12月句会結果発表
兼題の部(湯豆腐)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
68湯豆腐や肩の荷ひとつ下ろしたる7神奈川県りゅう
14湯豆腐や女二人の恋話6千葉県こごめ草
80湯豆腐やほのかに雨の東山6大阪府奥村かよん
22湯豆腐や二百年目の梁の艶6石川県翡翠工房
55一人旅一人湯豆腐南禅寺6茨城県西川富美子
41湯豆腐や初めて掴む主役の座5千葉県光雲2
71湯豆腐を囲む社友の野辺送り5神奈川県梗舟
27湯豆腐や写真に向きて一人鍋5兵庫県藤島三郎
48湯豆腐の鍋の温みや四畳半5栃木県垣内孝雄
57湯豆腐や母と二人の山の宿5愛知県牧子
43湯豆腐をつつきよもやま話など4神奈川県ドラゴン
63湯豆腐や相槌を打つ聞き上手4神奈川県みぃすてぃ
2湯豆腐の一詩記せり箸袋4大分県牧野桂一
32湯豆腐の揺らぎが解かす蟠り4滋賀県鶴亀鈍
36子の悩み聞く湯豆腐の箸止めて4岡山県原 洋一
6湯豆腐や馬刺も付いて馬籠宿3滋賀県百合乃
8湯豆腐や指のささくれ父ゆずり3大分県輝久
10湯豆腐のゆげまで美味き左遷の地3岐阜県近藤周三
16湯豆腐や島は浪風やや高く3東京都浦上三九郎
25湯豆腐に湯加減如何と聞いてみる3埼玉県夜舟
31湯豆腐に打ち解け本音話しけり3滋賀県幸亀
45湯豆腐や土鍋の底に昆布の屑3宮崎県黒木 寛史
54湯豆腐や亡き母の分ほど残る3兵庫県丸井ねこ
58湯豆腐の湯気に隠るる逢瀬の夜3兵庫県紀州鰹節
59湯豆腐の湯気につつまる国訛り3神奈川県毬栗
79湯豆腐や無責任にも生きられず3秋田県不知飛鳥
1湯豆腐や一日葬も悪くない2千葉県えだまめ
12沸点に湯豆腐の蓋暴れをり2岐阜県俳ネン
13湯豆腐や京の町屋の夕餉かな2埼玉県桜子
15湯豆腐の揺れて食べごろ君と僕2京都府せいち
26湯豆腐や女語りに嘘もあり2千葉県こごめ草
29湯豆腐を掬う女将や手のしなる2北海道無才
37湯豆腐のふつふつふつと待ちぼうけ2三重県déraciné
38暖簾には文政とあり湯豆腐屋2神奈川県ひろし
47湯豆腐の愚痴聴き逃す老眼鏡2大阪府椋本望生
60湯豆腐や話のネタも三周目2兵庫県ケイト
82湯豆腐の湯気の満ちゆくワンルーム2大分県晴田そわか
7湯豆腐の湯気に家族の元気あり1愛媛県海猫
17マドンナと湯豆腐路地の縄のれん1新潟県しーしー
18湯豆腐の似合ふ齢や六畳間1広島県山野啓子
20湯豆腐を掬ひ眼鏡の曇りをり1静岡県えいちゃん
30湯豆腐や乾杯たまに下戸夫婦1京都府花子
33白無垢の湯豆腐悲しすぎる年1静岡県指田悠志
34湯豆腐の湯気の向かふに見る笑顔1埼玉県イレーネ
39湯豆腐や一緒に飲み込む愚痴二つ1大阪府辻本四季鳥
40話すことなくて湯豆腐父子かな1東京都小石日和
44湯豆腐や子らの巣立ちて小鍋買う1東京都水谷博吉
46温泉の湯豆腐雪のごとく溶け1神奈川県風神
51湯豆腐に併せすすめる地酒かな1神奈川県ひろ志
52湯豆腐やぶつくさ続く墓終い1滋賀県原茂幸
56湯豆腐の湯気の向こうに京偲ぶ1千葉県山月
62カウンター席の湯豆腐誰の分1東京都浩 平
65湯豆腐や湯気も笑声も味のうち1千葉県文武
67湯豆腐の湯気の向かふに白き猫1千葉県須藤カズ子
69地酒汲む今宵湯豆腐煮て二人1奈良県魚楽子
70湯豆腐や亡き友囲む夜の宴1大阪府日野かぐや
72湯豆腐やお国言葉の行き交へる1愛知県みう
81湯豆腐の亀裂に箸を慎重に1愛知県のそう
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
176器用とは言へぬ生きざまうるめ焼く11岐阜県近藤周三
130アトリエは母乳の匂ひ冬の薔薇11大阪府椋本望生
202小銭ばかり溜まる財布や十二月10岡山県原 洋一
86肩書を無くし生身や冬木立10大阪府森 佳月
116賀状書くたび美しき名と思ふ9静岡県指田悠志
87子の方へおでん泳がす妻の箸9神奈川県たかほ
155冬の水けものの影を置きにけり7愛知県みう
ポインセチア買う片恋を思い切る7千葉県こごめ草
131年忘れ馴染みの店のアジフライ6栃木県垣内孝雄
232冬灯祗園小路のいけず石6神奈川県みちを
94雪のイブじっと立ちたるガードマン6愛知県コタロー
96福引や欲持たぬ子の大当たり6埼玉県桜子
210着ぶくれてはみ出して飲む屋台かな6東京都水谷博吉
220寒卵やさしき人の傷多し6兵庫県丸井ねこ
226鰭酒や妙に気の合う隣り席5兵庫県ケイト
177兵士たち星に十字を切る聖夜5愛知県コタロー
188折鶴の飛び立つ構へ冬の月5石川県翡翠工房
228けふはまたよく綿虫に遇ふ日かな5東京都浩 平
237年の暮孫の討ち入り受けて立つ5神奈川県梗舟
105新聞に切り抜きの窓冬の鵙4石川県翡翠工房
85落城の秘話に日の差す返り花4大分県牧野桂一
95薄墨の棚雲載せて山眠る4岐阜県俳ネン
99雪吊りの縄金色の薄暮かな4東京都浦上三九郎
114誕生を楽しみながら毛糸編む4滋賀県幸亀
115天上に会ひたき人や冬銀河4滋賀県鶴亀鈍
122冬雀散りて戻りてまた群るる4大阪府辻本四季鳥
126我が影を水輪に崩す池の鴨4神奈川県ドラゴン
141闘病と言ふ名の幸や冬銀河4兵庫県紀州鰹節
150ひそやかな寒菊刈りて供花とせり4千葉県須藤カズ子
151ストーブ列車するめ焼きたる津軽弁4神奈川県りゅう
156人づてに知る友の入所や寒椿4神奈川県佐藤けい
198筆先へ力集めて筆初め4滋賀県鶴亀鈍
207ご祝儀をはづみ手〆の酉の市4千葉県光雲2
93目標は動ぜぬ男日記買ふ3岐阜県近藤周三
142魯山人忌タルタルソースたつぷりと3神奈川県毬栗
145食べこぼす母は戌年冬至粥3東京都浩 平
178独り身に迫る年の瀬コップ酒3岐阜県俳ネン
182除雪車を降りずに一人飯を喰う3東京都浦上三九郎
195積もる雪笹しなやかに身に纏い3北海道無才
208湯治場に人を納めて山眠る3神奈川県阿部文彦
211凍空や耐へし生きざま久女の忌3宮崎県黒木 寛史
224去年今年zoomに映る哺乳瓶3兵庫県紀州鰹節
236風花や戻らぬ君のティーカップ3大阪府日野かぐや
238短日や大工道具の忘れ物3愛知県みう
248亡き祖父のサバニの舳先白千鳥3大分県晴田そわか
山眠る互い気付かぬ千日手3千葉県こごめ草
234殻の山見る見るうちに牡蠣割女2神奈川県りゅう
102冬銀河街の暮らしに馴染みをり2静岡県彗星
103数多なる祈りの数よ冬銀河2静岡県えいちゃん
106好きなことだけして暮らす師走かな2茨城県申女
108石炭のバケツ一緒に持った朝2埼玉県夜舟
110路地裏に殺気漂う喧嘩独楽2兵庫県藤島三郎
119去年まで君居た窓辺ポインセチア2岡山県原 洋一
123仕舞湯に柚足し伸ばす五体かな2東京都小石日和
129火の匂ひ煙草に移す囲炉裏かな2神奈川県風神
136海近き無人の駅舎冬夕焼2愛媛県牛太郎
140鐘の音に光の集ふ聖夜かな2愛知県牧子
143生まれ来し子を湯気超しに小豆粥2兵庫県ケイト
146生牡蠣の甘きかほりや濁り酒2神奈川県みぃすてぃ
153石蕗の花松の下枝に触るるほど2大阪府日野かぐや
157子を訪ね知多の魴鮄いただきぬ2北海道小幸
168入船の汽笛三度に蜜柑剥く2大分県牧野桂一
197残業の凍つる靴音闇を打つ2滋賀県幸亀
203連結の蛇腹波うつ初しぐれ2三重県déraciné
206去年今年ついてゆけない流行語2東京都小石日和
241たうたうと瀧音ひびき冬紅葉2広島県一九
243ひとり言柚子の聴いてゐる仕舞風呂2静岡県渡邉春生
84寒卵だけの朝食独居かな1千葉県えだまめ
88凍てる道ペンギン歩き履修かな1北海道北美膝痛
91午後の陽の雫に青き松飾1大分県輝久
92あれこれを定位置へ戻し山眠る1神奈川県遠野アルヒ
101年毎に確と育つや隙間風1広島県山野啓子
104梟や見る吾に腹立てている1栃木県北あかり
111ひと日終え一人リビングユズ茶の香1神奈川県あけみ
120豆炊くや朝一番の古火鉢1三重県déraciné
128熱燗や叙勲の父の酒器一対1宮崎県黒木 寛史
133眠られぬ夜の永きよ外は雪1兵庫県三木信雄
134寒ぶりの厚切りほれと子の口に1神奈川県ひろ志
135湯たんぽのドリブル続く小半時1滋賀県原茂幸
144蹲踞に茶の花二つ置かれあり1大阪府藤井あつこ
148山茶花の小路の先の奥の院1千葉県文武
160川音の高鳴る甲斐の初湯かな1静岡県渡邉春生
161AIはいつでも優し冬の虹1鹿児島県青猫
163白息に塵も埃も輝けり1大阪府奥村かよん
165淑気密つ門まつさらな蝶番1大分県晴田そわか
173一枚の座布団鎮座縁小春1愛媛県海猫
174一杯の熱燗妻の頬を染め1大分県輝久
179枯草の見かけによらぬしたたかさ1埼玉県桜子
185夕暮れはやさしくなりぬ冬の月1静岡県彗星
186思ひきり踏んでみたいな霜柱1静岡県えいちゃん
189初時雨古民家カフェのミルクティー1茨城県申女
199寒き隣国に地獄を生む兵器1静岡県指田悠志
204鑿荒き円空仏よ飛騨は雪1神奈川県ひろし
209小春風返納終へし免許証1神奈川県ドラゴン
217一角を占めてブラごみ年の暮1神奈川県ひろ志
223喧騒の街角灯す社会鍋1愛知県牧子
230人肌や仕事納めの夜の酒1北海道篤道
239光る屋根の向こう小さく冬の海1神奈川県佐藤けい
249凍てる夜の避難所の灯の温し窓1静岡県なな子

【選評】選者:草の花俳句会 同人会 服部 満

≪兼題の部:湯豆腐≫

★湯豆腐や女二人の恋話

 土鍋の湯豆腐でも挟んで女同士が静かに自分の恋を語り、相手の恋を聞くという光景でしょうか。自慢げに嬉々
として語るのではなく、互いにぽつりぽつりと。鍋料理にはいろいろありますが、湯豆腐はあっさりした味が好ま
れる。「湯豆腐」の季語でこの女性二人の年恰好まで想像できます。

◎湯豆腐や初めて掴む主役の座

 どんな分野のどんな主役の座かは分かりませんが、湯豆腐に続く意外な展開に惹かれます。少人数の充足感に充
ちた鍋の席でしょうか。いよいよ脚光を浴びることになった若い役者と言うより、落ち着いた堅実な役者としての
未来を感じさせます。日常的で親しみやすい湯豆腐を斡旋した効果でしょう。

◎湯豆腐をつつきよもやま話など

 湯気を上げる鍋を囲んで世間話にふける景。誰もが体験したことのあることで、取り留めのない話が長々と続く
様子が浮かぴます。手軽な鍋物であっさりした風味が喜ばれる湯豆腐ならではです。しゃべりも気持ちも熱くなる
ことなく、淡々と続き夜が更けてゆく感じです。

≪自由題の部≫                        

★器用とは言へぬ生きざまうるめ焼く

 他人に大きく劣るほど不器用ではないものの、けっして器用な生き方はできなかったな、というつぶやきが聞こ
えて来そうです。生でも塩焼きでも、丸干しを焼いたり揚げたり、蒲焼きなどでも美味しい真鰯に比べ、脂肪分が
少なくたいてい干し物で食べられるのが潤目鰯。「うるめ焼く」が心に沁みます。

◎年忘れ馴染みの店のアジフライ

 気心知れた者たちが集まっての気張らない忘年会。鍋物など一連の料理が出た中で、作者の舌にこたえたのは手
の込んだ料理でなくアジフライ。今年も昼飯の定食などで何度も食べたことがある馴染みの店の馴染みの味。互い
にこの一年の思い出話に花が咲いたことでしょう。

◎小銭ばかり溜まる財布や十二月

 一年最後の月の経済活動のせわしなさを、財布に残る小銭で面白く表現した。現代では電子マネーやスマホでの
決済が普及して、昔ほど現金自体をやり取りする機会は減っていますが、買う品物や店舗によってはそうはいかな
い。新年に向かって揃えるものも多い。気がつくと小銭で財布が膨らんでいます。


        
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