岡県渡邉春生
148映画館出でればやさし雛の雨3静岡県なな子
149催花雨やカフェの加湿器白く噴く3大阪府奥村かよん
152初蝶や微睡む庭の天使像3神奈川県みぃすてぃ
162春昼のきれいに焼けた喉仏3京都府せいち
172シニア向け間違い探し夕永し3茨城県申 女
200逆上がりやつと成功山笑ふ3岐阜県俳ネン
219囀りの消えてひと時湖(うみ)の黙(もだ)3広島県一 九
80木の芽時山雨が醒ます昼の欝2滋賀県百合乃
86蜃気楼めくや戦火の瓦礫街2愛知県佐藤マルキチ
109母の手に触れしはいつぞ朧月2三重県déraciné
111春風や顔認証の保険証2神奈川県横坂 泰
113初蝶に雨後の田畑の明るけれ2愛媛県海 猫
135鯨尺てふ妣の物差し春の夜2大阪府日野かぐや
143山笑ふ鳶は地球に影うつし2愛知県み う
154泥濘に足のもたつく新社員2神奈川県たかほ
164山風の抜け来る小径蕗のとう2神奈川県遠野アルヒ
166柏手を絵馬にも打ちて梅見かな2大阪府順 紀
194流氷やクリオネ乱舞オホーツク2北海道雪達磨
195空くじも古き手紙もドンド焼き2滋賀県原茂幸
208雛達の行く末案じ仕舞ひけり2北海道小 幸
215飼い猫をからかっている日永かな2神奈川県りゅう
224人攫ふ波は穏やか磯菜摘2大阪府奥村かよん
77春惜しむ泣きて澄みゆく心かな1神奈川県みぃすてぃ
81春愁や戻れぬ日日を顧みる1滋賀県幸 亀
84誰がため己がためにか咲く桜1千葉県山 月
93春めきてネイルアートの女性かな1愛知県コタロー
98春満月スーツケースの影軽し1石川県翡翠工房
101朝の日や居並ぶ鳥に木の芽吹き1千葉県あけび
106囀りのこぼれ水の輪拡がれり1静岡県えいちゃん
110撫で回す野良の仔猫に名を付けて1大分県牧野桂一
114春霞二上山の鞍二つ1大阪府藤井あつこ
117ぶらんこに揺られ来し方思ひけり1愛知県牧 子
118花ミモダ明るさ添える宴の席1兵庫県三木信雄
124吾は鳥を鳥は魚を視る春の川1大阪府椋本望生
125山野辺の旨き空気や青き踏む1岐阜県俳ネン
128根を跨ぐ箒目やはし春の庭1大分県晴田そわか
134老いぬるや御山(おやま)も過去もかげろひて1神奈川県毬 栗
138子規の句を皆で読み解く春燈下1愛媛県牛太郎
139船頭に行き先問ふて花筏1兵庫県紀州鰹節
141雁風呂や波静まるを祈る夜1滋賀県鶴亀鈍
145遠霞近頃会わぬバスの客1鹿児島県青 猫
147朧なるかなたに淡き摩天楼1神奈川県秋山由美子
155廃棄の貼紙ちりちり花の雨1滋賀県百合乃
156雛人形母の名を記す遺品かな1滋賀県幸 亀
159かにかくに桜花爛漫たれがため1千葉県山 月
168啓蟄の日に透けてゐる羽虫かな1愛知県コタロー
170弾を球に変えまあるく春うらら1神奈川県ゆりみ
178もう咲くね蕾びっしり雪柳1京都府花 子
179彼岸道水桶下げて遅れゆく1東京都水谷博吉
189引波や宿居虫の脚さわさわと1大阪府藤井あつこ
190雛の間の雛の妖しき薄あかり1神奈川県風 神
196生まるるは歪な形シャボン玉1広島県山野啓子
197嘘つかぬようにうそつく万愚節1千葉県光雲2
201春空や大役終へて風を吸う1千葉県文 武
203風光るベンチの袖のカフスボタン1大分県晴田そわか
204開花宣言標本木を取り囲み1奈良県魚楽子
205懐かしき教え子の名が訃報欄1北海道篤 道
210ぶらんこや列の先頭靴脱ぐ子1大阪府日野かぐや
212チャンネルを回せと叫ぶ昭和の日1神奈川県梗 舟
213春立つや赤き帽子の地蔵尊1愛媛県牛太郎
218三月の海に合わせる手の老ひし1愛知県み う
222薄氷を浮かべて寺の池暮るる1神奈川県秋山由美子
223春うらら講談三昧初の推し1静岡県なな子
225薔薇芽吹く鉢に妖精居る如し1愛知県いきか
【選評】選者:草の花俳句会同人会 服部 満

≪兼題の部:春の水≫

★春水を空の色ごと掬ひけり

「春水四沢に満つ」と言われるように、雪解けで湖沼や沢も水を湛え、川も豊かに流れる。湖か沢か、水に映る
空ごと両手で掬ったという景。既に水も冷たくはなく、てのひらには春らしいぬるさが感じられます。「空の色
ごと」は当然青空の色でしょう。それによって「春水」が活きてきます。

◎春の水堰通過する速さかな

 春の雪解けとともに、河川や湖沼の水量も増え、流れは水音も高くなる。満々と水かさを増す水の動きも激し
くなる。水路中に構築された堰を勢いよく水が流れて行きます。作者は堰を通過して行く水の速さに注目しまし
た。その速さと水音には春の明るさと躍動感があります。

◎マルセイユ石鹸の香や春の水

「春の水」は、雪解けや雨量の増加で水量が増し水の湛えや流れが勢いづくことです。一方日常生活の中にふと
感じる春の水もあります。掲句は、顔か髪を洗うのにオリーブオイルで造られる伝統的なマルセイユ石鹸を使お
うというのでしょう。天然成分の石鹸の香りと傍らのぬるい感触の春の水が通い合って、屋内の暖かく柔らかな
空気を感じさせます。

 ≪自由題の部≫
                        
★卒園や光る瞳のきかん坊

 幼稚園を卒業する男児。きかん坊で人に譲ったり負けたりするのが大嫌いで気が強い。両親にすればそんな息
子の性格がいささか気がかりです。「光る瞳」の表現で男児の姿が具体的になりました。卒園のめでたさと同時
に幼児の陽気さと力強い将来を感じさせます。小学校に入学したらたくさんのお友達ができるでしょう。

◎噛み合はぬ会話弾めり山笑ふ

 どこか山里など訪ねた景でしょうか。噛み合わない会話が弾むという状況が愉快です。誤解し合ったまましゃ
べりあっているのが互いに楽しいのでしょう。山の木々が芽吹き花も咲き始めて生気に満ちてくる春の山が「山
笑ふ」です。朗らかに笑う人の姿になぞらえただけに、会話に参加している皆が笑いに満ちている姿が浮かびます。

◎歳時記に妣の癖字や春炬燵

 亡くなった母も俳句にいそしんでいたのでしょう。母の使っていた歳時記を今は作者が使っている。ある頁に
母の癖字で句か言葉が残っていた。薄ら寒さにふと座り込んだ炬燵で、その読みにくい癖字を見て、懐かしさと
ともに母の俳句生活を思い、母の思い出にひたったのでしょう。「春炬燵」の季語が効果的です。

        
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