6月句会結果発表
兼題の部(翡翠)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
68狩終へて翡翠襖絵に戻る10兵庫県峰 乱里
37翡翠や少女はバンジージャンプする8埼玉県立山 嶺
38翡翠のV字飛翔や逆さ富士6静岡県有希
104翡翠や神域に水出づる岩5静岡県指田悠志
99翡翠に混みあっている太鼓橋5神奈川県ほたか
94翡翠の翅広げたる杭の先5埼玉県まこ
11かわせみの声澄み透り夜のほどろ5愛知県丸吉
16翡翠の翔つ一瞬の白昼夢5神奈川県ひろし
29翡翠は渓流の精水の精5静岡県浜子
8翡翠や残像光り水に入る4大阪府森 佳月
14翡翠の一矢水面を碧く染め4愛知県コタロー
22翡翠の翅広げたる沼の杭4埼玉県まこ
39廃鉱を見翡翠に逢ふ旅心4栃木県荒川三歩
69香港といふ翡翠は黙しけり4千葉県蘆空
80翡翠の青の軌道の誤らず4東京都一八
97翡翠は光の粒となりて飛ぶ4滋賀県和久
2翡翠の光の撥ねて瀬を渡る3愛知県草木
25動くたび翡翠を追ふシャッター音3愛知県淳和
43連写して撮るや翡翠の離れ技3千葉県光雲2
1閃光となりて翡翠水へさす3栃木県垣内孝雄
17翡翠や濡れ羽の水の輝ける3千葉県玉井令子
21翡翠の一太刀浴びて淵暗し3東京都小石日和
26翡翠の一閃水面にぎやかす3静岡県
32翡翠やここ四万十の源流に3徳島県西 教子
41翡翠や山気を袈裟に切り裂いて3広島県山野啓子
42翡翠や圧倒的な静と動3奈良県陶生
54翡翠の留まりし杭の佳き高さ3大阪府光吉元昭
57翡翠に会い一日の幸となす3千葉県須藤カズコ
61翡翠や川の品格ととのへり3神奈川県毬栗
71翡翠や深淵狙ふホバリング3兵庫県こうせい
82翡翠や微動だにせず時を待つ3埼玉県イレーネ
6翡翠の尾羽浮かせる面構へ2北海道みなと
13翡翠や川面を走るアスリート2静岡県かいこ
23翡翠を待つときめきのためにけふ2熊本県蕗の薹
30翡翠の光芒残るしぶきかな2東京都水谷博吉
34翡翠の光芒一閃池の面2静岡県彗星
40きょうろろや向こうの空に白い雲2千葉県あけび庵
45翡翠の獲物仕損じ水騒ぐ2岐阜県色即是句
46翡翠の光となりて水乱る2福岡県宮内和彦
52翡翠やまぶしき色を残し去り2神奈川県しゅう
56翡翠の一閃までの長さかな2千葉県柳風
60翡翠の飛びざま「レ」の字漁れり2岐阜県近藤周三
62翡翠の来るたび黙極めけり2東京都藤田雅明
78翡翠の青き飛行や水揺るる2茨城県申女
93翡翠の森から森へ雨催い2沖縄県繭子
96翡翠や瑠璃思はせし地球星2茨城県西川富美子
103翡翠や魚を逸して水飛沫2兵庫県大谷如水
3射竦めたるや翡翠の入射角1三重県déraciné
7川蝉に魅せられ通ふ太公望1埼玉県郁文
9川蝉や渓流飛翔ほしいまま1埼玉県祥風
20停飛す翡翠黄ろき胸見せて1静岡県雪子
28翡翠のしぶきに目覚む隠沼1東京都カツミ
35翡翠の翔つ一閃にシャッター音1神奈川県ドラゴン
36翡翠や嘴で水面を打ち割って1京都府しげお
44目の端にかわせみ刹那青き風1埼玉県夜舟
47翡翠や使い古しの赤い靴1三重県八郷
50美しき狩人となり翡翠かな1茨城県逸光
55源流を翡翠の色涼やかに1埼玉県グレイス
58翡翠凝視屈折率を演繹す1和歌山県茫々
59翡翠の迷ひなきこの水しぶき1兵庫県鈍愚狸
63翡翠や枝を揺してダイビング1兵庫県やよひ
64翡翠の飛翔眼裏に残りけり1神奈川県風神
77カワセミの鋭く川に突き刺さり1東京都一寛
81翡翠のその一瞬をと息を詰め1神奈川県ひろちゃん
88翡翠の光り飛びたる川原かな1静岡県さくら
92単衣帯背でかわせみの瑠璃ひかる1静岡県みちのっ子
100翡翠の記憶超スローモーション1大阪府椋本望生
102翡翠の水切り遊び神の池1静岡県こいちゃん
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
154愚痴を聞き相槌を打ち心太12茨城県逸光
130百歳は句読点なり雲の峰11静岡県
278己が身を日時計として草むしり11三重県正耕
164晩学や大言海に汗落し9岐阜県近藤周三
139涼風や筆走りたる和便箋8神奈川県ドラゴン
183裏窓は風の抜けみち冷奴8神奈川県ひろ志
232出漁の夫と揃ひの夏帽子7愛知県茶ぼくさ
155標本のピンの冷たさ夏の蝶7群馬県志楽
168緑陰の風を紡ぎて太極拳7神奈川県風神
201柏手の木霊するなり山開き6滋賀県和久
134摑み合うままに流されあめんぼう6東京都水谷博吉
187丸められ抱かれ蹴られ夏布団6福岡県みつぐ
270待合室動くは金魚ばかりなり6東京都藤田雅明
121白南風や海を飛ぶパラセーリング5千葉県玉井令子
149地下街の出口に開く梅雨の傘5岐阜県色即是句
312びい玉の景色さかさま風薫る5静岡県指田悠志
135まいまいや吾もあせらず日々を行く5埼玉県桜子
15070も今は壮年夏帽子5福岡県宮内和彦
161土手上は雲湧くところ行々子5千葉県須藤カズコ
267一日を風ばかり見て青芒5兵庫県鈍愚狸
280傍にいるだけの看取りや梅雨深し5山口県ももこ
299お似合いね恥じらう老母の夏帽子5千葉県広瀬美保
274風薫る小脇に挟む文庫本4神奈川県みぃすてぃ
105紺浴衣ありてなさそな力瘤4栃木県垣内孝雄
109着信の無き一日や梅雨寒し4千葉県えだまめ
126竹皮を脱ぎ颯爽と風に立ち4埼玉県まこ
127天金のうっすら残る書を曝す4熊本県蕗の薹
146今はもう邪魔者にされ余苗4奈良県陶生
196密は罪紫陽花はただ咲いただけ4静岡県みちのっ子
205わが影は一尺なれや夏至正午4広島県一九
282書いたとて出せぬ文なり黄雀風4福岡県蛍川
288空蝉や朽ちし卒塔婆の擦れ文字4東京都一八
294風一陣水面に舞ひぬ竹落葉4奈良県たにむら
296つくばひに影映しけり夏の蝶4静岡県さくら
265産声の腐草蛍となる夜かな3千葉県須藤カズコ
231隠沼の主か野太き蟇の声3熊本県蕗の薹
106薔薇の門くぐりて来る婚の客3愛知県草木
141尾道の坂道険し芙美子の忌3埼玉県立山 嶺
142薔薇の門ギターの男屈み来ぬ3静岡県有希
144毒だみや話たきこと妣に有り3千葉県あけび庵
163淋しさはだうだう巡り鉄線花3兵庫県鈍愚狸
175鬼瓦睨み利かすや雲の峰3兵庫県こうせい
176三歳児くりくり坊主に夏来たる3山口県ももこ
178草笛の少年老いていたりけり3福岡県蛍川
242鮎型の蒼き箸置鮎の宿3静岡県彗星
271半世紀昭和に生きてバナナ好き3兵庫県やよひ
276少年をときめかせたる蚊帳の寝間3兵庫県峰 乱里
284手習いの茶碗傾いで瓜の花3兵庫県ケイト
290「4時起きね」児らの約束カブトムシ3埼玉県イレーネ
107ひとり聴くマイルス・デイビス夏の月2三重県déraciné
108山法師苞の白さに雨の粒2千葉県山月
110夕焼や祖父の雪駄は揃へられ2北海道みなと
118玉虫の骸に残る光かな2愛知県コタロー
124梅雨の海横一文字に寄せる波2静岡県雪子
125バス遅延人溜まりくる薄暑かな2東京都小石日和
133梅雨空の海は鈍色出漁す2静岡県浜子
137おほらかに天に開きて泰山木2静岡県えいちゃん
138駄々捏ねて左捻じれの文字摺草2静岡県彗星
147まなじりに残る痛さやかき氷2千葉県光雲2
151吾が杖の先にくぐれる茅の輪かな2三重県八郷
157大谷の夢は吾の夢二重虹2奈良県よっこ
160青空をきはめるひと日砂日傘2千葉県柳風
172のしつけてくれてやるはと髪洗ふ2兵庫県峰 乱里
173あぢさゐや隣の犬の長あくび2千葉県蘆空
186別腹と餡蜜追加母と姉2埼玉県イレーネ
195朝風にネジバナソロのピルエット2千葉県広瀬美保
211解のなきひとり問答髪洗ふ2三重県déraciné
219家康忌生家の見ゆる矢作川2愛知県丸吉
243透きし身の海の色なる海月かな2神奈川県ドラゴン
244万緑や一直線に打球音2京都府しげお
245「月下美人今夜咲くよ」と母の声2埼玉県立山 嶺
250実梅もぐ白きかいなの坊の妻2奈良県陶生
257紫陽花の藍に染まりて空もまた2東京都藤方昭男
269うるわしきかな一対のさくらんぼ2神奈川県毬栗
273湿原の揺るるさざ波エゾキスゲ2北海道小幸
303はしやぐ子と黙す子とあり蛍の夜2静岡県春生
305すぐ飽きるひとり遊びの水鉄砲2滋賀県和久
306島の民宿3尺の道抜けて夏2愛知県秋ひろ
315田植え機の泥にまみれて朝日あび2栃木県あきら
112カーテンもだらりと垂れて梅雨の空1大阪府森 佳月
114坊内を流るる小川半夏生1京都府せいち
116底辺の貧しき暮らし浮き葉かな1長崎県みんと
120転びさう土手の斜面を草刈機1神奈川県ひろし
122畦切りの水隣田へ夏の空1宮崎県黒木寛史
123梅雨晴れ間着物の着付け練習す1京都府花子
143一年の折り目ぞわれに夏至大事1栃木県荒川三歩
145掘りたての筍褒めて持たさるる1広島県山野啓子
148飛び飛びの俳句手帳や梅雨の入り1埼玉県夜舟
152紫陽花に染まり接種の熱さます1神奈川県横坂 泰
153十薬の白き花咲く闇の中1東京都藤方昭男
156江戸つ子の粋に着こなす初浴衣1神奈川県しゅう
158てふてふのなつくしぐさやたなごころ1大阪府光吉元昭
162姫女苑中央分離帯夕日1和歌山県茫々
165蛍火や背(せな)の児すでに夢の中1神奈川県毬栗
169翡翠や森は静寂きざみをり1北海道小幸
171勝ちとつた五輪代表聖火炎ゆ1千葉県たまいれいこ
177五月闇止まったままのかけ時計1愛知県さと
188たこ焼きの中元届く昼下がり1千葉県相良 華
191梅雨空に姿を隠す信貴生駒1大阪府レイコ
192壺に挿す紫陽花雨の匂ひけり1静岡県さくら
202低空を生き急ぎいる夏の蝶1愛知県秋ひろ
206鬼百合咲く丘より眺む地獄谷1静岡県こいちゃん
207雨蛙ひねもす羅漢とにらめつこ1兵庫県大谷如水
208鍋磨くとき短夜を感じけり1静岡県指田悠志
209夕焼の路地にちらほら乳母車1栃木県垣内孝雄
210藤房の下に水輪のまたひとつ1愛知県草木
216巣ごもりや庭の紫陽花色移り1大阪府森 佳月
217左右より虹生まれ出で相まみゆ1埼玉県祥風
221黒南風に押されペダルを離しけり1静岡県かいこ
226滴りて池に溶けゆく岩清水1宮崎県黒木寛史
227父の日や抹茶ケーキを焼く娘1京都府花子
230観音の瓔珞きらり白日傘1埼玉県まこ
234母親の浴衣を借りて髪あげて1静岡県
236ゆたかさや空豆飯のあかきいろ1東京都カツミ
237寺領いま青水無月のその中に1静岡県浜子
238梅雨に入る薬の増えし処方箋1東京都水谷博吉
240閼伽桶の水こぼすまじ白日傘1徳島県西 教子
246花藻川家の数だけ小橋架く1静岡県有希
247空母出航うそぶく月と海月かな1栃木県荒川三歩
248梅雨の月窓に明かりの影は人1千葉県あけび庵
251伝言を草書で綴る蛍の夜1千葉県光雲2
256禿頭のさらけ出したき夏帽子1神奈川県横坂 泰
259上州の風の風景麦の秋1群馬県志楽
260紫の雫落として七変化1神奈川県しゅう
264洋風の三階建てや山法師1千葉県柳風
272五月雨や書房の裏に古時計1神奈川県風神
275ワクチンの接種済みたり昼寝覚1千葉県たまいれいこ
283無人駅音無き世へに蝉しぐれ1神奈川県阿部文彦
286愚痴を聞く冷やし中華を食べながら1茨城県申女
287梅雨晴や冷凍ピザの焼きあがる1神奈川県ひろ志
291合鴨の子らの散らばる植田かな1福岡県みつぐ
295青柿やあの道この路仏みち1大阪府レイコ
300バス発車香水清かに残る席1静岡県みちのっ子
304サングラス微笑み返しさりげなく1茨城県西川富美子
307青年の西瓜を食らふ立ち姿1神奈川県ほたか
308南瓜咲く雌花あらうが無からうが1大阪府椋本望生
309石のへに押花のごと夏椿1広島県一九
選評 選者:草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:翡翠》

★翡翠や神域に水出づる岩

多くの作者は、翡翠がどうしたこうしたという、その生態を叙そうとしたために、類想に囚われてしまったよう
です。そうした説明は歳時記にほとんど記されています。そうした生態について一切省略したのが掲句。
翡翠の行動はすべて折り込み済みなのです。あとは現れる場所を印象的に切り取って見せればよい。その後は、
読者の想像力が映像を完成させてくれるはずです。「や」の切れも効果的でした。うまい句です。

◎翡翠の光の撥ねて瀬を渡る

「光の撥ねて」がこの句の眼目でしょう。しかし、その程度で表現を押さえられたので採れる句になりました。
どうすれば類想感を払拭できるかが今後の課題になるでしょう。季語の説明と受け取られないような工夫が必要
になります。

◎翡翠に混みあっている太鼓橋

まるで翡翠が見せ物のようですね。しかし、こうした景はあちこちで見られます。翡翠が良く来る、などという
噂が広まると、いつの間にか多くのアマチュア・カメラマンが我が物顔に場所を占拠しはじめます。
掲句では、その場所が太鼓橋。カメラも人も「込みあっている」ようですね。

《自由題》

★白南風や海を飛ぶパラセーリング

梅雨が明け、スカッとするような青空。そして、南東の風が心地よく吹いている。そんな開放的な海の景。モー
ターボートに引っ張られながらのパラセーリング。「海を飛ぶ」はまさにそうなのでしょう。爽快感とともに、
幾つかのカラフルなパラシュートが印象的に見えてきます。

◎柏手の木霊するなり山開き

「山開き」も一種の神事。とりわけ霊山に対する信仰は強く、禁を解いていただくことで入山(登山)が許され
ることとなるのです。そうした神事での「柏手」。山の神の声のように返る木霊。厳かな気分が心地よい句です。

◎産声の腐草蛍となる夜かな

難しい季語を使われた。七十二候の一つが「腐草蛍となる」。大暑の初候に当たります。腐った草が蛍に変化する、
と古代中国では考えられていたのです。そんな暑苦しく熱帯夜が続くような夜に、待望の産声が聞こえてきたので
す。そんな一夜のドラマ。蛍ならぬ赤子が生まれた記念の夜なのでした。お祝いに、冷えたビールでも飲みますか。


添削(ランクアップのために)

俳句は、今の一瞬を詠むのに優れた文芸です。それでもたった今通り過ぎてしまった季節のあれこれを惜しむこと
も間々あります。でもそれは昔の事柄か、ついさっきの事柄かによって使う助動詞が異なります。昔であれば「き」
「けり」、ついさっきであれば「つ」「ぬ」「たり」などの助動詞を使い分ける必要があります(現代かな使いは
別ですが)。「き(し)」を使いたくなったら、一旦踏みとどまってみてください。

・停飛す翡翠黄ろき胸見せて → ホバリングの翡翠胸の色を見せ

「停飛」は硬いですね。分かり易い「ホバリング」を使いましょう。また「停飛す」ではここで切れてしまいます。
翡翠に繋げる為には「停飛する」或いは「停飛の」とする必要があります。「黄ろき」も果たして必要でしょうか。
ご検討願います。

・梅雨に入る薬の増えし処方箋 → 梅雨に入る薬増えたる処方箋

いつも指摘させていただきますが、「し」は過去を表す助動詞です。医者からの処方箋に薬の種類がまた増えてし
まったという嘆きですので、ここは完了の助動詞を使うべきところでしょう。その処方箋を持って薬局に行かれる
のでしょうから、「増えたる」です。「し」の病を克服してくださるよう願います。

・つくばひに影映しけり夏の蝶 → つくばひに影映りたる夏の蝶

ここも「けり」という過去の助動詞を使う場所ではありません。しかも終止形ですので、句はここで切れてしまい
ます。影の正体は「夏の蝶」なのではないでしょうか。それならばここは「連体形」で。でも「映し」とは誰の行
為によってなのでしょうか。ここは「映っている」のですから自動詞でなくてはなりませんね。「映りたる」とし
て夏の蝶に繋げましょう。昔ではなく、たった今映った、そして……、という瞬間のニュアンスを読む方が遙かに上
等な句になります。
        
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