4月句会結果発表
兼題の部(遅日)
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
41病棟の窓それぞれの遅日かな6茨城県申女
28赤錆の匂ふ遅日の町工場4神奈川県ひろし
7遅き日の物憂くわたる鐘の音4埼玉県アポロン
12遅き日を犬に任せる散歩かな4愛知県コタロー
73引く波の彼方に夕日暮遅し3静岡県さくら
29グランドに声まだ残る遅日かな3埼玉県郁文
81パレットの汚れ落して遅日かな3大阪府光吉元昭
83水切りの石よく跳ねる遅日かな3東京都
31縁側に母の小言を聞く日永2兵庫県鈍愚狸
39歌いつつ帰る子供ら暮遅し2神奈川県みぃすてぃ
26亀の背に子亀の乗つてゐる遅日2京都府せいち
2ゆったりと川は流るる遅日かな2広島県林 己紀男
5駄菓子屋の夕のにぎはひ遅日かな2栃木県垣内孝雄
9山里の出湯に残る遅日影2長野県倉田杏
48妻の歩に合わせ散歩の日永かな。2東京都藤方昭男
49遅き日や吾を見送る車椅子2東京都一八
66帰る国ある幸せの遅日かな2千葉県蘆空
82滑り台もう一回と遅日かな2長野県幸々
1茜さす水面まばゆき遅日かな1千葉県えだまめ
3遅き日や塾へと走る子等の声1愛知県草木
4読みづらい芙美子作品遅日かな1滋賀県百合乃
6映画果て遅日の街をひとり行く1大阪府藤岡初尾
8海のもの噛みしめて食む遅日かな1北海道三泊みなと
13月光菩薩庇の翳や春日遅々1和歌山県茫々
14持て余す遅日新聞休刊日1奈良県風来
18暮遅し谷川岳のよく晴れて1千葉県みさえ
20痂をそろり掻き取る遅日かな1福岡県青閑
36公園に子らまだ遊ぶ遅日かな1岐阜県色即是句
40炊飯のスイッチ忘るる遅日かな1岐阜県小太郎
42遅き日を八十路の父は畑にて1広島県新宅 俊
46外出の自粛や遅日持て余す1奈良県陶生
50遅き日に遊び疲れた児の夕餉1埼玉県グレイス
59夕長し雲のかたちをあきもせず1神奈川県横坂 泰
60ゆっくりと地球は回る遅日かな1広島県林 己紀男
61留守番の子らは母待つ遅日かな1三重県穂のか
64夕永しマンモス絶へる系統樹1東京都ひぐらし
65僧戻る背に遅日の入り日かな1兵庫県喜柊
67飛機の音のゆるく流るる遅日かな1千葉県須藤カズコ
70毎日がコロナコロナの遅日かな1千葉県相良 華
74暮遅し憂さも尽きたる独り酒1千葉県珍竹
75健脚の人に追ひつく遅日かな1滋賀県和久
76名も知らぬ鳥の訪れ暮おそし1福岡県蛍川
79シュトラウスに合わせて首ふる遅日かな1千葉県諸行無常
85旬のもの求め遅日の厨事1熊本県蕗の薹
88背番号18打ち込まれ遅日1東京都
自由題の部
作 品 互選 選者選 都道府県 作者
154卓袱台にありし団欒昭和の日7兵庫県喜柊
258ゆく春の長き堤や蕪村の碑4大阪府レイコ
229かけつこのトップは女児よ桃の花4神奈川県風神
101花筏パクリと開く鯉の口4愛知県コタロー
111退職の手にシクラメン忘れ傘4東京都足立智美
118晩春や鐘の音和する東山4埼玉県郁文
121草餅や不要不急の日々を生き4京都府しげお
191野火走る男ら怒号して走る4和歌山県茫々
224独居や目刺の腸のほろ苦し4奈良県陶生
105ことづてを残さづ逝けり春帽子3愛知県丸吉
120他愛無き嘘は許して亀の鳴く3兵庫県鈍愚狸
138病む身とて爪健やかな茨の芽3東京都一八
144思ひ出すことの多くて木の芽和3三重県正耕
146豌豆の蔓上りきり風掴む3広島県林 己紀男
165さざ波の形のままに花筏3福岡県蛍川
175青々と百カラットの夏来たる3静岡県春生
181木蓮の力満ちたる開花かな3愛知県草木
182浄瑠璃寺去りがたき日の春落葉3滋賀県百合乃
238白壁に揺るる影あり柳の芽3広島県林 己紀男
244捨て台詞吐いてみました春の空3千葉県蘆空
129若緑児らより届く祝い文2岐阜県小太郎
92囀りや石に賽銭積まれあり2愛知県草木
107いやましにさ走る野火のほむらかな2千葉県みさえ
116欲張れば友とはぐるる浅蜊獲り2三重県八郷
117スカートのうしろに隠る入園児2神奈川県ひろし
126青信号渡る者無き春の昼2長野県宮澤俊幸
130去り際の言葉の謎や春の暮2茨城県申女
135今日一日人間休業蓮華草2奈良県陶生
136吐く息にその香残れり山椒摘2三重県déraciné
137新緑や哲学の道行き戻り。2東京都藤方昭男
142アイリッシュダンス躍るや鳥の恋2千葉県光雲2
164比良の水満々と張る代田かな2滋賀県和久
184墨をする末黒野を行く心地して2大阪府藤岡初尾
192屁理屈は免許皆伝わらび餅2奈良県風来
199シャキシャキと刈られゆく髪春惜しむ2大阪府
149緑児を肩車して青き踏む1広島県林 己紀男
128鯛焼きに並ぶ行列日永し1神奈川県みぃすてぃ
201石を蹴り池に水輪や夏近し1埼玉県まこ
93一艘のヨット波切り春夕焼1滋賀県百合乃
99コロナ禍の公園散歩花は葉に1東京都小石日和
104残りける花のトンネル旧市街1長崎県みんと
106春落葉隅へ隅へと吹きだまる1神奈川県阿部文彦
108老桜の妖艶薫る宵明り1東京都カツミ
110花曇ガイドの歌ふ佐渡おけさ1大阪府
112咲ききって白木蓮のいや高し1埼玉県まこ
114いつ暮れて出会う山路の桜かな1埼玉県祥風
119眼に見えぬ禍いやす柿若葉1愛知県さと 
123新宿の雑踏にある春愁ひ1神奈川県ドラゴン
127春愁や寂しがりやが逝き遅れ1北海道篤道
131紫に陽が透き通る山躑躅1広島県新宅 俊
133早立ちの妻を尻目の朝寝かな1福岡県みつぐ
140春愁や今日も灯のなき料理店1神奈川県風神
147葉つぱごと香ごとぱくりと桜餅1神奈川県毬栗
148散り際を愛でられながら花筏1神奈川県横坂 泰
156春筍の煮れる間に読む秋櫻子1千葉県須藤カズコ
160もう一度散歩に出たき日永かな1兵庫県ケイト
166紫に雨を残してあやめゆれ1千葉県畑博
167春風や新しきこと始めたき1兵庫県大谷如水
172風吹けば水の匂へる弥生かな1東京都
174打つ影のすでに濃くなり夏に入る1熊本県蕗の薹
180電波塔呑み込む青葉盛んなる1広島県林 己紀男
185こんな日は雲に乗りたや春の昼1埼玉県アポロン
186石鹸の泡の固しや春愁ひ1北海道三泊みなと
188下り立てば隅々までの庭若葉1東京都小石日和
197公園に初出勤の蟻二匹1東京都カツミ
204杉の葉に乗る若鮎の目の光1京都府せいち
209歳月が嘘を真に亀鳴けり1兵庫県鈍愚狸
212疫禍なか菜の花にある明るさよ1神奈川県ドラゴン
213若緑やはらかに空染めにけり1東京都千晴
214天守より望む町並花ぐもり1岐阜県色即是句
216麗かや法話の後の茶請菓子1北海道篤道
218鶯や朝の厨の手の止まり1岐阜県小太郎
227料峭やバス待つ人ら皆無言1東京都一八
228潮だまりの小さき生命(いのち)や磯遊び1埼玉県グレイス
233少々の焦げ目も盛りて筍飯1三重県正耕
236初蝶の色の気になる虚子忌かな1神奈川県毬栗
237釣舟のうたたね尽くす春の潮1神奈川県横坂 泰
243昭和の日もったいないを噛みしむる1兵庫県喜柊
245法蓮草母は器用な左利き1千葉県須藤カズコ
246南無観世音菩薩と唱う春の闇1北海道小幸
247いつもより側にいたがり別れ霜1北海道沢田千賀子
249ハンケチを開けたように花水木1兵庫県ケイト
250ざりがにの哀しいほどに透けており1東京都一寛
253新緑にふくらむ風のありにけり1滋賀県和久
260鳴き方の一音多き鶯かな1長野県幸々
265自粛てふ家に籠りてみどりの日1静岡県こいちゃん
266古書店にソネットの棚遅日かな1東京都
選評 選者;草の花俳句会 副主宰 鈴木五鈴(すずきごれい)

《兼題の部:遅日》

★引く波の彼方に夕日暮遅し

入り日時の干潮。ひたひたと干潮線が沖方向へと退いて行く。そしてその遙か先の水平線上には沈み行く太陽が
赤々と見えているのでしょう。作者は、まだあんなところに、と感じているのかも知れませんね。一日一日と日
没時間が遅くなっていく実感が、「暮遅し」と呟かせた遠因に違いありません。

◎縁側に母の小言を聞く日永

長き春の日を、母と一緒に縁側で過ごす作者。そこでの「母の小言」。母にとって、子は何歳になっても子供の
ままなのです。小言も、単なるたわい無い繰り言のひとつ。母と子の戯れ合いに過ぎないはずです。「日永」と
いう季語の持つ気分が充分に発揮されている句だと感心しました。

◎歌いつつ帰る子供ら暮遅し

春の一日を充分に外で遊んでの帰り道なのでしょう。「暮遅し」の恩恵かもしれませんね。みんなして歌いながら
帰って行く。名残惜しい思いを持ちながらの帰り道。やがて一人欠け二人欠け。そろそろ分かれ道か・・・

《自由題の部》

★ゆく春の長き堤や蕪村の碑

蕪村は摂津国毛馬村の生まれました。旧淀川沿の毛馬には蕪村公園がありますが、或いはそこでの景なのでしょう
か(私は訪れたことがないので不詳なのですが)。一方で、蕪村には『春風馬堤曲十八首』中に、「春風や堤長う
して家遠し」の句があります。掲句は、明らかにこの蕪村句の本歌取といえるでしょう。しかし、「ゆく春の」と
したことで、「蕪村の碑」の背後にある大きな虚空が浮かび上がってきました。「長き堤」もなぜか懐かしい景に
見えるのです。見事な本歌取の一句と言えるでしょう。

◎緑児を肩車して青き踏む

一読、景が見えます。若い父親なのでしょうね。まだよちよち歩きの子を肩車して、芽生えた青草の上を闊歩して
ゆくのです。弾むように歩くのでしょう。そのたびに子はきゃっきゃと声を上げるのでした。生き生きとした景が
良いですね。

◎かけつこのトップは女児よ桃の花

女児は何をしても強いようです。かけっこも勿論「トップは女児」。男児は何をしているのだ、と檄を飛ばしたく
なる昨今です。ですが、今は新型コロナウイルス禍の影響で学校の多くは休校中。飛び回ることもできず、かわい
そうですね。桃の花の下でのはしゃぐ姿は、今年に限っては幻のようです。


添削(ランクアップのために)
 
・グランドに声まだ残る遅日かな → グランドに声のしてゐる遅日かな

「まだ」も「残る」も、「遅日だから」という理屈を強く感じさせます。俳句は、できるだけ理屈や因果を排除す
ることで、より大きな世界を獲得することのできる詩型なのです。添削例との違いを理解いただければ幸いです。

・新緑や哲学の道行き戻り → 新緑や哲学の道行きつ戻りつ

新緑に身も心も預けての散策。穏やかで心も豊かになるような思いがします。ゆったりとたっぷりと散策しましょう。
「行き戻り」は五音にはめ込んだのでしょうが、報告で終わってしまいました。ここは七音にしてでも「行きつ戻り
つ」と、新緑をゆったりと味わいたいところです。

・アイリッシュダンス踊るや鳥の恋 → アイリッシュダンスのやうや鳥の恋

鳥たちが繁殖期を迎えると、雄たちは鳴き声や羽ばたきなどの様々な求愛行動をとります。その踊るような仕草を
作者はアイリッシュダンスのようだと見ました。着想が楽しいですね。ただし「踊る」は勿体なかったですね。
作者が「鳥の恋」の前で踊るのでしたら話はべつですが。

        
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