9月句会投句一覧
兼題の部(秋の水)
1泡ひとつくるくる回り秋の水2手に受けて指に爽やか秋の水
3湖に落ち群青となる秋の水4水の秋逆さに映る馬のかほ
5ため池の堤は静か秋の水6秋の水開ければ落ちて来る何か
7川底の藻草と遊ぶ秋の水8嫁ぐ子のケープのレース秋の水
9畑仕事終えて洗手や秋の水10木曾の杣生傷洗ふ秋の水
11富士山を写す本栖湖秋の水12秋水をたたへて清し五十鈴川
13湧き出して砂を踊らせ秋の水14手水舎の龍の口より秋の水
15きらめける光の刃秋の水16一列車止る鉄橋水の秋
17棚田から湖へ湖へと水の秋18利尻富士仰ぐ足下秋の水
19火口湖の歴史を秘めて秋の水20小魚の生命の群れる秋の水
21シャキシャキと米研ぐ音や秋の水22ゴールドで返す免許や秋の水
23深吉野の水分社より秋の水24青空のブレンド紅茶秋の水
25手のひらに受ける真澄な秋の水26鳥の水尾白くとけゆく秋の水
27秋の水蛇口の水が心地良く28白秋の詩集にルビよ水の秋
29今日からは子の水筒へ秋の水30水の秋水の底なる水の影
31どこまでも正直であれ秋の水32ホスピスにミントの薫り水の秋
33日のひかり静かに揺るる水の秋34セピア色会いたい人が秋の水
35秋水を切り行くエイト速み秘め36わさび田に滴り落ちる秋の水
37豪雨にも澄まんとするや秋の水38木道に接写する人水の秋
39スケッチを見せ合ふ子らや水の秋40祖母眠りくちびる湿す秋の水
41秋の水おいらん淵に一葉あり42ふりかえりまたふりかえる秋の水
43奥琵琶の秘仏を訪へり水の秋44秋水やいずこより来ていずこへと
45小流れにわたる棚橋水の秋46秋水に口中すすぐ昼餉時
47そろそろと両手にうけて秋の水48合流に行き交ふ風や秋の水
49秋の水寄り添ひ廻す水ぐるま50水の秋竿を漕ぎだす渡しかな
51空澄みて君もまた澄む秋の水52猫よ調査表頼む秋の水
53高麗川の二手に分かれ秋の水54風渡る大屋根散歩水の秋
55奥多摩の木霊をのせて秋の水56奥入瀬や表情豊かな秋の水
57万引きの子の目に浮かぶ秋の水58川石に魚影一瞬秋の水
59旧友の旅の誘いや秋の水60はがれたる大樹の木肌秋の水
61加茂川の川沿ひ歩く水の秋62水の秋陶水滴のひとしづく
63海馬へと酸素運びし秋の水64コックスの声高らかや水の秋
65秋の水水鳥一羽影揺らす66立ち枯れの木々の瞑想秋の水
67手を清む御裳濯川や秋の水68鯉の口艶めくほどや秋の水
69川底の我は父似や秋の水70坪庭にほのかに紅き秋の水
71魚群れ木々通る風秋の水72神域や龍の口から秋の水
73爪立てて亀が歩くよ秋の水74よみがへるパーゴラの白水の秋
75秋水に拭う裸身の目覚めをり76父と娘の網もて掬ふ秋の水
77船頭の唄声流れ秋の水78足裏に肉刺の二つぶ秋の水
79荒れ庭に勢ひ余る秋の水80墓洗う薄き背中や秋の水
81秋の水そこに無きかのように嵩82鉱山の鉱石沈む秋の水
83つくばいに犇く星と秋の水84秋水や風呂湯を一度上げる宵
85銘刀の秘技焼入るる秋の水86父の住むホームの池の秋の水
87島原の鯉泳ぐ堀秋の水88秋の水菩薩の多情映しをり
自由題の部
89夫婦ともに淋しがり屋や秋ともし90過ぎし日は幻のごと夜涼かな
91黍嵐座して聴き入るラジオ劇920といふ放下の数字秋のこゑ
93風呂に火を入れて夜庭をもう一斗94萩の花道も水路もワイ字かな
95佇むめば三浦海岸秋の雲96果樹園の切り株あらた群芒
97秋彼岸妣の記憶の夜なべ哉98能登の子を養子に尼やとろろ汁
99月食や真夜に何度も空仰ぐ100白々と山湖さざ波今日白露
101尺八の市歌の合奏秋深む102古傷には触れず酒宴の夜長かな
103音も無く橋を渡るや月の影104村境越えて一望蕎麦の花
105秋桜メトロノームに似て揺れて106蜩やまだ畠にいる農の人
107歯切れよく台詞を語る村芝居108秋暑し干上がる池に鷺一羽
109狗尾草風と自在に遊びけり110香の物欠かさぬ膳や秋の暮
111天気図に渦の二つや台風来112山頂に待ち伏せゐたる深き霧
113自棄酒の理由は言はず初時雨114キッチンに育つハーブや小鳥来る
115秋雨のイメージ破る降水帯116こぞりては祈りのかたち曼殊沙華
117秋風の捩れ吹き上ぐマンション群118来し方を語る二人の良夜かな
119収穫の秋語る背や父老ひし120秋扇内緒話の口に添へ
121ピカピカと光るディスクや鳥威122盂蘭盆会秒針はまだ脈を打つ
123色と香とほめて新蕎麦すゝり込み124酔芙蓉今日も午後から一人酒
125ふるさとを口ずさむ母秋彼岸126新蕎麦や写真の父の片えくぼ
127我が犬の顔舐めにくる敬老日128赤とんぼ乗せて川風ゆきにけり
129玉兎より高く跳ねるはちろろ虫130満塩の漁港に風や赤蜻蛉
131朝露の天地転がし落ちにけり132草むしり幾度叩かる黒子かな
133駅前の店頭ならぶ今年酒134幸便や昼餉間に合う茹でもろこし
135山寺の坂を傾ぐや秋日傘136朝市に男まざれり秋茄子
137コスモスを風あるように活けにけり138朝霧や残飯漁る親子鹿
139秋高し空より白き白鷺(はくろ)城140ベランダにおきざりゴム草履ちぢむ
141子の手孫の手総動員の吊し柿142秋刀魚焼く匂い家路に漂へり
143秋水に棹さす若衆三代目144地芝居の聞こへし台詞津軽弁
145五百羅漢もみじ寄り添ふ石仏よ146秋の火や仕舞稽古の大き影
147吾が余生余りにあらず実山椒148人送る夜の明るさ萩の道
149高原の風一面の秋桜150水瓶に潜んでいたり月の影
151蜻蛉と限界の高度に一人152秋の夜訛りのまじる長電話
153森の奥うねり渡れリ伐木機154名月や小石ころがす波の音
155キャッチボール見えるまで子と秋の暮156超人の脚跳ねあがり月を指す
157夜食とる耳に赤ペン待機させ158秋澄むや空ぶかしするナナハン
159最上川舟運の跡萩の花160古里の「村史」繙く夜長かな
161丹念に備蓄米研ぐ震災忌162法師蝉風前ぶれの雨迫る
163月例句会中断の青蜜柑164組立ての進む足場や秋の雲
165小鳥来る夜明けの森のにぎやかに166汗拭きシート使い納めの芋煮会
167家族みなそれぞれの秋灯しけり168露草や河畔輪になり体操す
169町内は五時の知らせや赤蜻蛉170石人のどれも首無し曼珠沙華
171かりがねの軍港包みこむ落暉172嵐過ぐ倒木と落蝉の道
173群雀日がな竹伐る音の中174秋桜や暮れ行く空を彩りて
175切岸へつづく細道芒原176秋うららタトゥーの歩く東大寺
177使われぬバランスボール秋暑し178秋暁や窓開け放し茶を啜る
179秋暑し圧風纏い着くサブウェイ180秋のくれ墓地の置石どれも墓
181クエーサーCDを着た遠案山子182青蜜柑人間の尻に見えて来る
183寝室の明かりを消して虫時雨184虫の音や乱歩に挟む栞紐
185憚りて乳房我が子へ秋の暮186牛を譲り夫婦村捨つ秋の風
187朝霧の晴れて湖畔の黄菅かな188新涼の空に鳶の輪一つならず
189秋日傘たたみ寺町アーケード190客席へファールボールと赤蜻蛉
191揺るる月隅田を下る通ひ船192蚯蚓鳴き闇の深まる深大寺
193案山子二基駆落ちするのその姿194入相の山寺の鐘鰯雲
195一点を見つめる案山子目はのの字196かなかなと恋の詩詠む夕かなかな
197無住寺の朽ちたる屋根や昼の虫198仏飯の湯気立ち昇る今年米
199石垣のしるき山城葛かをる200屏風絵に赤を沈めて烏瓜
201電線に燕帰つてしまふとか202紬織る筬の調べや萩の花
203クーラーの使用が恐怖光熱費204秋の蚊に刺され故郷を懐かしむ
205見るべしと言ふ映画観に行く野分かな206一人来て花野のひとりになりにけり
207軽々と国境越えし雁渡る208やんはりと断る誘ひ秋扇
209曼珠沙華はなやぎの赤毒々し210もう聞けぬ隣の寝息門火焚く
211菊正をもう半分…志ん生忌212父百で全う人生白露かな
213ペダル踏む少女を包む秋夕焼け214ビルの間に行き交う人や穴まどい
215人形の青い目にある秋思かな216秋の空掌の土払う音ひびく
217錦木の晴れ着まといし鎮守様218朝市の声彼方より秋の浜
219路地裏にもるる読経や秋簾220ぎんなんや踏まれ実を吐く匂い撒く
221日差しさす空き家の庭に柘榴かな222帰燕の空知らず指さす童女かな
223これからは風吹き抜けて身に入むや224海峡をくぐつて来ても雨月なり
225落蝉や脚仰向けで風を漕ぐ226秋風や香りを乗せし鉋屑
227紅葉舞う君は冬への舞扇228ローイング舵手も漕手も汗まみれ
229頑なに南瓜嫌ひし戦中派230墓参「天保」刻字の彫深し
231弟の嫁より届く実家の柿232灯火親し赤ペンのアンダーライン
233秋の夕「にいにい」を追ふペダル音234油蝉鳴いて大樹を焦がしけり
235赤白黄数多群生曼殊沙華236冷やかや琥珀に透ける虫の翅
237同胞のそれぞれの老い草の花238夫と子とビンドウ仕掛け秋の水
239坂を這ふ公団のうへ碇星240袖無しも臍出しも居り秋高し
241秋木立森の奥よりチェ―ンソウ242鈴虫や皇子の草庵跡とあり
243横顔の子規の写真や秋思濃き244大利根の渡しわたれば曼殊沙華
245点滴の続きし看取り居待月246御籤引く老母の背に散る柳
247裏木戸でシャンとお迎え彼岸花248満月やスキップする児の身の軽さ
249ふるさとへ越してゆく友吾亦紅250珍客のこおろぎ宵のバスルーム
251雲の龍泳がしている秋の空252秋涼しマーブルチョコを振ればなほ
253菊人形声をかければうなづきぬ254鶺鴒よ吾を人たらしむるハグよ
255稲刈りや学習田のはしゃぎ声256空高しホームより見ゆ水平線
257黒よりも深き色して葡萄成る258花芒地割れあらはに放棄の田
259思ひ出はみな濁りなし新酒の夜260秋場所の柝の音高き初日かな
261雲高く置き黄金の稲架の列262涼風やフォスターの歌口ずさむ
263秋の昼白帆過ぎ行く逗子の海264真夜の杜秋風鈴の幽かなり
〔選句方法〕

下の〔草ネット投句〕ボタンから送信するようにお願い致します。
「選句」を選び、兼題より2句、自由題より4句の計6句を選択し、
都道府県名・氏名(俳号可)を明記の上、「送信する」ボタンを
押してください。

選句〆切:10月22日(水)、発表は10月25日(土)に行います。

なお、一部の漢字はネット上では正しく表記されず、
「?」で示されますので、読みを入れてあります。
        
8月句会結果発表
兼題の部(蜩)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
6蜩や男坂より奥の院8栃木県垣内孝雄
28かなかなや遠き旅路を妻ときて8東京都吉田いつし
21蜩を一番風呂に聴いてをり7茨城県申 女
55蜩や走り根多き城の跡7宮崎県黒木寛史
7かなかなや荒んで久し父祖の畑7大分県輝 久
8かなかなの他に声なし御陵径7愛媛県海 猫
41蜩や飛鳥に残る朱の壁画7神奈川県ドラゴン
48蜩や盤上に初手響きをり7神奈川県風 神
62蜩の止みて夜能の強き笛7岩手県素 風
27蜩や人寄せつけぬ奥の院6広島県山野啓子
35ひぐらしや夕餉の早き山の宿5神奈川県ひろし
13かなかなや寝落ちした子の背の重み5岡山県原 洋一
16ひぐらしを聞いて山家の暮れにけり4兵庫県松下孝裕
18ふつと止むかなかなしぐれ慰霊の碑4神奈川県みちを
79蜩や今年も行けぬ父母の墓4千葉県美 保
74蜩や母の背に聞く子守歌3滋賀県原茂幸
29蜩に暮れ行く空や過疎の村3滋賀県幸 亀
37ひぐらしや一期一会の足湯かな3埼玉県桜 子
51蜩や森に言霊生れをり3静岡県えいちゃん
40蜩や極楽寺坂切通し2神奈川県ひろ志
4蜩の声の溶けゆく鳰の海2石川県翡翠工房
11蜩の大音響にたじろぎぬ2神奈川県たかほ
14蜩や縁側ありし日のことを2京都府花 子
19蜩や「ただいま」の声にかき消され2大阪府辻本四季鳥
22蜩や比叡山にも日の名残り2愛知県コタロー
25蜩や家継ぐ話避けられて2大分県牧野桂一
32ひぐらしや土偶の眠る北大地2大阪府おくむらかよん
33蜩や1冊の本捨てあぐね2神奈川県ゆりみ
34初デートかなかなしぐれかしましく2神奈川県毬 栗
42かなかなを天蓋として今朝の宿2三重県déraciné
49蜩や地下に竪穴住居群2愛知県み う
58蜩や母校をちぎる解体機2神奈川県神谷たくみ
59蜩の風は木戸より浄土より2大阪府椋本望生
61蜩やそろそろ夕餉の支度など2神奈川県とん子
67かなかなの声涌き出づる松林2千葉県須藤カズ子
68蜩や母が聞き取る父の声2栃木県北原八重子
87蜩の山門読経始まりぬ2大阪府日野かぐや
2蜩や歩み来し日々偲ばるる1千葉県えだまめ
10ただ今に蜩鳴いて迎へあり1滋賀県百合乃
12夕ひぐらし家訓「質素」の煮炊かな1岐阜県近藤周三
15蜩や一人立寄るテラス席1千葉県こごめ草
23初蜩昨日にはなき哀しさよ1兵庫県峰 乱里
24蜩やたつた一日の小公園1東京都小石日和
26産土の宵の蜩盛んなる1大阪府順 紀
39かなかなや手押し刀自行く裏小路1栃木県北あかり
44蜩や砂場に残るヘルメット1東京都水谷博吉
47蜩や冥界の戸の軋む音1埼玉県夜 舟
53長閑なり川の流れと蜩と1埼玉県イレーネ
54蜩やこんな夜中にひとしきり1北海道水野幸子
60かなかなや父とも母とももう会えず1愛媛県牛太郎
65蜩のか細し声に暮るる村1千葉県光雲2
69かなかなや一歯生えたる吾子連れて1兵庫県紀州鰹節
70蜩や四方八方空き家増え1兵庫県ケイト
72蜩に耳すましゐる師弟かな1東京都浩 平
73鍬洗ふ背へ語りかく蜩の音1滋賀県鶴亀鈍
80かなかなの谷戸に黄昏さそふかな1神奈川県秋山由美子
83蜩や旅の終わりの道後の湯1鹿児島県青 猫
88蜩やうからつどひて読経す1広島県一 九
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
181亡き妻に叱られに行く墓参15大阪府森 佳月
191槍投げの槍を染めゆく大夕焼10神奈川県たかほ
100秋の夜やラフマニノフはまだ序奏10滋賀県百合乃
104枝豆やポンと飛び出す夫の愚痴9京都府花 子
103終戦忌忘れぬ鶴の折り手順9岡山県原 洋一
217戦なき八十年の盆の月8埼玉県桜 子
91ライバルはすこし優秀青林檎8大阪府森 佳月
120片蔭を拾いて母の車椅子8神奈川県阿部文彦
262ゆるゆるとすべる地殻や夏布団7山形県柴五郎
97伏す母の寝入るにそつと置く団扇7大分県輝 久
116住職も祢宜も輪の中盆踊7大阪府順 紀
226正座して白湯のむ八月十五日6兵庫県毬 藻
105廃校の窓は板張り雲の峰6千葉県こごめ草
141頑な心は溶けず青蜜柑6静岡県えいちゃん
149ここよりは縦一列に萩の寺6大阪府椋本望生
255新稲架の匂ふ夜明けを迎へけり6神奈川県りゅう
112軍艦の如く居座る雲の峰5愛知県コタロー
139銀漢や砂漠に眠る退役機5愛知県み う
150灯台へ長き突堤夏の月4愛媛県牛太郎
99桃ばかり実りぬこども居ぬ村に4静岡県指田悠志
121初盆や若住職の声の張り4埼玉県豊 楽
128蝉生る星のあかりに照らされて4神奈川県みぃすてぃ
146軍服の遺影も褪せし終戦日4岐阜県俳ネン
158ばつた追ふ片手を母につながれて4栃木県北原八重子
161老いてなお未知の言葉に遇う新涼4奈良県魚楽子
163魂の影残して踊る風の盆4滋賀県鶴亀鈍
166魚河岸の午后の静寂土用凪4埼玉県千葉 美知子
192旅の一座まづ会場の草を引く4岐阜県近藤周三
210少年が一輪捧ぐ広島忌4神奈川県阿部文彦
222夕端居爺は怖々赤子抱き4三重県déraciné
223八月や六日九日十五日4神奈川県横坂 泰
232朝焼や入江に響く櫂の音4愛知県牧 子
260蔦の葉のはや色づける港町3神奈川県秋山由美子
98海に立つ大暑の焰鳴門橋3愛媛県海 猫
107亡き人の手足もあらん踊の輪3京都府せいち
114夕焼けは好きかと問ひし人でした3東京都小石日和
125昭和遠し大食堂のソーダ水3神奈川県ひろし
133洋々たる未来西瓜の種とばし3神奈川県横坂 泰
145返照のあまたの羽や秋茜3宮崎県黒木寛史
148家中が猫の遊び場秋日和3神奈川県神谷たくみ
156懐に雀百羽の大公孫樹3北海道篤 道
173赤蜻蛉音戸の渡し潮速し3鹿児島県青 猫
175長き夜を円空仏と語り合ふ3静岡県渡邉春生
193持てばすぐ走り出す子のねこじやらし2岡山県原 洋一
96網戸よりなごし風あり蛍の夜2栃木県垣内孝雄
101日直の教師微睡む夏校舎2神奈川県たかほ
108竿灯や代々つなぐしなり技2神奈川県みちを
111美容院出て新涼の風髪に2茨城県申 女
115時鳥人の噂をまき散らす2大分県牧野桂一
117母のものあれこれ捨てて夏日落つ2広島県山野啓子
118足早の世や懐メロを聴く夜長2東京都吉田いつし
119爽やかに敗者求むる握手かな2滋賀県幸 亀
124さりげない涼しい会釈誰だつけ2神奈川県毬 栗
132留石の細縄すくと今朝の秋2三重県déraciné
138ひと言にざはめく心萩の花2神奈川県風 神
157思はざる人の来りて盂蘭盆会2千葉県須藤カズ子
159一病を連れ去るやうに秋の風2兵庫県紀州鰹節
162疲れたる蜻蛉は草に揺れゐたり2東京都浩 平
177抱っこされちっちゃな合掌地蔵盆2大阪府日野かぐや
180月光や指文字の影浮かぶ浜2山梨県辻 基倫子
182独り酌む音のみ聞こゆ遠花火2千葉県えだまめ
187秋立つや厨の音の近き朝2大分県輝 久
197もう秋と思へば秋の風が来る2京都府せいち
201猫塚に寝そべる猫や秋暑し2茨城県申 女
205露けしや異教の墓の十字塔2大分県牧野桂一
207独り居の長き夕餉や缶ビール2広島県山野啓子
239朝顔を数へて快癒待つベッド2大阪府椋本望生
241初秋や眉ほっそりと颯爽と2神奈川県とん子
246秋の陽の染み入り山の深さかな2北海道篤 道
247寄り事の残る疲れに秋暑し2千葉県須藤カズ子
250めらめらとカンナ廃線沿いに揺れ2兵庫県ケイト
253乾坤の風整へて雁の棹2滋賀県鶴亀鈍
95太々と天塩の蛇行秋の空1神奈川県遠野アルヒ
102草笛をひゆうと子役の忌を修す1岐阜県近藤周三
109朝顔やオ―シャンブルー香る海1大阪府辻本四季鳥
123蝉の声焼き消していく照り返し1神奈川県ゆりみ
134迎え火や動画に残る祖母の笑み1東京都水谷博吉
135老いてなお病と老とに夏終わる1千葉県山 月
136部屋中を濡らしはじめる虫の声1兵庫県毬 藻
137風ごとに向きそれぞれの猫じゃらし1埼玉県夜 舟
142化粧水頬にさらりと涼新た1愛知県牧 子
151秋暑し犬は框に顎乗せて1神奈川県とん子
155犬の遠吠え天の川氾濫す1千葉県光雲2
165秋夕焼いっぱいに入れ庭手入れ1神奈川県りゅう
167瞳無き自画像見入る残暑かな1千葉県文 武
168戦争を知らぬ蜩平和惚け1東京都はんぽ
170いつの間にか夜の静寂の虫の声1神奈川県秋山由美子
172夏濤やまだ背の低き松林1山形県柴五郎
176夜降ちにたゆたふ孤舟遠花火1大分県晴田そわか
185御堂には仏万体ななかまど1神奈川県遠野アルヒ
186月涼し家路をいそぐ街路かな1栃木県垣内孝雄
190月天心ゆるゆる過ぎる宿場町1滋賀県百合乃
194ごきぶりや虫の苦手な娘婿1京都府花 子
195月の雨人知れず言うケセラセラ1千葉県こごめ草
198モノクロのドラマ今宵も終戦忌1神奈川県みちを
209新涼の渚囁くさざれ石1滋賀県幸 亀
219軽トラの雷雨に拾う手押しかな1栃木県北あかり
221新涼や優先席を譲られて1神奈川県ドラゴン
227心頭を滅却させて南瓜切る1埼玉県夜 舟
229ドーム錆びまた八月の熱波かな1愛知県み う
230朝顔のロイヤルブルー今開かん1静岡県彗 星
236一団の八月大名国際線1岐阜県俳ネン
237山寺の小さき門や秋日傘1千葉県あけび
242夕蝉や暑熱吸い取る山の襞1岩手県素 風
243TVショップ声裏返り秋暑し1神奈川県岡崎梗舟
244稲穂刈る感謝の思い鎌に込め1兵庫県三木信雄
251円陣の詰まりがちなる盆踊り1奈良県魚楽子
252踏みさうになつて落蝉またぎけり1東京都浩 平
263夏の果て海ただ海の予讃線1鹿児島県青 猫
264カレンダーめくりて終わる夏休み1茨城県西川富美子
270狛犬の阿から吽へと素風かな1山梨県辻 基倫子
八月句会 選評 選者:草の花俳句会 同人会 服部 満

≪兼題の部:蜩≫

★蜩を一番風呂に聴いてをり

 日が傾きかけた頃、蜩の音を聞きながら湯舟に浸かっている様子が目に浮かびます。蜩が鳴くのだから街中で
はない。周囲が木立に囲まれている山間なのかも知れない。「一番風呂」を強調しても、昔のような大家族の家
長とも思えない。案外、独居や老夫婦だけの一番かも知れない。蜩のカナカナカナという美しく涼しげながら、
どこか哀切な感じが句によく働いています。

◎蜩や男坂より奥の院

 蜩は他の蝉と違って人家近くにはやってこない。深い森が好きだ。山の上などにある奥の院がふさわしい。奥
の院への参道で、傾斜が急な男坂を登る作者。男坂と言うだけに深い木立に覆われているのでしょう。薄暗く涼
しい山中では昼も鳴いている。作者は美しい蜩の声に励まされながら、奥の院まで到達したのでしょう。

◎蜩や走り根多き城の跡

 山城の跡でしょうか。土塁や空堀跡くらいは残っているかも知れないが、今では木々が大木に育って地表を太
い根っこが覆っている。こんな既に森と化したような城跡に、蜩が鳴いています。遠の昔に廃城となった城跡に、
蜩のどこか淋しげな声が効果的であり、季語がよく働いています。

≪自由題の部≫

★槍投げの槍を染めゆく大夕焼

 西空が真っ赤に染まった雄大な空間を飛んで行く槍、太陽光を受けて同じく金色に輝いている。大夕焼に槍投
げの槍という動きのある物を配したところが印象的です。高いスタンドに囲まれた立派な競技場ではなく、夕焼
けに染まった大空を見渡せるローカルで小規模な競技場が連想される。「大夕焼」にはこうしたフィールドこそ
がふさわしいでしょう。

◎枝豆やポンと飛び出す夫の愚痴

 夫婦で晩酌にビールを飲み交わしている光景でしょうか。もちろんおつまみは枝豆。ふと夫の口から漏れた愚
痴。「ポンと飛び出す」が言い得て妙。枝豆を莢から口の中へポンと弾き出す感じそのままです。愚痴を聞いて
やりながらも、湿った暗い雰囲気がなく、笑い飛ばすような明るさを感じます。愚痴をこぼした夫も同じかも知
れません。

◎ゆるゆるとすべる地殻や夏蒲団

 午睡の景からの発想でしょうか。今年のように暑いと、エアコンの効いた部屋でも掛けていた夏蒲団が、気が
つくといつの間にか体からずり落ちている。そんな体験から思い当たったのがスロースリップ、いわゆるゆっく
りすぺり。体からずれ落ちる夏蒲団から、ゆっくりすべりとも呼ばれる地殻変動へ飛躍・転換した作者の感性に
驚きます。


        
戻る