6月句会投句一覧
兼題の部(蝸牛)
1蝸牛飛びもせぬのに籠の中2蝸牛嬰の眠れる奥座敷
3生涯を手探るで生き蝸牛4蝸牛つぎに出るのは目か角か
5雨上がりでで虫ひとつ深呼吸6かたつむりふと口遊むわらべ唄
7蝸牛朽ち木の端の通り道8悠悠と二十一世紀の蝸牛
9かたつむりゆつくりいけよころぶなよ10家背負い葉の道遠きかたつむり
11遅刻した訳は門扉の蝸牛12通過待ちででむしの歩に凪ぐ心
13かたつむり紙に折られててのひらに14ゆるやかに時を刻んでかたつむり
15苔むせる透かしブロック蝸牛16かたつむり銀の航跡残しけり
17宇宙人と角で交信かたつむり18ためらいし跡白々とかたつむり
19打ち仰ぐ連理木太しかたつむり20蝸牛竹の先まで落つこちぬ
21蝸牛思ひがけなく歩の速き22雨あがりターン苦手か蝸牛
23一病の検査結果や蝸牛24黙々と兀々と父蝸牛
25この寺に住み幾年やかたつむり26かたつむり遺伝子繋ぎ繋がれて
27でで虫や旱の夏を閉じ籠る28手話授業窓に角ふりかたつむり
29蝸牛いまどの辺り古希まじか30垂直な壁天目指す蝸牛
31かたつむりそつと小さき手にのせて32バス停のベンチを占める蝸牛
33蝸牛雨の匂ひに誘はれて34蝸牛洋館の庭の幾何模様
35身の程を心得歩む蝸牛36蝸牛食みし葉裏の雨の音
37長靴で駆け出す子らやかたつむり38己が道残して歩む蝸牛
39風の声さがせど見えず蝸牛40ふと視線あげたる先の蝸牛
41かたつむりプラハの風にさらされて42バス停のベンチを占める蝸牛
43ででむしの軽らかな殻重たげに44角隠し思案中なり蝸牛
45蝸牛終末時計は二分前46かたつむり角は行路の羅針盤
47師の句碑に侍るでで虫身じろがず48かたつむり今日の予定をたしかむる
49夕日中葉影の揺れてかたつむり50でで虫や父の勤めし療養所
51かたつむり決断迅き岐れ路52道半ばされどのったり蝸牛
53蝸牛ふるさと遠き海にあり54新しき村に住みつく蝸牛
55回覧板いつもの角に蝸牛56雨催ひけふはお出かけかたつむり
57梅雨晴れ間葉陰に二匹の蝸牛58うかうかと蝸牛見て雨となる
59かたつむり独り見てゐて老い想ふ60頑なな心角出す蝸牛
61一雨のあとの明るさ蝸牛62揺れてゐる葉に蝸牛揺れてゐる
63未だ誰もおらぬ墓石に蝸牛64飼い犬の視線の先はかたつむり
65気怠さの午後でありけりカタツムリ66蝸牛雨に命を宿しけり
67鉄砲雨郵便受けに蝸牛68西の京歩き疲れてかたつぶり
69ゆつくりとゆつくりと吾は蝸牛70でで虫を庭に残して越しにけり
71でで虫やいつまでつづく晴天日72土砂降りを葉陰にしのぐ蝸牛
自由題の部
73紫陽花の化粧直しの小雨かな74バス降りる海月ゐさうな海の側
75水田の朝の始まる水馬76麦藁帽子一日を動く畑かな
77戸渡りて沖の孤島へ大夕立78あぢさゐのしたたるいろをてのひらに
79ダーウィンになるやこの手の蝸牛80夏の川この上流に母ひとり
81転がつて地球の涯の三尺寝82薬草の小さき誇りどくだみ草
83冷素麺ピンと響かせ箸を割る84梅雨の月貴女の忙裡に閑を照らせ
85落暉して遠き瀑布も見えわたる86よろけつつ鹿の子すつくと立ちにけり
87恵林寺の門の遺偈や信長忌88顔見知り今年も会えり鮎の宿
89父の日に貰ひし酒の酔ひ心地90卵黄のごとき太陽夏に入る
91女学生明るく笑ふ薔薇の雨92白き花器あぢさゐの青清々し
93緑蔭に寝床移すや迷ひ猫94釣り人の目線游ぐや花しょうぶ
95廃陶の多き家並み時鳥96身中にも梅雨前線停滞す
97木道をほんのり照らすホタルかな98青梅を酒に漬け込む処方箋
99嫋やかに竿は弧をなし鮎の川100余生なほ描く明日あり雲の峰
101絵手紙の手漉きの余白雨蛙102曲芸の如く水面を飛ぶ燕
103湖をひとまはりして避暑地かな104縄電車駅に選びし栗の花
105踏ん張つて砂丘越へれば夏の海106大花火妻を呼ぶ間に散りにけり
107湯上りの石鹸(しゃぼん)の匂ひ蛍狩108梅雨の蝶「花の番地」を探しをり
109紫陽花や雨は海へと流れゆく110山門の仁王炎暑の息を吐き
111新緑のすきまに踊る五線の譜112水鉄砲せめて焚火の火を消さむ
113入魂のメロンやうやう父の味114縄電車駅に選びし栗の花
115さくらんぼ触るる唇柔らかき116風鈴や幼な子寝顔にぬいぐるみ
117薔薇植えて壁に専門医認定書118蛸足の食み出す壺や半夏生
119暮れてなほ栗の花の香濃かりけり120夏草や道路工事のガードマン
121道の辺の小さき流れや蛇苺122ラ・ラ・ランドの映画再び四把の花
123誇りうる匂ひ放つや栗の花124枯れ蚯蚓人足早に仕事へと
125広き庭舞台となるや七変化126岩苔の膨らみ落つる清水かな
127コ-ヒ-もピザも有るとふ滝見茶屋128この国の行方はどこへ麦酒乾す
129花図鑑ながめて一日梅雨籠り130雑念を捨てたき時は草を引く
131うねるアスファルトに干からび蚯蚓132地に届かむ栗の花房誇らしき
133顔かくし男日傘の影早し134緑蔭や見知らぬ人と話し込む
135杣人の腰に蚊遣や遠瀬音136三つ編みを直すおてんば祭笛
137桑の実や皺も美人を引きたてて138元号の馴染み始めし梅雨晴れ間
139整然と青田ひろごる景色かな140滝降りぬ我が歩とめるや沢の蟹
141柔道の帯をまわしに草相撲142黒南風やシニアの枠でくくられて
143炎昼や日照雨えがきし数多の輪144蜘蛛の巣に大物かかる嵐前
145幟をたてて手にマイク立葵146帰校子の一騒動や蛇を打つ
147里山の膳にのるらし菫和え148発心となせる遠嶺の夏の雲
149目線下げ青もみじをば引き込みぬ150水馬力一杯空へ跳ね
151万緑の中写生子の散らばりぬ152十薬や若き日のこと省みる
153蝸牛まだ打ち融けぬ葉のわたし154食卓のコップに挿せる薔薇一輪
155母逝きて泉涸れたるこの世かな156隠遁術のごとく紛れて昼寝の子
157令和の字並ぶポスター駅薄暑158拾い足水たまりからアメンボ!
159夏草やゲートボールの白き飛ぶ160梅雨晴間青嶺は高く蘇る
161吾の腕へ君の手のひら夕蛍162十薬に侵され住みし独り者
163扇子の手止まる桟敷やはつけよい164花びらを揺らし舞ふかな花菖蒲
165一筆箋くちなしの香を認むる166箱庭や活花仕立てに整へり
167紫陽花を手折れば雨の匂ひなほ168五月晴一直線のジェット雲
169風薫る開け放したり病める部屋170時の日やカウントダウンされる老い
171夕立に裾を気にして初浴衣172夕焼けにパラグライダー魅せられて
173ペディキュアの赤颯爽と浴衣の娘174借景の山に気の晴れ籐寝椅子
175行間を詠みとりきれず女梅雨176一夜干し鮎捌きをり解禁日
177朝の日を透かすカーテン梅雨晴間178干し竿を拭いて主婦の梅雨晴間
179掬ひたる水の煌めき夏に入る180牡丹花の散りて隣家に二三片
181暮れ泥む空掻き乱し蚊喰鳥182立ち止まり風の私語聴く蟻の列
183菖蒲咲く城の木立は濃き緑184重き腰あげつつ孫と宵祭
185電柱の影の短し夏来たる186紫陽花や名人芸の皿まわし
187酸欠のナイタームンクの口をして188干し竿を拭いて主婦の梅雨晴間
189薫風にほろ酔ふ体暮れ残る190鍵盤に踊る音符や水澄まし
191青水無月藍色の象歩む皿192夏燕大地みどりの真っ平ら
193卯の花腐し火入れを待てる登り窯194蕗の葉や傘の代わりになれもせぬ
195古びたる竹垣の道半夏生196髪の色変えて明るき梅雨の空
197郭公にどやされて覚む法事かな198トンネルの切れ間刹那の山法師
199蛍狩り光の交差幼の手に200食堂の洗ひ晒しの麻のれん
201蜘蛛の子の散つて親蜘蛛見当らず202荒梅雨や職員室の灯りたる
203大屋根の庭に一叢半夏生204黒南風や昼を灯せるビルの窓
205窓越しに足裏見せる青蝗206また一つ落とし文の後追い歩く
207梅雨寒のひと日よく鳴る猫の喉208六月の風草庵の四畳半
209伸ぶるだけ伸びて夏草ながの留守210園児等の駆けて噴水風の中
211ハイヒールのリズムに遊ぶ夏の蝶212梅雨晴れ間手拍子誘う選手かな
213美山路は濃きも薄きも夏木立ー214蛙鳴き心は植田に千里飛び
215村八幡青大将の蜷局巻く216紫陽花のような男と共暮し
217飛び入れば足くすぐりて山女かな218梅雨寒や昼を灯せる喫茶店
219青葉陰昼餉すませて寝入る児ら220サングラス明日成田を発つと云ふ
221新茶葉の縒り解けゆくうすみどり222水出しのガラスコップの新茶かな
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より1句、自由題より2句の計3句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:7月27日(土)、発表は7月31日(水)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
5月句会結果発表
兼題の部(新茶)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
42添書に息災の二語新茶汲む6神奈川県横坂 泰
4新茶淹れ離れ住む子の話題など5東京都小石日和
40母さんの居さうな雲や新茶摘む4大阪府椋本望生
53長編読了ゆっくりと汲む新茶3兵庫県魚楽子
8新茶汲む静かな雨のひとときを3大阪府藤岡初尾
30新茶摘む伝統ありきわが母校3千葉県須藤カズコ
38無口なる父と新茶を汲む母と3神奈川県志保川有
18お茶漬けの茶も新茶なり宇治の茶屋2京都府しげお
16蘊蓄を聞く羽目となり新茶酌む2奈良県文義
1香を運ぶ新茶手揉みの匠技2大阪府宮下 英範
9饒舌の言葉のみ込む新茶かな2滋賀県正男
32きつかけは君の失せ物新茶淹る2石川県一鷹
41新茶飲む海をめでつつ和三盆2北海道千賀子
55新茶汲むひとりの時間いとほしむ2愛媛県牛太郎
64一番茶摘む手に空の碧さかな2東京都一寛
6華寿超えて無言の朝の新茶かな1新潟県はるひ
7特攻の遺影に知覧の新茶そへ1埼玉県暦文
13品評会新茶嗅ぐ手に歴史あり1福岡県葉室緑子
14七十のとし噛しむる新茶かな1東京都
20染付の湯吞みに注ぐ新茶かな1岐阜県小太郎
22楽屋裏新茶楽しむ出番まえ1埼玉県郁文
23茶渋つく湯呑みに注ぐ新茶かな1埼玉県祥風
25水出しのガラスコップの新茶かな1福岡県えつこ
27存へて二人朝餉の新茶かな1奈良県陶生
33新茶淹れ二人笑顔で別れましょ1埼玉県夜舟
44和菓子添へ先づ仏壇に新茶汲む1静岡県さくら
45季寄せ手に独り遊べり新茶の香1北海道三泊みなと
46信楽の壺で届きし新茶かな1岐阜県色即是句
51物産展先づは新茶のおもてなし1熊本県蕗の薹
52新茶入れ会話の弾む二人かな1千葉県相良華
58新茶淹れ平和行進もてなせり1静岡県春生
61健診の朗報ありて新茶かな1兵庫県ぐずみ
63月出でて雨ふりそむる新茶かな1広島県一九
67また一つ茶筒の増えて新茶かな1長野県幸々
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
122吊り橋のここが真ん中青嵐6埼玉県さくら子
84帰宅して飛び出して行く夏帽子5福岡県伸治
112青葉木菟昼なほ暗き奥の院5静岡県さくら
170青蛙真つ只中の反抗期5千葉県みさえ
86遊ぶ子の蛇口に列をつくる夏4神奈川県ひろし
74さくら貝運命線の上に置き4埼玉県暦文
114名山も名もなき山も新樹かな4岐阜県色即是句
128少年の手足すらりと夏来たる4大阪府レイコ
144万緑や千手を伸ばす観世音4滋賀県正男
191川沿ひの門前町よ風五月3愛媛県牛太郎
78麺つゆの薄まつてくる遠蛙3京都府せいち
119少女らに少女のにほひ夏来る3熊本県蕗の薹
148山藤や母の遺したアメジスト3福岡県葉室緑子
190なりゆきにまかせる余生蓮の花3埼玉県さくら子
102夏の雲萱で葺きたる水車小屋2千葉県みさえ
150おとなへば植田広ごる道に出づ2愛知県丸吉
68今宵宿山桃香る四畳半2大阪府宮下 英範
80押し寄する色ひときはの藤の波2福岡県葉室緑子
85万の苗万の水輪の植田かな2京都府しげお
87新樹光受けて史跡の野点傘2岐阜県小太郎
92海峡の潮の目に立つ卯浪かな2福岡県みつぐ
97夏めくや光りを掬う銀の匙2東京都一八
101仲見世の異国の言葉色団扇2埼玉県夜舟
110竹落葉音といふもの和らいで2神奈川県横坂 泰
117薔薇匂ふ丘のチャペルの婚の鐘2千葉県光雲2
125水音に押されて帰る蛍狩2滋賀県和久
141蒲の穂や太古に帰る信濃川2新潟県はるひ
165夏兆す色とりどりのガラス瓶2東京都一八
187衣替へて二の腕風をとらへけり2熊本県蕗の薹
193分校やピアノの上の麦ほこり2滋賀県和久
83競べ馬一騎無双の由々しさよ1奈良県文義
69本棚の「幸福論」や花は葉に1栃木県垣内孝雄i
70何処までも白詰草の大地かな1愛知県コタロー
71一車線続く県道麦の秋1東京都小石日和
72夕立と駝鳥頭の孫が来る1大阪府さわいあい
88初蝶来ひらひら舞いていづこ消ゆ1三重県倉矢 幸
94いまからは頑固封印更衣1岐阜県近藤周三
95アルバムに若き妻をり風薫る1奈良県陶生
100大和碓海保の船へあいの風1石川県一鷹
103マンションの灯り揺らめく植田かな1三重県正耕
104鯉のぼりカメラ構へて風を待つ1神奈川県風神
108葉桜の風に腰掛く齢かな1大阪府椋本望生
111はつ夏の風こそ渡れ帆をあげよ1埼玉県グレイス
133万緑や風に乗りくるカレーの香1福岡県蛍川
136風まかせゆらり船を漕ぐ芥子坊主1大阪府宮下 英範
145柿若葉やさしき風のこゑを聴く1埼玉県アポロン
147此れよりの佐渡行く船や卯波風1千葉県あけび庵
152棚田百準備ととのえ夏つばめ1福岡県伸治
154五月雨や龍の眼睨む天井画1神奈川県ひろし
163翡翠の一瞬時間止めにけり1奈良県陶生
164新緑をひらくボートの舳先かな1神奈川県ドラゴン
168梧桐や野風となつてゆく電車1石川県一鷹
169車窓から光る立山水張田1埼玉県夜舟
172寝仏の顔は根子岳阿蘇は夏1神奈川県風神
174嫌はれて嫌はれてなほ藪枯1神奈川県志保川有
175旋回す今年初めの巣立鳥1愛知県さと
178浜風を好きになつたる潮干狩1神奈川県横坂 泰
182若草を空へゴルファー風を読む1岐阜県色即是句
183ハーレーの咆哮きこゆ五月の夜1神奈川県毬栗
186空高き風に乗る香や花樗1三重県穂のか
188薫風や犬には犬の矜持かな1千葉県相良華
192恋文を胸ポケットの虹の道1千葉県大信
195怪なるは芋虫毛虫蝶幼虫1静岡県こいちゃん
197銘柄の増えた焼酎村興し1兵庫県ぐずみ
198卯の花や土にこぼれてなほ白し1茨城県荻田廿日
201そこにいる君に届かぬ若葉風1福岡県蛍川
選評:選者 「草の花俳句会」副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:新茶》

★長編読了ゆつくりと汲む新茶

本好きの人はおそらく皆が共感できるのではないでしょうか。一心不乱に読み継ぎ、クライマックスを経て読了。
全身の力が抜けたような気分の中でもしばらくは続く余韻。否、余韻に浸っていたいのかもしれませんね。そんな
時には「ゆつくりと汲む新茶」がとても相応しいように思われます。「ゆつくりと」も効いているようです。

◎新茶淹れ離れ住む子の話題など

新茶の季節になるとやはりうれしいものです。また今年も…などと思いが飛びます。新茶の香りを感じながら独特の
甘みを口に含むと、そういえば息子(娘かもしれませんが)は今頃はどうしているだろうか、などという話題にも
思いが広がることでしょう。気持ちの良い新茶ですね。

◎お茶漬けの茶も新茶なり宇治の茶屋

さすがに茶所「宇治」ですね。お茶漬けの茶でさえ新茶で淹れてくれるとは…。感激されたようです。そこで作者は、
一句の中に四回も「茶」と言う言葉を入れることで、宇治への最高の挨拶句をしたためました。よほど嬉しかった
のでしょうね。


《自由題》

★遊ぶ子の蛇口に列をつくる夏

暑い盛りの子供たちは、いつの間にか水と戯れます。しかし、ここでの「蛇口に列」は、単にのどの渇きを癒しに
来て子供たちだったのかもしれません。しかし、遊びの合間合間に蛇口に集まる子供たち。その習性がとてもよく
描かれました。案外、下五の最後にぽつりと置かれた「夏」が効いているのかもしれませんね。

◎競べ馬一騎無双の由々しさよ

本来の競べ馬は京都上賀茂神社での神事であり、二頭一組で五回争われるそうです。実際に見たことはないので
詳細は分かりませんが、現在はショー化しているようです。しかし、ここで作者は、勇ましくも立派な一騎に遭遇
したようです。感激もしたのでしょうね。「無双の由々しさ」は巧い表現でした。

◎吊り橋のここが真ん中青嵐

恐る恐る吊り橋を渡っているのでしょうか。ようやく真ん中まで来たようです。でも、まだ真ん中。戻るも行くも
距離は同じ。目的地が対岸にあるのなら、もちろん行くのみ。青嵐の、本来なら清涼、爽快といった皮膚感覚もあ
るのでしょうが、ここでは怖さを演出する強風でしかないようです。


添削(ランクアップのために)

今月も、先月同様、ちょっと直せば、即、選の対象になるものばかりでした。惜しいですね。言いたいことと表現
とのミスマッチをできるだけ小さくできればと願うばかりです。。

・はつ夏の風こそ渡れ帆をあげよ → はつ夏の風こそ良けれ帆をあげよ

「はつ夏の風」の心地よさに、「帆をあげよ」はまさに気分壮快。しかし「渡れ」は勇み足のように思います。
ここは、風の心地よさだけで、「帆をあげよ」につなぎたいところです。「風こそ良けれ」とすれば完璧でした。

・ふるさとの風の草笛聞えくる → ふるさとの風に草笛聞いてをり

近くでどなたかが草笛を吹いている。作者はそれを聞いている。ふるさとの風に吹かれながら…。懐かしいような、
安堵するような「ふるさとの風」の中で聞く草笛。しかし、「聞えくる」では「ふるさと」が活きません。ここは
「ふるさと」への思いの中で聞く草笛の音であるべきだと思います。「聞いてをり」としたいところです。

・花水木たゆたふ緩き風の中 → 吹かれゐてたゆたうてをる花水木

風の中で、ゆらゆらと動いている花水木。ただそれだけの景なのですが、その存在感を、作者はしっかりとみて
います。ただ句としては「緩き」という副詞は余分でした。ただ、吹かれている花水木だけに絞って詠んで欲しい
と思います。

        
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